日本維新の会を創設した橋下徹氏に噛み付いて提訴されたかと思えば、岸田文雄首相に国会審議で「財務省の犬」と噛み付いて話題をさらう。れいわ新選組の切込隊長・大石あきこ衆院議員は、与野党の茶番劇が繰り広げられる国会に久々に登場した「ガチンコ政治家」であろう。
山本太郎代表でさえ党内会議で突き上げられ、れいわ新選組の「ややこしい人たち」の筆頭格にあげるくらいだから、彼女の攻撃力はさぞかし強烈に違いない。
その大石さんがいま、もっとも攻撃の矛先を向けるのは、立憲民主党である。
私が『朝日新聞政治部』を上梓した直後、大石さんは『維新ぎらい』を刊行した。出版社はどちらも講談社。同社の販売1位と2位を競い合っているという。
そこで講談社の編集者たちが発案したのが、ダブル刊行記念対談「大石あきこ✖️鮫島浩」だった。そこで大石さんがもっとも噛み付いたのも、立憲民主党だった。
6月7日、私が衆院第二議員会館の大石事務所を訪ねてそれは実現した。
ふたりは初対面である。お互いが相手の本に目を通して語り合う…というのは建前で、シナリオなきガチンコ対談である。そして実際に対談は思わぬ方へ転がっていったのだった。
彼女は「維新批判」ではなく「立憲批判」を展開し始めたのである。「維新ぎらい」のプロモーション対談なのに、「立憲ぎらい」をまくし立てる筆者…。出版社の期待を裏切る空気を読まない筆者…。
講談社はこの対談を現代ビジネスに6月20日から3日間にわたって連載する。自画自賛になるが、3回の連載のどれも実におもしろい対談となった。ぜひご覧いただきたい。
そしてSAMEJIMA TIMESはこの対談を収録した。こちらも何回かにわけて紹介する予定だが、まずは第一弾を編集してYouTubeに公開したので、ご覧ください。現代ビジネスの連載記事とはまた違った仕上げになっています。
れいわ新選組では大石さんや政策立案を担ってきた長谷川ういこさんはこれまで立憲民主党への批判をやんわり口にしてきた。山本太郎代表は野党共闘の枠組みを尊重して直接的な立憲批判を控えてきた。
だが、6月19日に大石さんが出演したNHK討論や、山本代表、大石さん、長谷川さんが並んだ東京・新宿での街頭演説をみると、ついに立憲批判を解禁し、全面対決に踏み切ったとみて間違いない。(以下の動画の1時間56分あたりから山本代表、大石さん、長谷川さんの掛け合いは注目である)
維新が内閣不信任案に反対して岸田内閣信任の姿勢を鮮明にした今、れいわは野党第一党の立憲を倒して「野党の主役」を奪い取る姿勢を鮮明にしたといえるだろう。
参院選は衆院選と違って政権選択の選挙ではない。与野党一騎討ちの小選挙区が中心となる衆院選と違って、各党が入り乱れる複数区や比例区が重要である。
自公政権に与しない各政党が自党の勢力拡大を優先して激しく戦うのはやむを得ない。しかも野党第一党の立憲民主党が衰弱し、いつ分裂・解党に追い込まれるかもしれぬという状況では、野党共闘が成り立たず、野党同士が自公政権批判票を奪い合う展開になるのは致し方ないであろう。
そのうえ岸田内閣支持率は6割前後で高位安定し、自民一強の状況は揺るぎそうにない。このような政治情勢のなかでは参院選は自民党に挑む「野党の主役」(=野党第一党)を決することに事実上の意味をおかざるを得ないのではないか。立憲民主党は自民一強の政治状況を生んでしまった時点で、政権交代に挑むべき野党第一党として「失格」の烙印を押されてしまったのだ。
「野党の主役」は参院選の獲得議席だけでは決まらない。おそらく立憲民主党は参院選で惨敗するだろうが、参院の非改選議席をふくめると数の上では野党第一党に踏みとどまるだろう。衆院でもそうだ。
しかし、昨秋の衆院選に続いて、今夏の参院選でも惨敗すれば、立憲民主党を中心に次の衆院選で政権を獲得できると信じる人はほとんどいなくなる。その瞬間、一気に遠心力が働き、野党第一党は分裂・解党に追い込まれることは、社会党や新進党、民主党という日本政治史上の野党第一党をみれば明らかだ。
参院選後は立憲民主党が分裂含みとなり、次の野党の主役はだれになるかを衆参の野党議員たちは見極めながら動き出す。つまり参院選は「自民党に本気で挑む強力な野党第一党」を築き上げる野党再編への第一歩と位置付けるべきであろう。
その政局のなかで、大石さんは大きな存在感を示すのではないか。そう予感させる対談であった。