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野党共闘が崩壊した枝野幸男vs旧統一教スキャンダルの牧原法相が7度目の激突となる埼玉5区 横一線の大激戦を決するのは公明票か

リベラル界のエースである立憲民主党の枝野幸男元代表が、初入閣した自民党の牧原秀樹法相に7度目の挑戦を受ける衆院埼玉5区。これまで枝野氏が6連勝しているが、前回総選挙は一騎打ちの戦いで、枝野氏は立憲代表だったのに、6千票差に迫られる大接戦でかろうじて逃げ切った。

この総選挙で立憲は惨敗し、枝野氏は代表を引責辞任。その後、共産党やれいわ新選組との野党共闘は間違いだった、とりわけ消費税減税を掲げたことは間違いだったと公言したことから、今回は共産党とれいわが「打倒枝野」を掲げて埼玉5区に候補者を擁立し、野党共闘が崩壊した。

前回は牧原氏と一騎打ちでも大接戦だったのに、今回は自民批判票が共産やれいわに分散するため、ますます接戦になることが予想された。

しかも枝野氏は9月の立憲代表選に出馬しながら敗北。一方の牧原氏は石破内閣に法相として初入閣し、枝野氏は大ピンチとなった。

けれども神風が吹いた。牧原氏が入閣直後に旧統一協会問題で炎上したのだ。

牧原氏は自民党が所属議員に求めた旧統一教会との関係の自己点検で「調査中」と答えていた。このため自民党が調査結果を公表した時点では「関係議員一覧」に含まれていなkった。その後、牧原氏が教団関連イベントに多数出席していたことを党に報告したが、自民党はそれを公表していなかった。牧原氏入閣を機に週刊誌が旧統一教会との関係を報じて発覚した。

牧原氏はすでに自民党に報告済みとし、自民党もすでに報告を受けている事案として問題なしとしたが、「旧統一教会との関係を隠していた」と受け止められても仕方がない事態である。入閣したばかりの牧原氏に批判が噴出した。

大逆風の枝野氏を救う牧原氏の自滅となるのか。マスコミの序盤情勢調査では横一線で激しく競り合っているようだ。枝野氏と牧原氏、双方ともアゲインストのなかでも7度目の対決といっていい。

私が埼玉5区の影の主役とみているのが、公明党の動向だ。牧原氏は公明党の推薦を受けているものの、マスコミ情勢調査では公明支持層の6割程度しか固めていない。

公明党にとって埼玉県は最重要地域である。新代表に就任した石井啓一氏が比例北関東から埼玉14区へ転身し、比例重複なしの不退転の決意で出馬した。埼玉14区で敗れれば「新代表がいきなり落選」となる。ここだけは絶対に負けられない。

隣の埼玉13区には、裏金問題で自民党から公認を外された三ツ林裕己氏が無所属で出馬している。三ツ林氏の地盤は埼玉14区にも広がっていることから、公明党は裏金問題に目をつむり、三ツ林氏を推薦した。もちろん14区での見返りを期待してのことである。

自民党が非公認とした12人のなかで、公明党が推薦に踏み切ったのは三ツ林氏と西村康稔氏(兵庫9区)だけだ。兵庫県では公明現職2人(兵庫2区と兵庫8区)が日本維新の会と初めて激突するため、自民党との連携を強化する必要がある。裏金議員を推薦する批判を浴びてでも、埼玉14区と兵庫2区、兵庫8区では自民票がどうしても欲しいのである。

ここで注目すべきは、埼玉14区に立憲民主党が候補者を擁立していないことだ。維新、国民、共産はそれぞれ候補者を擁立している。他の選挙区では立憲も擁立して野党が乱立するケースが相次いでいるが、埼玉14区では立憲は擁立を見送ったのだ。明らかに公明党への配慮だろう。

ちなみに埼玉13区にも立憲は候補者を擁立していない。13区と14区をセットにして、立憲と公明の間で水面下の「協議」が行われたのではないか。その見返りとして埼玉5区で公明党が「手を抜く」密約がかわされたのではないかと私は疑っている。

自公連立発足から四半世紀がたち、自公連携に軋みがみられるようになった。公明党は政権与党にとどまるために自民党との選挙協力を続けているが、自公過半数割れの事態に備えて、選択肢を広げておく必要もある。立憲民主党の野田佳彦代表や岡田克也前幹事長は旧新進党時代の仲間でもあった。立憲と公明には地下水脈があり、さまざまな裏取引がかわされている可能性は高い。

公明党がどこまで本気で牧原氏を応援するのか。埼玉5区の大激戦を決するのは公明票の動向ではないかというのが私の分析だ。

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