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安倍氏が「ピアノ演奏動画」で巻き返し!?〜SNS戦略で展望する与野党政局

安倍晋三元首相が昨年末のクリスマスイブにYouTubeで公開したピアノ演奏が再生回数200万回を超えた。安倍氏が2月21日に「大反響」をツイッターで報告すると、3万を超える「いいね」がついた。安倍氏は小学1年生までピアノを習っており、60年ぶりに鍵盤を叩いたという。奏でたのは「花は咲く」。たどたどしい感じも漂うが、意外な一面の波及力はあった。安倍氏はウクライナ情勢でも積極的な発信を続けており、永田町では「首相に再登板してもう一度花を咲かせる意欲では?」との憶測も広がっている。

安倍氏のサプライズ動画といえば、首相在任中、星野源さんとのコラボ動画「うちで踊ろう」でステイホームを呼びかけたことを思い出す。コロナ禍で首相が優雅にくつろぐ姿に批判が殺到したが、そのときも意外性による波及力はすさまじかった。

安倍氏は首相在任中、ロシアのプーチン大統領と首脳会談を繰り返し、親密ぶりをアピールした。その映像もウクライナ情勢の緊迫を受けて再びSNSで飛び交っている。「プーチン氏と親しいのなら今こそウクライナ侵攻をやめさせるべきだ」という批判も多い。ただ、岸田文雄首相の影が薄いなかで安倍氏が再び存在感を増してきたのは事実であろう。

突然のピアノ演奏には、このところ埋没気味だった安倍氏が存在感回復を狙ったとの見方もある。

安倍氏は岸田政権発足後、最大派閥・清和会の会長に就任し、自民党総裁選で肩入れした高市早苗氏を幹事長に、最側近の萩生田光一氏を官房長官に起用する人事を岸田文雄首相に求めたが、いずれも却下された。現在の岸田政権は麻生太郎副総裁が最大の実力者として君臨し、茂木敏充幹事長が支える構図である。安倍氏と麻生氏の盟友関係が軋み始めたことはこれまで指摘してきたとおりだ。

麻生氏は安倍氏と盟友関係を断ち切り「大宏池会」へ動くのか〜2022年政界の焦点はここだ!

麻生氏を後ろ盾とする岸田首相は地元・山口で安倍氏の長年の政敵である宏池会(岸田派)ナンバー2の林芳正氏を外相に起用して「ポスト岸田」の有力候補に引き上げたうえ、清和会の次世代ホープである福田達夫氏を自民党総務会長に一本釣りして安倍氏の足元を揺さぶった。清和会内部では安倍氏が無派閥の高市氏に肩入れしすぎたことなどに対し、安倍政権当時は一切聞こえてこなかった「安倍批判」がくすぶるようになっている。

劣勢に立った安倍氏が選択したのは、岸田政権で非主流派に転落した菅義偉前首相との連携だ。菅氏には公明党や日本維新の会との強力なパイプがある。さらに岸田政権がコロナ対策の3回目のワクチン接種で出遅れる中、菅政権の「100万回接種」が再評価されつつあり、菅氏を取り上げる報道が急速に増えてきた。菅政権で自民党総務会長を務めた最側近の佐藤勉衆院議員らが麻生派からの離脱に動いているのも、菅氏が岸田ー麻生ー茂木体制を揺さぶる仕掛けのひとつであろう。「安倍首相ー菅官房長官」時代のコンビ復活で復権をはかろうというわけだ。

これに対して岸田ー麻生ラインは、伝統派閥・宏池会を源流とする麻生派、岸田派、谷垣グループが再結集する「大宏池会」結成で対抗する構想を描く。さらには宏池会第3代会長である大平正芳元首相の縁戚にあたる国民民主党の玉木雄一郎代表に接近し、国民民主党を新年度当初予算案に賛成させた。国民民主党を与党へ、さらには大宏池会へ引きずり込む構えをみせることで、公明や維新と連携する菅氏ら非主流派を強く牽制したのである。

大宏池会が実現すれば清和会を上回る最大派閥に浮上する可能性があり、菅氏側近の佐藤氏らの麻生派離脱は大宏池会構想をにらんで先手を打ち、切り崩しに動いたものだろう。「岸田・麻生」vs「安倍・菅」の主導権争いは熾烈を極めてきた。岸田首相は国民民主党と密接な関係にある連合との連携も強めている。「安倍ー菅ー公明ー維新」による岸田包囲網に対抗し、連合を通じて立憲民主党内の一部勢力との連携を探る可能性も十分にあるだろう。立憲民主党は急速に遠心力が強まり、参院選前に空中分解する展開もありうる。今年の政局は与野党を巻き込む波乱含みの展開だ。

安倍氏がネット戦略で存在感アップを仕掛けているのは、このような自民党内の主導権争いが背景にある。菅氏も1月、維新創設者の橋下徹氏がゲストと対談するABEMAのネット番組「NewsBAR橋下」に出演して蜜月ぶりをアピールするなどネット戦略に力を入れている。いまや政界のキングメーカーを目指す重鎮が自らSNS戦略に力を入れなければ、政局の主導権を握れない時代になったといえよう。

これに対して岸田首相は相変わらず存在感が薄く、メディア戦略も不十分で、支持率は低下傾向だ。ネット戦略では安倍氏や菅氏ら非主流派が先行しているといっていい。

各党はどうか。野党第一党の立憲民主党は泉健太代表、西村智奈美幹事長の存在感がまったくない。小川淳也政調会長は一定の存在感を示しているが、「党の顔」には至っていない。参院選比例区から出馬する辻元清美前衆院議員を目玉候補としてネットメディアやSNSで売り込んでいるが、党勢拡大につながっている感じはない。維新、国民民主党、共産党、れいわ新選組など他党との関係がはっきりせず、野党第一党としていったい何を目指しているのかがあいまいで、メッセージ性を欠いている。これに対し、国民民主党は玉木雄一郎代表が積極的なSNS発信で孤軍奮闘している。

維新は吉村洋文・大阪府知事の大量のテレビ出演で存在感を発揮するイメージ戦略に成功している。一方で国会議員の知名度はなかなか上がらず、SNSでの存在感もいまひとつだ。

SNSで圧倒的広がりをみせているのはれいわ新選組。山本太郎代表や大石あきこ政審会長のYouTubeやTwitterの拡散力は日増しに強まっている。議席数不足・資金力不足をSNS戦略で補っている格好で、参院選の台風の目となるのは間違いない。

ネットメディア関係者は「YouTubeで再生回数を稼げる話題は、維新とれいわ。ネット上は完全に『維新vsれいわ』の二大政党制になっている。最近は大石あきこ氏の勢いがすごい。自民党では菅氏が存在感を増している。安倍氏や麻生氏は一時ほどではないが根強い。岸田首相はそこそこだが、総理としては存在感が薄い。立憲民主党は顔になる人がおらず、メインニュースにする気になれない」と話している。


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