注目の新刊!
第一回は9/4(月)夜、東京・渋谷で開催! オンライン参加も!

トマホークなど「反撃能力」保有を掲げて「軍事費」倍増へ〜窮地の岸田首相、自民党右派と「和解」で政権延命に躍起〜立憲民主党も容認するの?

岸田文雄首相が防衛費を2027年度にGDP比2%に増額するよう関係閣僚に指示した。現在の5.4兆円(GDP比0.96%)から11兆円(GDP比2%)へ倍増させるという計画だ。

1976年の三木武夫内閣以来、歴代政権は防衛費を1%以内に抑えることを原則としてきた。ロシアのウクライナ侵攻を受けてNATO加盟国が国防費を2%に増額する動きが広がる中、自民党では安倍晋三元首相らを中心に2%への増額を唱える声が高まっていた。

岸田首相は内閣支持率が続落して自民党内で「岸田離れ」が加速し、閣僚辞任ドミノまで発生して窮地に追い込まれている。立憲民主党と連携して消費税増税をめざす方針を封印し、まずは防衛費の大幅増額を受け入れることで最大派閥・清和会(安倍派)を中心とした党内右派の支持を取り戻したいという狙いであろう。

外務事務次官や駐米大使を務めた元外務官僚が座長を務め、三井住友フィナンシャルグループ会長ら財界人に加え、読売新聞社や日経新聞顧問、朝日新聞元主筆ら各界の重鎮をそろえた有識者会議も防衛力強化を訴え、「国民全体の負担」で財源を確保することを主張する提言を岸田首相へ提出した。既得権を握る官界、財界、学界、マスコミ界の上級国民たちは国民に増税を課して防衛費を増額することに諸手を挙げて賛成なのだ。

この国はどこへ向かっているのだろう。

防衛力強化の柱となるのは、相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有である。ミサイルの長射程化や米国製巡航ミサイル「トマホーク」を導入するという。

日本国憲法のもとで戦後日本が掲げてきた「専守防衛」から大きく逸脱するのは間違いない。もはや「防衛費」という言い方は実態とかけ離れており、「軍事費」とはっきり言ったほうがよい。

自民党と連立を組む公明党は「反撃能力」保有を容認する方針で、もはや「平和の党」としての歯止めは期待できない。それどころか野党も追従する気配である。日本維新の会や国民民主党に続いて、野党第一党の立憲民主党も「反撃能力」の保有を容認する方向に傾いているのだ(日経新聞報道参照)。

れいわ新選組をのぞく野党はロシアのウクライナ侵攻で与党に同調し、ロシアを一方的に非難する決議に賛成したほか、ウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説をスタンディングオベーションで称賛した(共産党もその輪に加わったのは衝撃だった)。米国のバイデン政権が煽る「台湾危機」に同調する向きも強く、安全保障については大政翼賛体制の気配が強まっている。

野党やマスコミが今回の防衛費倍増に真正面から反対して断固阻止を強く打ち出していないのは、とても気がかりだ。

そのなかで断固反対を強く打ち出している数少ない政治家の一人が、小沢一郎氏である。

1990年代以降の政局を主導し、剛腕と恐れられた小沢氏もすでに80歳。現在の立憲民主党は野田佳彦最高顧問や岡田克也幹事長、安住淳国体委員長ら「反小沢派」が実権を握り、小沢氏の存在感は薄れている。

その小沢氏(事務所)が11月28日に投じた連続ツイートが迫力満点だったので紹介したい。

小沢氏は岸田首相の防衛費倍増計画について「防衛費というのは、これまでも、また、現在でも巨額の無駄を生んで来ている」「この計画によって、国民の巨額の税金が更に無駄になる可能性がある」と切り出したうえ、「以下、これまで政府がいかに無駄遣いをしてきたか、列挙してみたい」と連続ツイートを始めたのだ。

小沢氏が最初に挙げたのは、米国が開発したミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備の断念だ。

膨大な資金が投入されたが、そもそもミサイルを海上で迎撃するのは技術的に難しいと指摘されてきた。相手国のミサイル技術は日進月歩で進化する(発射地点が移動すること、海上から発射すること、そもそも発射地点を確認できない可能性もある)。それに常に対応する迎撃システムを最先端型に更新していくのはほぼ不可能であるのは素人目にもわかる。

しかもミサイルを100発同時に発射されてすべてを確実に撃ち落とすのは至難の業だ。核弾頭を搭載したミサイルが一発でも東京に落ちれば終わり。そもそもミサイル迎撃システムという「お花畑」を信じ、米国の軍需産業に躍らされて巨額の予算を投入したのは、あまりに愚かだった。

このイージス・アショア計画は地元住民の反発を招いたという理由で頓挫した。小沢氏は「ろくに検証がなされないまま中止」と酷評する。話はこれで終わらない。代案としてイージスシステム搭載艦2隻を配備する計画にかかるコストは1兆円にのぼるというのだ。

小沢氏が次に掲げるのは「導入経費が当初の510億円から629億円まで高騰した無人偵察機グローバルホーク」である。「そもそも海洋監視には向かず、撃墜の危険にもさらされやすいというのが常識」で「2020年春に導入中止を米側に伝達」したのだが、「安倍政権のトランプ大統領への配慮により一転して継続を決定」した。小沢氏は「結局、米国の言いなり」と切り捨てる。

さらに自衛隊が島々の防衛のために52両を360億円で購入した水陸両用車AAV7は、サンゴ礁や護岸工事された海岸への上陸が困難のうえ、海上時速は13キロにとどまり、「精密誘導弾やドローンなどの普及により強襲上陸は自殺行為になる」。つまり役に立たないというわけだ。

小沢氏の指摘はこのあとも続くので連続ツイートをご覧いただきたいが、結論としては「防衛費倍増がいかに愚かか、我々はしっかりと理解し、厳しく対峙すべき」ということである。

防衛費倍増に必要な年5兆円は、消費税2%分に相当する。これだけあれば国民に現金一律5万円を給付できる。空疎な軍事費倍増よりも物価高に苦しむ国民生活を直接支援するほうがよほど重要だ。立憲民主党をはじめ野党には徹底抗戦を望みたい。


鮫島タイムスYouTubeで日曜夜恒例となった「ダメダメTOP10」でもこの問題を取り上げました。ぜひご覧ください。

政治を読むの最新記事8件