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立憲野党私設応援団(7)選挙権の重みと投票率について考える~憲法9条変えさせないよ

<目次>

0.はじめに

1.選挙権の変遷

2.投票率の変遷

3.投票所は午後8時まで開いているのか?

4.投票の喚起は「マスコミ」に期待せず、「SNS」と「口コミ」で

5.リアルに活動する「投票率向上委員会」の実現に期待してみる

0.はじめに

これまで6回の連載で、立憲野党各党に対する期待と不安について見ていきましたが、今回は、与党がどうとか、野党がどうとか、そういった話はいったん脇に置いておいて、「選挙権の重みと投票率について」というテーマで議論していきたいと思います。

1.選挙権の変遷

まずは、明治時代からの選挙権の変遷について、歴史を振り返ってみましょう。

1889(明治22)年 黒田清隆内閣により公布

選挙人:直接国税15円以上を納める満25歳以上の男子

1900(明治33)年 山県有朋内閣により公布

選挙人:直接国税10円以上を納める満25歳以上の男子

1919(大正8)年 原敬内閣により公布

選挙人:直接国税3円以上を納める満25歳以上の男子

1925(大正14)年 加藤高明内閣により公布

選挙人:満25歳以上の男子(納税額による制限なし)

1945(昭和20)年 幣原喜重郎内閣により公布

選挙人:満20歳以上の男女(納税額による制限なし)

2015(平成27)年 安倍晋三内閣により公布

選挙人:満18歳以上の男女(納税額による制限なし)

明治時代に帝国議会が開設された際に衆議院議員の選挙権が与えられたのは直接国税を15円以上納める満25歳以上の男子のみで、総人口の1.1%に過ぎませんでした。

その後、山県内閣によって「直接国税10円以上」に引き下げられ、有権者の総人口に占める割合は2.2%、原内閣によって「直接国税3円以上」に引き下げられ、有権者の総人口に占める割合は5.5%と、徐々に有権者の範囲が拡大してきました。

歴史に残る「普通選挙法」の成立は、1925(大正14)年。納税額による制限が廃止されて、有権者の総人口に占める割合は20.0%にまで増えました。

女性に選挙権が与えられたのは、戦後の1945(昭和20)年。有権者の総人口に占める割合は48.7%にまで増えました。

そして、18歳選挙権が実現したのが、今世紀に入ってからの2015(平成27)年。有権者の総人口に占める割合は、なんと83.6%にまで増えました。もっとも、これは、公職選挙法改正の影響というよりは、1945年から2015年までの70年の間に進んだ少子化のインパクトが分かりやすい形で可視化されているのだと思います。

2.投票率の変遷

それでは、2000年以降の国政選挙の投票率の推移を振り返ってみましょう。

2000年 衆議院議員総選挙 :62.49%

2001年参議院議員通常選挙:56.44%

2003年 衆議院議員総選挙 :59.86%

2004年参議院議員通常選挙:56.57%

2005年 衆議院議員総選挙 :67.51% ← 小泉郵政選挙

2007年参議院議員通常選挙:58.64% ← 小沢民主党勝利で衆参ねじれ

2009年 衆議院議員総選挙 :69.28% ← 自民党から民主党へ政権交代

2010年参議院議員通常選挙:57.92% ← 谷垣自民党勝利で衆参ねじれ

2012年 衆議院議員総選挙 :59.32% ← 民主党から自民党へ政権交代

2013年参議院議員通常選挙:52.61%

2014年 衆議院議員総選挙 :52.66%

2016年参議院議員通常選挙:54.70%

2017年 衆議院議員総選挙 :53.68%

2019年参議院議員通常選挙:48.80%

2021年 衆議院議員総選挙 :55.93%

「郵政選挙」や「衆参ねじれ」や「政権交代」があった時の選挙は比較的投票率が高いのですが、2013年以降の国政選挙の投票率は極めて低調に推移しています。

2019年の参院選の投票率は、参院選の投票率の中でワースト2位。2021年の衆院選の投票率は、戦後の衆院選の投票率の中でワースト3位です。

長い歴史の中で獲得してきた選挙権を、約半数の人がドブに捨ててしまっているのです。

戦前の内務省が作った第1回普通選挙のポスター「投票スレバ明クナリ 棄権スレバ暗クナル」の文言が本当にそのまんま現実になってしまっているような状況です。

3.投票所は午後8時まで開いているのか?

1998年の公職選挙法改正で投票時間が「午後8時まで」に延長され、2003年からは「期日前投票制度」も始まるなど、選挙の投票率向上に向けた取り組みは、法的な枠組みにおいても行われてきました。

しかし、投票時間については、法律で決められている投票時間とは別に、実際に投票所が開いている時間は「午後6時まで」だったり「午後4時まで」だったりすることもあり、地域によって実情はまちまちです。

2021年の衆院選では、全国にある46,466ヵ所の投票所のうち、実に3分の1以上に当たる16,967ヵ所で、投票所の閉鎖時刻が繰り上げられたそうです。

有権者が投票できる権利を守るという観点で言えば、これは由由しき事態だと思います。

2022年の参院選でも、おそらく同様の事態が起きることが想定されます。

投票所の閉鎖時刻の繰り上げは、市町村の選挙管理委員会の権限で行われていることのようですので、安易な閉鎖時刻の繰り上げが行われないよう、また、どうしても閉鎖時刻の繰り上げを行わなければならない場合には当該地域に居住する有権者に繰り上げられた閉鎖時刻の周知徹底を行うよう、市町村の選挙管理委員会に強く働きかけていく必要があるのではないでしょうか。

4.投票の喚起は「マスコミ」に期待せず、「SNS」と「口コミ」で

近年のマスコミの選挙報道は、わざと低調に推移するように進めているのかと思えるくらい、量的にも質的にもお粗末な報道姿勢が続いています。

なかでもびっくりしたのは、前回の2019年の参院選前、選挙がある週の某局の朝の番組で「今週の予定」を紹介する際に、「7月21日(日曜日)は参議院選挙の投票日です」と言わずに「7月21日(日曜日)は大相撲名古屋場所の千秋楽です」と言って「日曜日の予定」の話を終わらせた場面です。

選挙の争点に関して議論を深める姿勢に乏しいであるとか、この時はまだ政党要件を満たしていなくて「政治団体」だった「れいわ新選組」のことを徹底的に無視したとかいったことは、まだ多少なりとも仕方がない面があるにせよ、選挙が行われる投票日のことすらできるだけ触れずに済ませようとする姿は、呆れ果てるとしか言いようがありません。

おそらく今回の2022年の参院選においても、選挙前のテレビ画面上の情報空間から「選挙」の話をできるだけ消してしまおうとする(そして、投票が終わった後の開票特番で大騒ぎをする)報道姿勢が横行するであろうことは、今から容易に想像できます。

こうした状況の下で選挙の投票率を向上させていこうと考えるなら、ネット上の「SNS」を活用して投票を呼びかけていくか、リアルな人間関係に基づく「口コミ」で投票を呼びかけていくしかないのではないかと思います。

特に、地縁・血縁・友人・職場などのリアルな人間関係がある間柄で「選挙」のことを話題として取り上げ、「投票日は投票に行きましょう」という話をすることは、極めて重要であると思います。

一人ひとりが差し障りの無い範囲で「投票へ行こう!」の呼びかけに力を注いでいくことで、ぜひ投票率を上向きにしていきましょう!

5.リアルに活動する「投票率向上委員会」の実現に期待してみる

昨年の2021年の衆院選の際のtwitter上では、俳優の古館寛治さんが「#投票倍増委員会」を立ち上げて、トレンドに上がるなど話題になりました。

また、「#わたしも投票します」のハッシュタグからyoutube上に「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という動画も現れ、トレンドに上がるなど話題になりました。

こうした多くの人々の努力もあり、2017年の衆院選と2021年の衆院選の比較では、53.68%から55.93%と、投票率が2ポイント以上も上昇しました。

ただ、今回の2022年の参院選は、衆院選と違って「政権選択選挙」ではなく、その分、投票率が下がることが予測されます。

ちなみに、前回の2019年の参院選の投票率は、48.80%でした。

そのようなこともふまえて、今回の参院選の投票率を向上させるために、SNS上だけではなくリアルな形での「投票率向上委員会」的なことができないだろうか、ということを考えています。

まったく私の個人的なアイデアというか思いつきに過ぎませんが、全国の小学校や中学校の授業または課外活動として、参院選の投票率向上のための「投票率向上委員会」的な活動をやったりすることはできないでしょうか。

具体的には、子どもたちが「参議院選挙の投票日は7月10日(日曜日) 投票は午後8時まで みんなで投票に行こう!」といったことを絵や標語などで手書きしたポスターを作って、それを地域の商店や、スーパー、コンビニなどに掲示させてもらうのです。(注:投票日は現時点での予測です)

学校の運動会の実施日を書いたポスターを地域で掲示することがあると思いますが、あれと同じことを、参院選に関してやるわけです。

もし小学校や中学校の先生方で、SAMEJIMA TIMESの記事を読んでくださっている方がいらっしゃったら、ぜひご検討いただければ幸いです。

憲法9条変えさせないよ

プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。