岸田政権が打ち上げた「防衛増税」に対し、各種世論調査では圧倒的多数が反対している。JNN世論調査では賛成が22%、反対が71%だった。
このような国民の声をまったく無視しているのが、岸田文雄首相の後見人である自民党の麻生太郎副総裁である。地元・福岡での講演で「もっと反対の反応が出てくる可能性もあると覚悟して臨んだが、多くの国民の方々の理解を得た。真剣に取り組んでいる(政府の)姿勢を評価していただいている」(読売新聞報道)と述べたのだ。
さすがにSNSで批判が噴出したが、当人はどこふく風。安倍・菅政権で9年近くも財務相を務め、二度の消費税増税を断行した「財務省の用心棒」だけに、防衛増税も既成事実化して一挙に押し切ろうという魂胆であろう。
昨年末の防衛増税をめぐる自民党内の議論は、法人税・所得税・たばこ税の増税で1兆円を捻出するというメニューは決まったものの、増税実施については「2024年以降の適切な時期」として今年末(23年末)の税制改正に決定を先送りした。
今夏以降に防衛増税をめぐる「執行部(岸田首相、麻生副総裁ら)vs反主流派(菅義偉前首相、二階俊博元幹事長、萩生田光一政調会長ら)」の対立が再燃するのは必至だ。
麻生氏としては最大の政敵である菅ー二階ラインに対抗し、財務省との連携を強化しながら岸田首相を押し立てて強行突破するつもりだろうが、増税に対する世論の反発は想像以上に強く、予断は許さない。岸田首相の退陣と引き換えに増税実施を決めるという「取引」が麻生氏と菅氏の間で行われる可能性もあるだろう。
麻生氏の国民を馬鹿にしたような「防衛増税は多くの国民の理解を得た」発言は、国民不在の権力闘争へ突入する宣言と受け止めていい。
このような国民軽視の政治感覚で防衛増税に臨むとしたら、岸田ー麻生の主流派ラインは惨敗するだろう。「国民は理解していない」として衆院を解散して信を問う声が広がれば、不人気の岸田政権で不人気の増税を掲げて総選挙を戦うわけにはいかず、内閣総辞職の機運を高めるに違いない。
この場合、ポスト岸田は「増税撤回」を掲げて自民党総裁選に挑み、そのまま「増税撤回」を公約に衆院解散を断行する可能性が強まる。麻生氏の不用意な発言は財務省など増税派にとってもマイナス効果でしかない。
この発言は今夏以降の防衛増税政局に本人が思う以上に尾を引いて「岸田降ろし」を加速させるのではないだろうか。岸田首相の欧米外遊中に飛び出した麻生氏の増税発言に、政権末期の気配を感じずにはいられない。
SAMEJIMA TIMES 週末恒例のダメダメTOP10に麻生氏も登場です。ぜひご覧ください。