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枝野代表は「立憲民主党の議席が増えれば勝ち」ではなく「野党が政権を取れなければ負け」と宣言すべきである〜共通政策の締結を受けて

野党第一党の立憲民主党が9月8日、共産党、社民党、れいわ新選組との間で衆院選の共通政策をようやく締結した。

新型コロナ対策では医療体制の整備や財政支援の強化を掲げ、格差是正策として消費税減税や社会保険料の見直しなどを通じて所得再分配を進める。安全保障法制や特定秘密保護法の違憲部分を廃止し、沖縄・辺野古の米軍基地建設を中止する。再生エネルギーを拡充して原発のない脱炭素社会を追求するーーという内容だ。

これまで開きがあった消費税減税や原発政策について、あいまいな部分は残るものの一定の合意を得て共通政策締結にこぎつけたことは評価できるだろう。今後、衆院選の候補者一本化の調整も加速する可能性が高い。自公政権と対峙する最低限の体制がやっと整った形だ。

共産党を敵視する連合の影響を強く受ける国民民主党が今回の締結に加わらなかったことは懸念材料だが、国民民主党に単独で衆院選に臨む体力はなく、遠からず一定の枠組みで野党共闘に加わるしかないと思われる。

連合には共産党を含む共通政策の枠組みに大きな抵抗があるだろう。しかし、連合はいまや労働者のごく一部の代表でしかない。とりわけ連合執行部はトヨタなど大企業の意向を強く受け、非正規労働者らの声を代弁する団体とは言えない状況だ。

働き方が流動化するなかで「労働者の声」をひとつに束ねることは難しくなっている。連合が加盟労組の政党支持を一律に決めること自体に無理が生じているといえよう。今後はそれぞれの労組によって支持政党が異なるという事態が広がり、連合の求心力はますます落ちていくのではないか。野党は連合依存から脱却する姿勢をしっかり打ち出し、個別労組との連携を強化すればよいと思う。

立憲民主党の枝野幸男代表は内閣支持率が続落する菅政権に挑むかたちであれば政権交代は十分に可能であると踏んでいたようである。当初は国民民主党や社民党とあわせて衆院の過半数を超える候補者を擁立することを目標としていたが、8月31日の記者会見では立憲民主党として「衆院の半数を超える候補者を擁立する」と強気の姿勢に転じた。この発言は、立憲民主党は単独で過半数獲得を目指しており、共産党など他の野党との共闘を軽視していると受け止められ、野党内に不協和音が生じていた。

ところが、枝野発言の直後に菅首相が総裁選不出馬を表明。国民的人気の高い河野太郎ワクチン担当相らが出馬に相次いで意欲をみせ、マスコミ報道は総裁選一色に。新総裁・新首相のもとで内閣支持率が大きく回復する展開が現実味を増し、野党は一転して埋没の危機に陥った。菅首相の交代を予期していなかった枝野氏らの見通しの甘さが問われ、衆院選戦略の抜本的見直しを迫られていた。

今回の共通政策締結は、菅首相の交代という自民党側の動きに背中を押されたものだった。その結果として、立憲民主党が共産党やれいわと牽制球を投げ合っている余裕がなくなり、一気に野党共闘の体制が整ったのは「不幸中の幸い」といえるだろう。とりわけ野党共闘の首相候補である枝野氏とカリスマ性の高いれいわの山本太郎代表が個人的確執を乗り越えて合意に至ったのは、大きな前進といっていい。衆院選への危機感が後押ししたとはいえ、野党共闘の体制が固まった意義は大きい。

もっとも野党が一本化さえすれば政権交代が近づくと思うのは早計だ。安倍自民党と戦った過去6回の国政選挙で野党は6連敗している。いずれも投票率は5割そこそこだった。一方、2009年衆院選で民主党が大勝して政権を奪取した時の投票率は7割近くだった。投票率を20%引き上げなければ政権交代は難しい。従来の野党支持層を固めるだけでは投票率は70%に遠く及ばず、議席を伸ばしたところで政権交代には届かないのが現実だ。無党派層への食い込みが絶対に不可欠だ。

枝野氏は「議席を伸ばしたら勝ち」という発想をやめ、「政権交代できなければ敗北」と宣言し、不退転の決意で衆院選に臨むべきである。「政権交代できなければ代表を辞める」と不退転の決意を示したうえで、野党共闘の枠組みを進めるべきである。「立憲民主党の議席数」を枝野代表の責任ラインにすると、どうしても党利党略を優先することになる。「野党全体で過半数獲得」を勝敗ラインとし、それがかなわなければ辞任することを明確に約束してはじめて「立憲民主党の代表」ではなく「野党共闘の首相候補」として広く支持を受けることができるのだ。

そのうえで、無党派層に支持を広げるには、野党への関心を高める工夫が不可欠だ。そのための様々なアイデアについては先日の当欄で示した。再掲するので参考にしてほしい。野党支持層の世界から飛び出し、なりふり構わず無党派層の世界へ身を投げ出すべきである。

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