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萩生田光一氏が文春オンラインで激白、5人衆のライバルである西村康稔氏や世耕弘成氏への恨み節を全開!復権への執念〜それでも険しい道のり、潔い離党のススメ

自民党安倍派の裏金事件で政調会長を更迭された5人衆のひとり、萩生田光一氏が文春オンライン『「自民党は“生贄”を出さないと終わらない雰囲気」萩生田光一前政調会長が明かした「裏金2700万円の使い道」と「政治責任の取り方』で本音を明かしている。

萩生田氏は東京地検特捜部が捜査を終えた後に記者会見し、自らが安倍派からキックバックされた裏金は5年間で2728万円にのぼったことを公表した。この裏金額は5人衆(萩生田氏のほか、西村康稔前経産相、松野光一前官房長官、世耕弘成前参院幹事長、高木毅前国対委員長)の中でトップだ。裏金は「担当者が机のカギ付きの引き出しに保管していた」という。

萩生田氏は自らの裏金額が膨らんだことについて「安倍派ではコロナ禍の状況をかんがみて、パーティ券の販売ノルマを減らした」にもかかわらず、萩生田事務所の担当者が事前に知らされていなかったためと説明したうえで、こんな恨み節を漏らしている。

「もし当時、私が派閥の運営に関与してそれを知っていたら、そんなに頑張って売る必要はなかった。結局、歴代の事務総長たちは全然(ノルマを)オーバーしておらず、我々だけが一生懸命売って、手元に残ったという思いが残ります」

歴代事務総長というのは、安倍派だけでなく自民党東京都連や文教族としても萩生田氏の「目の上のたんこぶ」だった下村博文元文科相に加え、5人衆として派閥会長の座を争っていた西村、松野、高木3氏のことだ。

萩生田氏は政調会長や文科相、官房副長官などを歴任し、安倍派(清和会)のドンである森喜朗元首相からも最も寵愛され、派閥会長レースのトップを走っていた。とはいえ、5人衆のなかでは当選回数は最も少なく、年齢も最も若く、事務総長も経験しておらず、派閥運営の実権は握っていなかった。裏金の還流システムを継続してきた責任は西村、松野、高木3氏らにあり、自分は深く関与していないという弁明だ。

しかも安倍晋三元首相が還流システムを見直すことを提案した時に事務総長だった西村氏の裏金額が100万円にとどまっていることも癪に障っているようだ。「歴代の事務総長たちは全然(ノルマを)オーバーしておらず」というくだりは、西村氏を念頭に置いた発言とみていい。実際、西村氏は釈明会見で「ノルマにはこだわらなくていい」と秘書に伝えていたことを明かしている。

萩生田氏にとって派閥会長レースの最大のライバルは西村氏だった。森元首相も「萩生田氏にするのか。西村氏にするのか、はやく決めろ」と5人衆に再三迫っていた。萩生田氏としては、安倍派を消滅させた政治責任が最も重いのは、事務総長だった西村氏であり、裏金総額で責任を軽重を判断すべきではないという思いなのだ。

萩生田氏の恨み節は、5人衆の残るひとり、世耕氏にも向かっている。

「こういう話をすると人のせいにしているように聞こえてしまうのは嫌なんですけれど、(2019年に)清和研の事務局長が代わってからガバナンスが変わったらしく、事務所とのキャッチボールができなくなり、どうしていいか分からなくなった」

ここで登場する「2019年に新たに事務局長になった人物」こそ、今回の裏金事件で東京地検特捜部に在宅起訴された会計責任者である。彼は世耕氏が政界入り前に勤務していたNTTの先輩で、彼を安倍派事務局長に推薦したのも世耕氏なのだ。

世耕氏は事務総長こそ歴任していないものの、参院安倍派の取りまとめ役として大きな影響力を振るっていた。派閥の政治資金パーティーでも乾杯の音頭をとるなど、派閥運営の中心にいたのである。しかも事務局長とは親密な間柄であり、裏金還流システムを継続してきた重大な政治責任を免れないのは、その通りであろう。

西村氏と同様、派閥会長の座を争っていた世耕氏への激しいライバル心がのぞいている。

萩生田氏の文春オンラインのインタビューには、菅義偉内閣で官房長官を務めた加藤勝信氏と二階派事務総長だった武田良太氏が同席している。菅氏や二階氏は、裏金捜査を免れた主流派の麻生派や茂木派と敵対する非主流派の中核だ。

加藤氏は茂木敏充幹事長と茂木派内で主導権争いを続け、茂木派から小渕優子氏ら離脱者が相次ぐ今、茂木氏を蹴落として派閥再編を仕掛ける好機である。武田氏は二階派が解散した今、将来の「武田派」結成に備える時期といえる。萩生田氏は加藤氏や武田氏と連携しながら復権を目指していくつもりだろう。

このままでは終われないという思いは、次のくだりに滲み出ている。

「私は責任を感じたからこそ、年末に党の政調会長を辞しました。そのことで一定の政治責任は果たしたつもりです。しかし、『これですべてチャラになった』なんて言うつもりはありません。党の中で一定程度謹慎しなければという思いはあります。ただ当事者としては言いづらいのですが、自民党は、失敗は失敗としてもう少し寛容に、『まずかったけど頑張れよ』と言ってくれる政党かと思ったら、党内からも『処分、処分』と言われて……。(中略)“生贄”を出さないと終わらないような雰囲気になっていて、ちょっと寂しいなと思います」

私は、萩生田氏の政治責任を容認するつもりはまったくないが、この発言の込めた思いはよく理解できる。私もかつて朝日新聞社という組織で同じような体験(原発報道をめぐる「吉田調書事件」で失脚)をしたからだ(詳細は拙著『朝日新聞政治部』で)。

組織に属する者たちは、落ちゆく者に冷たい。萩生田氏はそれをまさに実感していることだろう。

だが、私の経験からいえば、萩生田氏の復権は、相当に厳しい。萩生田氏の失脚を機に、「次」を狙う面々が続々と登場し、彼らの大多数は立場を超えて萩生田氏の復権を望まないからだ。

彼らは裏金事件を「自民党内の権力構造を変える好機」としか捉えていない。安倍派5人衆をはじめ、裏金事件で失脚した面々を完全に追い落とし、そこでぽっかり空いたポジションを奪い合うことにしか興味がないのだ。

私も朝日新聞社で失脚した後、数年間は会社にとどまり、復権を目指し、もがき苦しんだが、一度できた社内の流れを押し戻すことは到底無理そうだった。朝日新聞を退職して独立し、小さなメディア『SAMEJIMA TIMES』を立ち上げ、はじめて活路を見出せた。

萩生田氏は最大派閥・清和会で出世街道を順調に駆け上ってきた。突然の「失脚」をにわかには受け止められないに違いない。これまで培ってきたものを手放すのはさぞかし惜しいだろう。

けれども、自民党内で復権を目指しても、その道のりはかなり険しい。それが現実だ。それほど裏金事件は自民党史に残る重大事件だった(朝日新聞社における「吉田調書事件」と同様である)。

いっそのこと、潔く自民党を離れ、別の道から復権を目指す方が近道ではないか。余計なお世話かもしれないが、歴史的重大事件の渦中に身を置いて「失脚」した体験を持つ私からのささやかなアドバイスである。

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