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麻生太郎「冷飯宣言」 副総裁外されて名誉職の最高顧問に祭り上げられ、茂木敏充とともに非主流派へ 最大派閥・第二派閥・第三派閥を非主流派へおいやる異例の弱小連合

自民党の麻生太郎氏が「冷飯宣言」をしている。総裁選で高市早苗氏に乗って敗北し、キングメーカーから陥落した。副総裁の座を政敵・菅義偉氏に引き渡し、名誉職の最高顧問に祭り上げられた。新執行部の写真撮影を拒否するなど、非主流派の立場を鮮明にしている。総選挙で自民党が議席を減らせば、いきなり「石破おろし」を仕掛ける構えだ。

麻生氏は10月3日、菅氏に副総裁を引き継ぐため国会内で面会したが、たった15分で終了し、ふたりの関係の冷え込みをうかがわせた。

麻生氏は石破政権を「岸破義偉政権」と命名。岸田文雄前首相と菅氏が石破氏と組んで最大派閥・安倍派と第二派閥・麻生派、第三派閥・茂木派を外した政権だとみているようだ。

同日夜には茂木敏充氏とフランス料理店で4時間も会食した。石破政権に外された者同士の会食は大いに盛り上がったようで、麻生氏は茂木氏に「冷飯の食い方をおしえてやる」と饒舌だったという。

麻生氏は総裁選前夜に麻生派のメンバーに「第一回投票から高市氏に投票するように」と指令した。麻生派としては河野太郎氏を担いでいたのだが、河野氏は低迷して決選投票に進む可能性はほぼなかったため、土壇場で高市氏に乗ったのだ、菅氏が担ぐ小泉進次郎氏の決選投票を阻み、麻生氏と不仲の石破氏を決選投票で破る構想だった。

麻生氏は、岸田政権で主流3派を形成してきた岸田氏と茂木氏にも電話し「高市にはいろいろ問題はあるが、麻生、茂木、岸田で支えればなんとかなる」として決選投票では高市氏に乗るように要請した。茂木氏は同調したが、岸田氏はこれを拒んで石破氏に投票し、主流3派体制は崩壊した。

岸田政権は主流派=麻生派・茂木派・岸田派、中間派=安倍派、非主流派=菅グループ・二階派という構成だったが、石破政権は主流派=岸田派・菅グループ・二階派・森山派・石破氏、非主流派=安倍派・麻生派・茂木派・高市氏という構図に組み変わったのである。

最大派閥、第二派閥、第三派閥が非主流派に転じたのだから、石破政権の党内基盤が脆いのは当たり前だ。何しろ主流派は第四派閥以下の弱小連合なのである。

派閥力学でいうと、麻生氏の「冷飯宣言」にはまだまだ余裕が感じられる。いつでも巻き返せると踏んでいるのだろう。

麻生氏は大久保利通を高祖父に、吉田茂を祖父に持つ政治名門一族だ。しかし老舗派閥・宏池会で冷飯を食ってきた。宮沢喜一や加藤紘一らキャリア官僚出身のエリートがひしめく「お公家集団」で浮いていたのだ。

加藤氏が派閥会長を継承したことに反発して、河野洋平氏とともに宏池会を飛び出して旗揚げした大勇会という小グループが麻生派の源流である。当初は総裁選出馬に必要な国会議員20人に達せず、派閥とも呼ばれず河野グループと表記された。

ところが加藤氏が清和会の森喜朗内閣に反旗を翻した「加藤の乱」で失脚し、宏池会は分裂。入れ替わるように麻生氏は清和会政権で重用され、政調会長、総務会長、外相と要職を歴任し、ついには首相にのぼりつめた。冷飯暮らしから一転して煌びやかな世界へ躍り出たのである。

安倍政権では副総理兼財務相として君臨し、岸田政権では安倍氏亡き後のキングメーカーの座を確立していた。

その麻生氏が毛嫌いしてきたのが石破氏だ。麻生内閣で閣僚ながら真っ先に麻生おろしに動いたことを今なお根に持っている。そして今回の総裁選では岸田氏にも裏切られ、非主流派に転落した。

麻生氏、84歳にして再び冷飯くらしに舞い戻った。ここからどう巻き返すのか。

弱小連合が担ぐ石破首相はいきなりブレ続けて迷走し、内閣支持率は5割前後で、新政権としては低調な滑り出しだ。石破政権を突き放した結果、総選挙で自民党そのものが惨敗すれば元も子もない。非主流派としても舵取りが難しい局面である。

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