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岸田首相が最後に頼るのは麻生太郎!公明が反対する憲法改正を進めると約束して関係修復に躍起!ライバル・菅義偉の岸田おろしを受けて麻生も軟化か

岸田文雄首相が最後に頼るのは、やはり政権の生みの親である麻生太郎副総裁のようだ。自民党内から首相退陣要求が相次ぐなか、麻生氏と二週続けて会食し、9月の自民党総裁選への支持を求めた。四面楚歌の岸田首相だが、まだまだ諦めていないようだ。

岸田首相は麻生氏に担がれて2021年秋の総裁選に勝利した後、麻生氏のいいなりの政権運営を続けてきた。ところが昨年秋から自立を模索し、麻生氏の反対を振り切って定額減税の決定。今年初めには自民党の裏金事件を受けて、麻生氏に無断で派閥解消を打ち出し、怒りを買った。結局、首相の意向に逆らって公然と派閥を存続させたのは、麻生氏だけだ。

岸田首相はさらに政治資金規正法の改正で、麻生氏の反対を振り切って公明党案を丸呑みし、ふたりの関係悪化は決定的になった。

岸田首相はイタリアでのサミットに向かう直前に麻生氏に関係修復のための会食を持ちかけたが拒絶された。イタリアへの外遊中、麻生氏は、岸田首相との関係が冷え込んでいる茂木敏充幹事長と「首相不在の間」に露骨に会食し、岸田首相を牽制。麻生氏は講演で政治資金規正法改正への不満を露骨に示し、麻生派若手からも公然と首相退陣要求が飛び出した。

麻生氏が公明党案丸呑みに猛反発しているのは、その背景に、公明党に近い菅義偉前首相の影を感じているからだ。麻生氏と菅氏はキングメーカーの座を争っている。岸田首相が菅氏に歩み寄るなら身限るぞと強く見せしめたということだろう。

一方、菅氏も国会閉幕を受けて総裁選へ始動した。地元・自民党横浜市連会長に首相退陣要求を打ち上げさせたうえ、非主流派の萩生田光一、加藤勝信、武田良太3氏(HKT)との定期会合に小泉進次郎氏を招いて、岸田おろしの機運を高めた。さらには自らも23日の講演で、総裁選について「刷新感を持ってもらえるかが大きな節目になる」と述べ、岸田首相に代わる新しいリーダーが出るべきとの認識を示した。

岸田首相とすれば菅氏の反岸田の姿勢が鮮明になった以上、麻生氏と寄りを戻すしかないということだろう。サミット帰国後の18日の会食(和食)に続いて、23日の会食(鉄板焼き)となったわけだ。

この会食で、岸田首相は麻生氏に対し、憲法改正への意欲を語り続けたという。これは、公明党が反対する改憲に積極的に取り組むことを約束することで、「公明党のいいなりにはならない」=「菅氏とは決別する」という姿勢をアピールしたといっていい。

麻生氏の態度はこれをうけてやや軟化したようだ。菅氏と組まないと約束するのなら応援してやってもよいということだろう。

首相続投のためならなりふり構わない岸田首相の姿勢は、自己矛盾の塊である。

自らが前面に立って進めた派閥解消を無視する麻生氏に頭をさげることは、この間の派閥解消の動きを自ら否定するものといってよい。さらには政治の信頼回復の目玉に掲げた政治資金規正法改正に不満を漏らす麻生氏の軍門に下るということは、これまた政治改革への取り組みを自ら否定するのと同じだ。

しかも麻生氏に頼って総裁再選をめざすということは、派閥に依存して総裁選を戦うということである。派閥解消の旗印も自ら打ち消すものといってよい。

要するに、岸田首相はその時々の人気取りのために口先だけでさまざまな政策を打ち上げてきただけで、確たる信念はなく、あっという前に豹変してしまうということだ。政局的には麻生氏と菅氏の間をいったりきたり、政権維持のためその場しのぎの対応を続けているだけである。

その岸田首相に、果たして麻生氏が乗るかどうかはわからない。麻生氏としても、岸田首相を担いで総裁選に敗れれば、キングメーカーの座を菅氏に奪われてしまう。勝てるかどうかが最終判断のポイントだ。

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