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検察と朝日新聞はそっくり!?「郷原信郎✖️鮫島浩」ユーチューブ対談が実現

検察出身の弁護士である郷原信郎さんが拙著『朝日新聞政治部』を読んで私に対談を依頼してくれた。7月12日に都心にある郷原さんの事務所を訪ね、およそ1時間、じっくりお話しした。

実はお会いするのは初めてだったが、YouTubeやTwitterで郷原さんの意見を見たり読んだりしているので、初対面という感じはまったくしなかった。

私の専門は政治で、検察捜査については専門家ではない。そこで日産のカルロス・ゴーン事件や安倍晋三元首相をめぐる森友事件や桜を見る会事件など、政治と検察が密接に関連する出来事が起きた時は必ず郷原さんの見解にまずは目を通し、そこから自分の考え方を組み立てていくことにしている。郷原さんの見解はいつも論理的に整理されていて、日本の言論界をリードする有力な知識人のひとりである。

お互いに忙しくて参院選が終わった後にようやく日程があい、私は楽しみに郷原さんの事務所にお邪魔したのだった。

当初は予定していなかった安倍晋三元首相の暗殺事件にはじまり、『朝日新聞政治部』の内容に沿って、新聞報道のあり方や新聞社の体質、「吉田調書報道」問題、さらには朝日新聞の言論サイト「論座」を揺るがしたDr.ナイフ問題(知る人ぞ知る大問題)まで、実に幅広いテーマを丁寧に語り合った。

さすが郷原さん、検察官出身らしく丁寧な口調で聞き出すのが上手だ。切れ味鋭い論考とは打って変わり、聞き手の郷原さんは紳士的で柔和だった。新聞記者には(私を含めて)取材の際に相手の話を聞き出すというよりは自分の話が長くなる悪弊が往々にしてみられるが、一流の検察官は決して相手の話の腰を折らないのだろう(もちろん取り調べの際に高圧的・一方的に同意を迫る二流の検察官も多数いるだろうが)。

朝日新聞社の内情に話題が及ぶと、郷原さんは時折、ご自身が所属していた検察組織、とくに東京地検特捜部と対比しながら質問を投げかけてくる。私も朝日新聞社内では数多くの敵を作りながら事勿れ主義や前例踏襲の慣行と戦ってきたのだが、郷原さんも検察時代は斬新なアイデアを次々に繰り出して組織改革を手がけ、私と同じように相当なハレーションを組織内に巻き起こしてきたことがよく伝わってきた。話せば話すほど、出世や保身を優先し、改革の目を潰そうとする内向きなマインドが、検察と朝日新聞はそっくりと思ってしまった。

二人とも組織になじめない人間といえるかもしれない。いや、正確にいえば日本型組織になじまないというだけだろう。国際社会はそのような内向きな組織が生き残れるほど甘くはない。

郷原さんは東芝や日産など大企業のコンプライアンス問題をおおく手がけてきたが、どこも検察や朝日新聞社と同じ問題を抱えていると話していた。やはりこれは行政やマスコミにとどまらず、日本企業に通じる病理であり、それこそが日本社会が低迷して世界から取り残されている最大の原因なのであろう。

ちなみに、『朝日新聞政治部』に関して数多くの取材を受けてきたが、とても興味深いことがある。それは新聞社をはじめマスコミの正社員の記者たちは『朝日新聞政治部』の内容にそれほど驚かないのだが、フリーの記者やライターたちには一様に「新聞記者って、あんなに人事のことばかり考えているんですか」「新聞社って、あんなに社内のことばかり見ているんですか」と驚かれることである。

拙著は「新聞業界の常識・世間の非常識」をありのまま書き連ねたものであり、この本に大きな反響をいただいているということは、それだけ新聞社の内実がこれまで世間に知られていなかったことの裏返しであろう。そのような内向き・閉鎖的な業界がインターネット時代に生き残れるはずがない。

前置きが長くなってしまったが、盛りだくさんの1時間の対談だったと思うので、お時間があるときにぜひご覧いただきたいと思う。

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