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石破首相、世論に背中を押されて萩生田氏らの非公認を決定、裏金議員の比例重複を認めず!安倍派の反発必至、総選挙後に石破おろしか、それとも安倍派大量落選で政権基盤安定か

石破茂首相が総選挙で安倍派5人衆の萩生田光一氏ら裏金議員少なくとも6人を公認せず、その他の裏金議員も比例重複を認めないと表明した。

衆院解散でブレ、金融政策でブレ、裏金議員の公認問題でブレ、世論の批判が高まっていた。自民党の森山裕幹事長は裏金議員を全員公認する方向で調整していたが、それでは世論が猛反発し、総選挙で自民党が単独過半数を割る恐れがあるとみて、土壇場で方針転換した格好だ。

もちろん約40人の裏金議員を公認することで世論の反発が収まらない可能性はある。逆に大物議員の萩生田氏らが公認から漏れて落選する展開になれば、世論の反発が収まる可能性もあろう。

安倍派の反発は必至で、解散前に党内闘争が激化することは避けられない。総選挙で自民党が大きく議席を減らせば、いきなり石破おろしが動き出すだろう。

一方で、裏金議員の多くが総選挙で落選して安倍派が壊滅的打撃を受ければ、自民党が総選挙で議席を減らしてもむしろ政権基盤は安定する可能性もある。

石破首相の決断が吉と出るか凶と出るか。先行きはまったく見通せない。石破首相が世論に背中を押されて後戻りできない一線を超えたのは間違いないだろう。

石破首相は就任した後、チグハグな対応を繰り返し、国民から失望を買っていた。

まずは最大派閥・安倍派への対応だ。安倍派からの入閣はゼロ。それだけではない。安倍晋三元首相を「国賊」とよんだ村上誠一郎氏を総務大臣に起用し、安倍派の神経を逆撫でする人事を断行した。ところが、安倍派の裏金議員については全員を公認する方向で調整を進めた。石破氏への憎悪を募らせる相手に手心を加えて融和に走ったのだ。

権力闘争は甘くはない。干し上げるなら徹底的に干し上げないと逆襲をくらう。

実際、萩生田氏は総選挙で公認を得られると確信したのか。「高市さんを幹事長に起用すべきだった」と公言し、石破氏に反旗を翻していた。要するに、石破氏を舐めていたのだ。

萩生田氏の親分である森喜朗元首相も高市支持へ傾いている。石破氏の弱腰をみて、反石破勢力が増幅し始めたのだ。

萩生田氏ら安倍派の裏金議員の一部を非公認としたのは、このまま弱腰姿勢を続ければ石破包囲網がますます広がることを恐れたからだろう。

続いて第二派閥・麻生派への対応もチグハグだった。麻生太郎氏を副総裁から外し、麻生氏の政敵である菅義偉前首相を副総裁にした人事に、麻生氏ははらわたが煮えくりかえる思いだったろう。本気で麻生派を干し上げるなら、麻生氏に10月解散総選挙で引退を迫り、麻生派を解散に追い込むべきだった。

ところが、石破氏は麻生氏を名誉職とはいえ最高顧問に起用し、麻生氏の体面を守った。さらには麻生派重鎮で麻生氏の義弟である鈴木俊一氏を総務会長に起用し、麻生派を含めた挙党体制を演出したのである。

これも安倍派と同じで、恨みを買う以上は徹底的に干し上げなければならないところ、麻生派に逆襲の拠点を与えてしまったのだ。

安倍派と麻生派をいっぺんに敵に回すのが難しいのなら、そもそも麻生氏を副総裁から外さず、菅氏とふたり副総裁体制にすればよかった。麻生氏を外すのなら、麻生派を徹底的に叩きのめす必要があった。まさにチグハグな対応だったのだ。

そして早期解散をめぐる迷走である。超短期決戦で解散総選挙を仕掛けるのなら、何よりも内閣支持率を高い水準でスタートさせる必要があった。安倍派の裏金議員たちを早々に非公認とし、世論の拍手喝采を得なければならなかったのだ。解散は急いでいるのに、公認問題はもたもた進めるという、これまたチグハグな対応だった。

党内基盤が弱く、石破氏の一存で政権運営を進められないことが大きな理由であろうが、それにくわえ、石破氏自身の決断力が弱いのも事実であろう。

これまで正論を吐き、説明責任の重要性を説き、「きれいな政治」を掲げてきた。それだけに、いざ権力者となった時に、「悪者になりたくない」けれども「権力を失いたくもない」というふたつの欲望の間で揺れ動いて何も決断できない状況に陥ったのではないだろうか。立憲民主党っぽいところが、石破氏には感じられる。

萩生田氏らの非公認も、主体的に決断したというよりも、世論の反発に追い詰められて決断したという側面が強い。

今後も世論や党内の動向に振り回されながらブレ続けていく恐れは十分にある。総選挙の最中に二転三転するようだと、石破自民党は想定外の大惨敗を喫する可能性もあながち否定できない。

総選挙の行方、そして選挙後の政局も不透明感を増してきた。

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