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安倍ー麻生の間にすきま風。岸田政権は「大宏池会」結成を見据え「麻生優位」で動き始めた

安倍晋三氏と麻生太郎氏の間にすきま風が吹き始めた。

第二次安倍政権が誕生した2012年末から、首相と副総理兼財務相として憲政史上最長の政権に君臨。当初は石破茂氏、次に二階俊博氏、菅義偉氏という「共通の敵」を封じ込めるため「盟友関係」を結んできたふたり。

先の自民党総裁選では世代交代を阻止するため「河野太郎氏の当選阻止」で連携。安倍氏は高市早苗氏を、麻生氏は岸田文雄氏を全面支援し、決選投票では岸田支持で結束し、河野氏を惨敗に追い込んだ。

安倍氏と麻生氏は岸田政権を背後で操る二大キングメーカーである。岸田首相はこのふたりの意向を無視しては何事も決められない。

二階氏や菅氏が失脚した分、安倍氏と麻生氏の権勢は菅政権時代よりも膨れ上がった。岸田首相は安倍氏と麻生氏の双方と親密な甘利明氏を幹事長に起用した。「3人のA」の言いなりである。

ところが、二大キングメーカーの盟友関係にきしみが生じ始めたのだから、政治というものは複雑だ。

理由は簡単である。石破氏、二階氏、菅氏、河野氏ら「共通の敵」が次々に失脚し、ふと気づくと、安倍氏と麻生氏をのぞいて実力者が見当たらなくなったのだ。封じ込めるべき「共通の敵」が不在となり、ついに二大キングメーカーの間で主導権争いが始まった。

安倍氏は最大派閥・清和会(細田派、96人)を事実上率いている。首相退任後は無派閥で活動してきたが、今回の衆院選後に清和会に復帰して会長に就任し、名実ともに「安倍派」とする意向だ。その先に見据えるのは、安倍氏の三度目の首相返り咲きである。

安倍氏は岸田政権を意のままに動かすため、総裁選で極右の安倍支持層から熱烈に支持された高市氏(無派閥)を幹事長に、安倍最側近である萩生田光一氏(細田派)を官房長官に起用するように岸田氏に求めていた。

しかし、どちらも実現しなかった。岸田氏は安倍氏より麻生氏の意向を優先したのである。

麻生氏は第二派閥・志公会(麻生派、53人)を率いる。麻生派の前身である大勇会は、河野洋平氏が麻生氏らとともに老舗派閥・宏池会から飛び出して立ち上げた小グループだった。麻生氏はそれを引き継ぎ、山東派(番町政策研究所、三木派→河本派→高村派→大島派→山東派)などを次々に吸収し、第二派閥まで勢力を拡大してきた。

麻生氏が最後に狙うのは、本家本元の宏池会(岸田派、46人)である。

宏池会は2000年の「加藤の乱」で分裂した後に弱体化し、いまや第五派閥に低迷。岸田氏は安倍氏と麻生氏に服従することで宏池会としては宮沢喜一氏以来30年ぶりとなる首相の座をつかんだが、宏池会に「ハト派の保守本流」の面影はなく、安倍氏と麻生氏の操り人形でしかない。

麻生氏は岸田政権誕生を機に志公会(麻生派)に宏池会(岸田派)を吸収合併して「大宏池会」を結成し、安倍氏率いる清和会と肩を並べる二大派閥として自民党内に君臨する野望を抱いている。大宏池会と清和会が首相を交互に輩出し、麻生氏と安倍氏のふたりで日本の政治を牛耳ろうというものだ。

麻生氏が自らの右腕として岸田政権の幹事長に送り込んだのが、麻生派重鎮の甘利氏だった。岸田政権の顔ぶれをみると、麻生氏と甘利氏の意向が強く反映されたことは明白だ。

自民党は副総裁に麻生氏、幹事長に甘利氏が就任。甘利氏は山崎派から麻生派に移る直前の2011年に派閥横断的な勉強会「さいこう日本」を立ち上げたが、そのメンバーのうちの梶山弘志氏(無派閥)を幹事長代行に、田中和徳氏(麻生派)を幹事長代理に、高木毅氏(細田派)を国対委員長に起用し、自民党の中枢ラインを「甘利人脈」で固めた。

一方、官房長官に起用された松野博一氏(細田派)も「さいこう日本」メンバーである。同じ細田派でも安倍氏が求めた安倍最側近の萩生田氏ではなく甘利人脈の松野氏を「内閣の要」に据えたことは、麻生ー甘利ラインが安倍氏の影響力を押さえ込んで主導権を握ったことを象徴する人事といえるだろう。

安倍側近としてコロナ対策を主導してきた西村康稔・経済再生相の後任に「さいこう日本」のメンバーで甘利側近の山際大志郎氏が就任したことも「安倍氏に対する麻生・甘利ラインの優位」を映し出している。

さらに、岸田首相の足元から入閣した二人(金子恭之総務相と金子原二郎農相)も「さいこう日本」メンバーである。岸田首相は自分の派閥からの入閣さえも麻生ー甘利ラインの言いなりだったことを物語る人事だ。

岸田政権の顔ぶれをみる限り、麻生氏と甘利氏が安倍氏以上に主導権を握ったのは間違いない。安倍氏はこの陣容に不満を漏らしていると永田町ではささやかれている。

そのうえ、麻生氏が清和会と肩を並べる「大宏池会」結成へ動き出せば、安倍氏の警戒感はさらに膨らむだろう。

岸田政権のアキレス腱は安倍氏と麻生氏の間に芽生えた「亀裂」が拡大し、二大キングメーカーの「仲間割れ」が勃発することである。

岸田首相はそれを回避するために安倍氏と麻生氏の双方と親しい甘利氏を幹事長に据えたのだが、いまのところ甘利氏は安倍氏よりも麻生氏との連携を重視し、麻生派主導で「大宏池会」結成にむけて動く様相である。その先には「大宏池会」領袖の座を麻生氏から譲り受けてキングメーカーになることを期待する甘利氏の思惑もあるだろう。

とはいえ、安倍氏と麻生氏の間をとりもち、双方の緩衝材としてバランスを維持する役回りを担うことができる人物は甘利氏を除いて見当たらない(他にその役割が務まるとすれば、清和会OBとして隠然たる影響力を残し文教族ドンとして麻生氏とも長年親交が深い森喜朗元首相であろう)。

野党ばかりではなく、自民党の非主流派に転落した二階氏や菅氏らは甘利氏の追い落としを画策するだろう。甘利氏が失脚すれば、安倍氏と麻生氏の間をとりもつ緩衝材がなくなり、岸田政権は一挙にバランスを失って崩壊する可能性が高い。甘利氏の都市再生機構(UR)をめぐる口利き疑惑は、岸田政権の権力構造を揺さぶる格好の材料といえる。

安倍氏と麻生氏の間をとりもつ甘利氏が最重要人物として浮上した岸田政権の構図は、本日発売のサンデー毎日「3A の谷間 甘利明が手中にする絶対権力」に詳しく寄稿したのでご覧いただきたい。

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