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非科学的なのは為政者やマスコミ?コロナ自粛やワクチン接種に納得しない若者たち〜尾身会長は「若者のせいじゃない」と言うけれど

政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長が8月17日夜、菅義偉首相と記者会見に臨んだ後、ネット番組『ABEMA Prime』のスタジオに駆けつけ、若者らと意見を交わした。「若い人々に危機感が十分に伝わっていない」と訴えてきた尾身氏に対し、若者たちの生の声が興味深かったので、やりとりをいくつか紹介したい。

飲食店経営も手掛けるeスポーツ・αD代表の石田拳智さん(25)「緊急事態宣言には若者たちが納得する理由がない。飲食店にはいまだに協力金も入っていない。失敗した政策の理由も言われていない。マスクと10万円以外に何をしてくれましたか?」

尾身氏「協力金がまだ入っていない?政府には頑張ってほしい」

お茶の水女子大学1年・山邊鈴さん(19)「政府はこれだけやりました。だからあなたたちもこれくらいしてくださいという等価交換がないと国民は動かない。自分たちが動こうという理由づけがほしい」

尾身氏「山邊さん、海外留学から戻ったら、日本の政治家になってやってください。政治家がこれとこれは絶対やるから協力してください、というのは大賛成です」

山邊さん「もし尾身先生がいま10代や20代だったとしたら、行動制限にどのぐらい従いますか」

尾身氏「私がいま学生で、1、2カ月ならともかく1年も対面の授業がなく、友達とも会えない。これだったら非常に強い不満とストレスを持つでしょう。先生に、“ふざけるな“と言いかねない」

「Flags Niigata」代表の後藤寛勝さん(27)「僕たち若者は批判の対象、すごく注意される対象になっている。20-30代が感染の歯止めの鍵であることは僕たちも自覚しているが、緊急事態がずっと続いて日常になってくると…。僕らは納得できることなら行動に移す。選ばれた人だから聞くのではなく、正しいと思うから聞く」

尾身氏「若い人のせいでは全くない。ウイルスの特徴なんです。若い人は活動量が多いから感染の伝播に関与しても気づかない。それで提言を出したら、尾身は若者を批判していると言われてしまった」

若者たちの声に共通するのは、為政者や専門家が「納得のいく理由」を示していないという点だ。

私も20-30代と話す機会を積極的に求め、緊急事態宣言による行動自粛やワクチン接種について意見を聞くようにしている。たしかに彼らのほどんどは感染爆発や医療崩壊に対して「危機感」を抱いていない。彼らが一様に語るのは「自分の周りの同世代が感染して重症化したり死亡したりするケースを聞いたことがない」ということだ。

たしかに、目の前にいる一人の若者がコロナに感染したとして、重症化したり死亡したりする確率は微々たるものだった。デルタ株の出現でその確率はこれまでより上昇したとしても、彼らが肌身で恐怖を感じるには程遠いレベルであることに変わりはない。「大人」たちにとってそれが不都合な事実だとしても、まずはそれを率直に認める必要がある。

日常生活においてコロナ感染に注意はするものの、そのリスクはインフルエンザなど他の病気と比して格段に高いとは思えず、さらには失業など他の生活上のリスクと比べて過剰に警戒するほどのものではない。むしろいつ終わるかわからない「自粛」要請に延々と応じて貴重な日々を自宅に閉じこもって無為に過ごすことで失うものは、運悪くコロナに感染して数人に一人の確率で発症し1〜2週間寝込んで失うものよりもはるかに大きいーー若き彼らがそう考えるのは、ある意味で合理的なリスク評価である。

これに対して為政者やマスコミが「若い世代も重症化する人がいる」「デルタ株では若い世代でも重症化する人が増えている」と言うたびに、当事者である若い世代は「統計論的、確率論的に一人の若者が重症化するリスクがどのくらい高いかを明確に証明してほしい」「大人たちは自分を守るためにごく稀に重症化する若者を大袈裟に強調して怖がらせ、自粛に応じさせようとしている」と疑念を強め、為政者やマスコミをますます信用しなくなっていく。為政者やマスコミは政治的思惑から自分たちに非科学的・非合理的なことを強要していると考えているのだ。

彼らは自分たちの行動が大きく制約されているのに為政者やマスコミの活動(その代表例が東京五輪)は堂々と行われていることにも怒っている。重症化リスクが極めて低い自分たちが行動自粛に応じていいと納得するだけの対価(リターン)を得られていないと不満を募らせている。ワクチンが高齢者優先で接種され自分たちは後回しにされているのに「若者の言動」ばかりが悪者に仕立てられてきたことにも憤慨している。為政者もマスコミも人口の多い高齢者の声を代弁し、若者の声を無視していると感じているのだ。

世代間の分断がどんどん深まっているのが、コロナをめぐる現在の世相である。

若い世代にはワクチン接種への抵抗感も強い。「不妊につながる」といったネット上の情報について為政者やマスコミがいくら「デマだ」と強調しても不安や疑問は解消されない。「為政者やマスコミはこれまで自分たちに都合の良い情報しか伝えてこなかった」「ワクチン接種についても若い世代に接種させるために不都合な事実を覆い隠している」と疑っているからだ。まったく信用されていないのである。

為政者やマスコミは当初「ワクチンの2回接種が進めば感染拡大は終わる」と言わんばかりに触れ回っていた。その典型が「ワクチンは切り札」と繰り返してきた菅首相だった。ところが、ここへきて2回接種した後も感染したり感染させたりすることがある事例が相次いで発覚。ワクチンは重症化を防ぐ効果はあるものの、感染や発症を防ぐ効果には限界があることがわかり、3回目の接種の議論が本格化している。

当初はPCR検査を抑制していたのに最近は急に検査しろと言い出した。ワクチン接種もまだ「不確かなこと」はたくさんある。そのうち前言を翻すかもしれないーー若者たちに渦巻く不信感にはそれなりの理由がある。

自分は接種しないと言うある若者は「開発されたばかりの新型コロナのワクチンのリスクは、接種直後の一般的な副反応だけではない。命にかかわる深刻な健康被害や人体への長期的な影響を含めて『まだ接種が始まって日が浅く、わからないことがある』というのが科学的・論理的でフェアな立場でしょう。重症化リスクが極めて少ない若者が、これから先の長い人生において、いつどんな形で現れるかもしれない健康被害のリスクをあえて自ら背負い込んで、ワクチンを接種する必要はあるのでしょうか? 少なくとも自分はメリットを感じない。感じるのは健康被害のリスクだけです。ならば何のために接種しなければならないのか。為政者や専門家やマスコミから納得のいく説明を聞いたことがありません。自分自身のためではなく社会全体を守るために若者にワクチン接種を求めるのなら、一方的にリスクを背負わせるのではなく、それ相応の対価を支払うべきです。若者ばかりが損をしている」と言う。たしかに菅首相や尾身会長より、この若者の言葉の方が論理的で説得力がある。彼らは「合理的で公正で納得できる仕組み」を求めているのである。

これに対し、ワクチン接種をめぐるマスコミ報道は「政府広報」の様相だ。重症化の可能性が極めて低い若い世代に向けて、接種によるリスクには触れずに「若い世代にも接種のメリットが十分にある」と一方的に啓蒙するかのような記事が目立つ。接種後の死亡例についても詳しく伝えずに「現時点で接種との因果関係が結論づけられた事例はない」と繰り返す報道も、「因果関係が絶対にないとは言えないんでしょ」という疑念を膨らませるばかりだ(マスコミの「政府広報化」は在京テレビ局・大手新聞社ほど著しい。地方メディアには、接種直後の副反応とは別に1週間以上経過してから症状が出る患者の増加を伝えるBSS山陰放送「新型コロナワクチン…接種後の後遺症相談が増加」などリスクを伝える記事も出始めた)。

自分自身にとって接種するリスクと接種しないリスクはどちらが高いのかーーそのような彼らの疑問にきちんと答えない限り、接種率は伸び悩み続けるだろう。ワクチン接種を一方的に押し付けるよりも、「確かなこと」と「可能性は高いが、まだ解明されていないこと」を明確に区別したうえで、メリットとリスクを公正に評価し、最終的には各個人の判断に委ねる報道姿勢の方が、結果として接種率が高まると私は思う。公正な報道のカギは「統治者目線」ではなく「読者目線」であることだ。

私自身は「反ワクチン派」ではない。新型コロナワクチンは重症化を防ぐことなど一定の効果はあると考えている。けれども、ワクチンがすべてを解決するとは思っていない。そして「ワクチンの強制」(事実上の強制を含めて)には強く反対する。ワクチンの健康被害については未解明の部分があることは厳然とした事実であり、心身両面のさまざまな理由で接種に不向きな人、抵抗感がある人がいるからだ。もし健康被害が発生した場合にその結果は本人以外に誰も背負うことはできない。これは「個人の意思」が最大限尊重されるべき問題だ。個々人が「ワクチンを打ちたくない理由」の説明を迫られる理由もない。「内心の自由」が守られるべきだ。接種しない人が差別的扱いを受けることはあってはならない。

私は「それぞれの人がリスクとメリットを天秤にかけ、メリットが上回ると判断したら打てばよい。その選択について、周りがとやかく言うべきでもない」という映画作家の想田和弘さんの主張に極めて近い。それが「個人の自由と権利」を最大限尊重する日本国憲法にのっとった考え方であろう。政府が国民の命を守るために最優先で取り組むべきことは、ワクチン接種の強要ではなく、早期診断・早期治療を可能にする医療提供体制の緊急整備だ。

第103回:「ワクチン強制化」への流れを警戒し憂慮する(想田和弘)

コロナ危機から生じた「世代間の断絶」は非常に大きい。この一年半、政治が若い世代に対して「自粛と行動変容」を迫るばかりで彼らの声を汲み上げてこなかった結果である。彼らは「政治やマスコミは高齢者の声を代弁するもの」と考えている。この社会的後遺症はコロナウイルス自体の被害よりも深刻かもしれない。

なぜ青春の日々を犠牲にしてまで自粛や行動変容に応じる必要があるのか。なぜ深刻な健康被害のリスクまで個人で背負ってワクチンを打つ必要があるのか。自分たちが我慢を強いられているのはいったい誰を守るためなのか。若い世代の疑問に対して、日本社会の指導的立場にある「大人」たちはまっとうに答えてきたのか、改めて問い直す必要がある。

若い世代は「数」で高齢世代に太刀打ちできないことを知っている。だから、政治的に真正面から反抗しない。「政治を相手にしない」「政治を無視する」というかたちで抗議している。このままでは社会の分断は進むばかりだ。この現実に私たちはしっかり向き合わなければならない。

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