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立憲野党私設応援団(72)政権交代した後のことを考える(その3)〜憲法9条変えさせないよ

※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。


<目次>

0.野党が政権交代した後のことを考えてみた過去の議論の紹介

1.「石破自民vs野田立憲」でもし野田立憲が勝ったら?

2.安保法制をどうするか?

3.能登半島の復興をどうするか?

4.辺野古の基地建設をどうするか?

5.原発をどうするか?

6.大阪万博をどうするか?

7.健康保険証をどうするか?

8.選択的夫婦別姓をどうするか?

9.特別定額給付金が再び実施できる可能性は?

10.野田政権が長く続けば、おそらく最後は消費税増税に…

11.トピックス①:れいわ新選組の支持率低下をどう見る?

12.トピックス②:それでも大石晃子はプラカードを掲げた


0.野党が政権交代した後のことを考えてみた過去の議論の紹介

私が連載を担当している「立憲野党私設応援団」において、過去に2回「政権交代した後のことを考える」というタイトルの論考を掲載しました。

今回はその3回目の議論です。

前回・前々回の議論を参照したい方のために、これまでの記事のリンク先を載せてから、議論を始めます。

「政権交代した後のことを考える(その1)」

「政権交代した後のことを考える(その2)」

1.「石破自民vs野田立憲」でもし野田立憲が勝ったら?

立憲民主党の代表選では元総理大臣の野田佳彦さんが、自民党の総裁選では元地方創生大臣の石破茂さんが選出されて、次期衆院選における与党第一党と野党第一党の対決構図が「石破自民vs野田立憲」になることが決まりました。

この記事が掲載される頃には、石破茂さんは正式に第102代内閣総理大臣に就任しているはずですが、野田元総理も石破新総理も共に新進党に在籍していたことがあり、「石破自民vs野田立憲」の対決構図は、1993年当時の政党名で言えば「新生党vs日本新党」のようなものであり、「ほぼ自民党に近い政策」を持ちながら「旧来の自民党の殻を破ろうとする姿勢」を売りにする「自民党亜流政党路線」どうしの対決というふうに捉えることもできるのではないかと思います。

従って、昔の新党さきがけや日本社会党の流れで民主党(→民進党→立憲民主党)を応援してきた人たちにとっては、立憲民主党の新しい代表に野田佳彦さんが選ばれたことに対して忸怩たる思いがあることでしょう。

果たして次期衆院選が行われる時期がいつになるのか、そして次期衆院選で政権交代が起きるのかどうかについては全く予断を許しませんが、今回の私の記事では、年内に衆議院が解散されて立憲民主党が解散総選挙に勝利した場合にできる新政権がどのような課題を抱えることになるのか、「政権交代後の課題について考える」というテーマで議論を進めていきます。

実際に「政権交代が起きる可能性はどれほどあるのか?」ということに関しては、次回の記事で議論をしていきたいと思います。

2.安保法制をどうするか?

政権交代して立憲民主党が政権を獲った場合には、安倍政権下で成立した「安保法制」に関して、「違憲部分の法改正を行うかどうか」という判断が迫られることになります。

この件に関しては、「『野田政権の下で憲法違反となる集団的自衛権の行使は行わない』ことを閣議決定する」というようなやり方をするしかないのではないかと考えます。

「安保法制」に関して非常に単純化して説明をするなら、「『集団的自衛権のうち憲法違反とならない部分』に関して自衛権の行使を法制化する」という建前で作られた法律であり、もし「集団的自衛権のうち憲法違反とならない部分」というものの存在が認められる場合には「安保法制は合憲」である可能性があることになりますが、「集団的自衛権のうち憲法違反とならない部分」というものが存在しない場合には「安保法制は違憲」であるという論理的な結論に至ります。

いずれにしても、①立憲民主党が仮に衆議院で過半数を確保できたとしても参議院での過半数の確保は現状では無理なこと、②安保法制ができた2015年から10年近くの歳月が流れており安全保障に関する国際的な環境も変化してしまっているので法改正するとしてもそうした現状もふまえた議論が必要なことの2つの理由から、「安保法制」に関して本格的な議論ができるのは参院選が行われる2025年以降になると考えざるを得ないと思います。

従って、政権交代ができたとしても「『野田政権の下で憲法違反となる集団的自衛権の行使は行わない』ことを閣議決定する」ことだけにとどめ、「『集団的自衛権のうち憲法違反とならない部分』が存在するか否か」ということを国会内で議論することは2025年以降に先送りする方向で調整していくほかないのではないかと私個人は考えています。

3.能登半島の復興をどうするか?

元日に起きた地震と9月に起きた水害という2つの災害に見舞われた能登半島では、人々は平穏な暮らしを維持することもままならないほどの厳しい生活を送っています。

岸田政権における災害対応は非常にお粗末なものでしたが、石破政権における災害対応がどのような形で進んでいくのか、今後の成り行きが注目されるところです。

もし解散総選挙で野党に政権が転がり込んできて野田政権が誕生したとして、能登半島の復興がどのように進められるのかは、予断を許さないところです。

立憲民主党の内部には、能登半島の復興を進めていくべきだという考え方の人もいる一方で、人口減少社会を前提としたうえで過疎地では復興に予算を使わずに住民の他地域への移住を進めていくべきだという考え方の人もいるようです。

人々が能登半島に残って暮らし続けるにせよ、他の地域に移住して新しい生活を始めるにせよ、十分な補償を得られて、少なくとも「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことができるように対策を進めていくことが必要です。

もし野田政権が誕生した場合には、今までの自民党政権のように「コスプレだけやって終わり」ということにならないように期待したいものです。

4.辺野古の基地建設をどうするか?

沖縄の辺野古の基地建設も、工事を進めるのか、中止するのか、これは大変な問題です。

辺野古の基地建設の問題は、民主党政権時代の迷走も大いに関係しており、もし野田政権が誕生した場合には、大いに注目を集める問題となります。

もし工事をそのまま進めていくとしたら「今までの『オール沖縄』は一体なんだったんだ?」ということになりますが、外交の問題なども絡むため、すぐに「中止する」などと一方的に決めることもできないという話です。

もし野田政権がこの問題に誠実に対応しようとする気があるなら、「工事の工法の再検討」などの名目で工事を「いったん休止する」という形にして工事を進めないことが最良の方法になるのではないかと私個人としては考えています。

ただし、野田政権が「外交防衛問題では従来の(自民党政権の)方針からの政策変更は行わない」という場合には、「辺野古の基地建設についても工程は着実に進めていく」ということになり、沖縄の民意とは関係なく工事だけが粛々と進められていくことになるのではないかという懸念も大いにあります。

5.原発をどうするか?

原発に関しては、①いま稼働している原発を止めるか止めないか、②これから再稼働しようとしている原発の再稼働を認めるか認めないか、③新たに建設しようとしている原発の新規建設を認めるか認めないか、といった問題があります。

立憲民主党の代表選で一人だけ「原発ゼロ」の方針に手を挙げなかった野田佳彦さんが政権の座に就いた場合には、いま稼働している原発を止めることはないでしょうし、これから再稼働しようとしている原発の再稼働を認める可能性は非常に高いと見ておかなければならないでしょうし、どうかすると原発の新規建設も認めかねないと考えておく必要があるでしょう。

原発の事故のリスクがゼロではないことを考えると、れいわ新選組が主張しているように「原発即時禁止」を目指すべきだと個人的には思いますが、逆に、原発の事故が絶対に起こらないものと仮定すれば、いまある原発を動かすことで電気料金が下がるということもまた事実なので、世の中全般の世論の流れとしては、「電気料金が下がるなら、いいんじゃない?」ということで、原発の再稼働を容認する方向で流れていく(マスコミもその論調を後押しする)のではないかと想像しています。

6.大阪万博をどうするか?

2025年に開催される大阪万博も、頭の痛い問題です。

何をもって万博の「成功」と言うのか「失敗」と言うのかは難しいところですが、現在の状況を客観的に見ると、建設中のパビリオンを完成させて予定通りの期日で開催できるのか非常に危うい状況で、今さら延期することも中止することもできません。

おそらくは中途半端な形で万博が開幕して、ドタバタの拙い運営で開催期間が進んでいって、最後はドッチラケの状態で閉幕の日を迎えるのではないか、と想像しています。

単に盛り上がずに終わるだけならまだ罪は軽いですが、メタンガスが爆発したり、あるいは休憩所に吊っていた巨大な石が落下したりするなどして、怪我人が出たり、最悪の場合には命を落とす人が出てきてしまったりするのではないかという危険も考えられます。

いずれにしても、自民党が政権を担当している場合には「大阪万博は成功した」という論調でマスコミは報道すると思いますが、立憲民主党が政権を担当している場合には「大阪万博は失敗に終わった」という論調でマスコミが報道して、維新が「立憲(民主党)のせいで、(大阪)万博が台無しになった」と批判する様子が目に浮かびます。

2025年の時点で国政の政権与党にいることは、「大阪万博」という時限爆弾を抱えることになり、取扱いが非常に難しいですが、とにかく死傷者を出さずに無事に開催期間を終えることが第一なのではないかと思います。

7.健康保険証をどうするか?

現行の健康保険証が2024年12月2日に廃止されることになっており、これを予定通り廃止するのか、あるいは現行の健康保険証を今後も存続させる形に変更を行うのか、非常に大きな問題です。

もしかすると自民党の石破政権が健康保険証の存続に舵を切る可能性があるかもしれませんが、これに関しては政権交代して新しい野田政権の下で「健康保険証の存続」を打ち出していく方がやりやすいのではないかと思います。

政権交代を果たした時に成果として期待できるのは「健康保険証の存続」なのではないか、というのが私の意見です。

8.選択的夫婦別姓をどうするか?

政権交代を果たした時に一番実現の可能性が期待できるのは、「選択的夫婦別姓」です。

「選択的夫婦別姓」の実現に関しては、日本経団連の十倉雅和会長と日本共産党の小池晃書記局長の二人の意見が一致しており、小池晃さん自身が「皆既日食みたいなもんですよ。こんなこと滅多にないですよ。」と言って笑いを誘っています。

これは「自民党議員の一部を除けばほぼ全員賛成」みたいな案件ですので、一番手がつけやすいのではないかと思います。

この点に関しては、大いに期待したいところです。

9.特別定額給付金が再び実施できる可能性は?

コロナ禍の2020年に、安倍政権の下で国民全員に10万円を給付する「特別定額給付金」が実施されました。

立憲民主党新代表の野田佳彦さんは故・安倍晋三元総理のことを大変リスペクトしており、また、安倍元総理が生前に「(特別定額給付金を)もう1ショット、2ショット、やってもいいんじゃないか」というようなことを語っていたことから、一律10万円給付の「特別定額給付金」の実施を打ち出すことは、野田政権の場合には比較的やりやすいのではないかと私個人としては考えています。

逆に言えば、野田政権においては「消費税減税」や「食料品の消費税非課税化」といったことを実施できる可能性はゼロだと見ておいた方がいいので、野田政権下で実施可能な国民生活底上げの政策としては、「特別定額給付金」の再実施に期待するしかないのではないかと思います。

これに関しては安倍政権時代の前例が存在することから、野田佳彦さんが決断しさえすれば、実施は比較的容易なのではないかと思います。

10.野田政権が長く続けば、おそらく最後は消費税増税に…

野田佳彦さんは、2011年から2012年に内閣総理大臣を務めた際に、消費税の税率を5%から10%へと段階的に倍増させる「消費税増税法案」を成立させた経歴があります。

もし立憲民主党新代表の野田佳彦さんが再び内閣総理大臣の座に就くことがあるなら、現在10%となっている消費税の税率を段階的に20%にまで倍増させようとするのではないでしょうか。(ちなみに、立憲民主党新幹事長の小川淳也さんは「消費税率25%」が持論なので、これでも控え目の数字です。)

もちろん、すぐに「消費税増税」を言い出すことはないだろうと思いますが、2025年の参院選が終わった後のタイミングであれば、いつ「消費税増税」を言い出しても不思議ではありません。

「消費税増税」の大義名分としては、例えば「ロスジェネ世代が今後高齢者になっていくと、低所得のため生活保護を受給する世帯が飛躍的に増加すると予想されるため、そのことに備えて今のうちから段階的に消費税率を引き上げていく」といった感じの内容が考えられます。

立憲民主党の野田政権の下で「消費税増税」を決め、実際に税率が引き上げられる頃には自民党が政権を奪還し、生活保護受給申請に対する「水際作戦」が強化されてロスジェネ高齢者には生活保護が支給されず、税収はもっぱら「法人税減税」の原資に使われて、ロスジェネ世代を含む全ての世代の人々はますます困窮していく…というのが見えてくるシナリオです。

従って、立憲民主党新代表の野田佳彦さんには、「自民党を下野させる」という意味では大いに期待したいですが、政権を獲った後に野田政権が長く続いてしまうとかえって国民生活を苦しくしてしまう危険性があることから、長期政権に移行する前に「庶民の生活を救う」ことを政治信条とする政治家(例えば、泉房穂さんや、山本太郎さん)に総理大臣を交代するような感じで、あくまでも「ワンポイント」での登板を期待したい、というのが私個人の考えです。

11.トピックス①:れいわ新選組の支持率低下をどう見る?

山本太郎さんが率いるれいわ新選組ですが、その支持率が急速に低下しています。

そのことに関して、山岸飛鳥さんがブログ「反戦な家づくり」で次のように危惧しています。

また、えこさんは「X」(旧twitter)で次のように指摘しています。

12.トピックス②:それでも大石晃子はプラカードを掲げた

臨時国会初日の10月1日、れいわ新選組共同代表の大石晃子さんは、衆議院本会議で行われた首班指名選挙に際し、懲罰覚悟でプラカードを掲げました。

衆議院はまもなく解散となります。

10月27日投開票となる次期衆院選で、大石晃子さんが大阪5区から比例重複で立候補するのか、それとも比例近畿ブロックから比例単独で立候補するのか、今後の動きに注目したいところです。


憲法9条変えさせないよ

プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。

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