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ステキな山形の田舎ごはん(4)おいしい「納豆汁」を生み出す「納豆すり」〜新関さとみ

温暖化が進む中、昨今の冬と違い、今年は冬らしい冬になっています。年末年始から一段と寒さが厳しくなりました。

私の家は築70年ほどの日本家屋ですから冬はとても寒く、暖房のない台所に立つのが苦痛になることもしばしばです。そんな時にも、鍋料理は作るのが楽で、その上野菜もたっぷりとれ、家族団らんの時が楽しめ、よいことづくしですね。

こんな我家の最強メニュー、山形の伝統料理「納豆汁」を全国の皆さんの食卓にもお勧めしたいと思います。

納豆汁とは、あまりの美味しさに何杯もおかわりできる栄養たっぷりの具だくさんの味噌汁で、メインディッシュに成りえます。材料として絶対欠かせないのが「納豆」、「豆腐」、「油揚げ」、味付けの「味噌」。「畑の肉と言われる大豆製品」が4種類も入っていて、最後に冬の野菜のせりを入れます。

そんなことから、「七草といえば、納豆汁」というのが山形の常識です。山形では、七草粥を作る習慣がないため、私の周りの山形県人のほとんどの方は食べたことがありません。皆、1月7日が近づくと、納豆を買いに走ります。

郷土料理でも、各家庭によって入れる具材はまちまちですが、もう一つ欠かせないのが「いもがら」です。「芋茎」と書き、字のごとく「さといもの茎を干したもの」です。

その中でも「からとり」という品種の赤紫色の茎を干したものは、「いがらっぽくなく(えぐみがなく)うまい」と言われ、農産物の産直所でも品名に「いもがら」ではなく、「からとり干し」と記載する人もいます。見かけましたら、ぜひお手に取ってくださいね。

最初に、いもがらをお湯に10分程度入れて戻し、1センチほどに切っておきます。大根、ごぼう、にんじん、里芋などの根菜類、油揚げ、こんにゃく等の材料はすべてなぜか1センチ角のさいの目切りにし、だし汁の入った鍋に入れて煮ます。この間に納豆をすり鉢ですりつぶします。実はこれが一番大変な作業なのです。

子供の頃「今日は納豆汁だ」というと、その他の料理に忙しい母にかわり、これが祖母と私の役目でした。温かい茶の間の畳の上にふきんを敷いて、その上にすりばちを置き、その日あったことを話しながら、押さえる人、する人をかわりばんこで時間を気にせずにすったものでした。すりばちの底をたたくと割れてしまうので糸じりを部分をたたくなどの知恵やすりこぎの使い方も自然に身に付きました。

もちろん、我家でも亡き義母と幼かった息子が同じ様にやっているのを見て、伝統が引き継がれていることをうれしく思ったものでした。今では、私がひたすら一人で摺りつぶしていますが・・・。

根菜類が柔らかくなったら、なめこなどのキノコ類、豆腐を加え、味噌とすった納豆、せりを入れて、沸騰直前に火を止めて、出来上がり! 薬味に、ねぎや一味・七味唐辛子などをかけて食べる、とろみのある具材いっぱいの汁は体を芯から温めてくれます。

以前、テレビの収録で九州出身のタレントさんがスタッフはじめ総勢30名ほどで我家に訪れたことがありました。汁物は水を入れて量を増やせる利点もあり、また寒い時でしたので温かい納豆汁でおもてなしをしました。その方は納豆嫌いとのことで、最初は食べないと言っていたのですが、「せっかくなので食べてみよう」と口にしました。すると「納豆のいやな臭いが全くなく、野菜もいっぱいで食べごたえもあり本当においしい!」と感激され、おかわりまでして帰られました。その後も、テレビで納豆汁の話をしていたのを聞き、かなり気に入ったと知り、急いで納豆をすった甲斐があったと喜んだものでした。

納豆をすりつぶすのが面倒で作る人が減りつつあるとのことで、数年前から「納豆汁の素」という「納豆をすりつぶしたものに味噌が入っているレトルト」が出回っています。しかし、すりたての納豆のうまみはもちろんですが、忙しい毎日に語らいの時を持つことの出来る「納豆すり」にぜひ挑戦し、おいしい納豆汁を召し上がって頂きたいものです。


新関さとみ(ニイゼキ・サトミ)

横浜市生まれ。幼少時、父のUターンと共に山形県天童市に移転。大学・OL時代を東京で過ごし、20代後半にUターン。1995年(平成7年)に山二醤油醸造㈱の三代目に嫁ぐ。2003年(平成15年)に「さとみの漬物講座企業組合」を設立。山形の古き良き食文化を伝承するため、味噌作り講座、漬け物講座、田舎ごはん講座を開催中。趣味は旅行・映画鑑賞。