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石破茂vs株式市場 総裁選勝利の日に株価暴落、金融所得課税の強化NO! 石破氏は早くもトーンダウン、総選挙のアキレス腱に 分配重視から投資重視へ変節した岸田首相と同じ道をたどるのか? 

石破新政権に株式市場がはやくも圧力をかけている。石破茂首相が自民総裁選に勝利した途端、株価が暴落して経済政策にノーを突きつけたのだ。

石破首相は動揺したのか、日銀の金利引き上げを容認してきた従来の姿勢を転換し、今は追加引き上げの環境にはないという立場に転じた。

石破首相は「予算委員会を開いてから国会を解散すべきだ」という総裁選での主張をはやくも翻し、首相就任前日に衆院を早期解散して10月27日投開票とすると表明、批判を浴びた。

株式市場にも屈して経済政策でも持論を曲げて迷走すれば、10月総選挙でその迷走ぶりをたたかれ、思わぬ失速を招く可能性がある。

石破氏が総裁選に勝利した9月30日、日経平均株価は2000円以上急落した。過去五番目の下げ幅だった。石破氏の経済政策への不安が高まったことが大きな要因だ。

石破氏は格差是正を掲げ、金融所得課税の強化を打ち出した。もともと財務省と同じ緊縮財政論者で、日銀と同じ金融引き締め論者でもある。「円高株安」路線とみられている。

これに対し、決選投票を争った高市早苗氏はアベノミクス継承を掲げ、財務省と対立する積極財政論者だ。日銀の金利引き上げも批判し、金融緩和の継続を強く主張している。「円安株高」路線の急先鋒だ。

証券会社や投資家は株高を何よりも望んでおり、高市氏支持が圧倒的だった。高市氏が麻生太郎氏の支持を得てトップで決選投票に進んで瞬間、株式市場の期待感は大いに高まったのだ。

ところが決選投票で石破氏が逆転勝利を収めると、期待は失望に一変した。この反動もあって株価は暴落。石破政権はいきなり株式市場の洗礼を受けたのである。

実は岸田文雄首相も就任当初はアベノミクスによる格差拡大の是正を目指し、富の再分配を重視する「新しい資本主義」を表明していた。その目玉公約として金融所得課税の強化を打ち上げていたのである。

これに株式市場は反発し、株価は下落。岸田首相はあわてて経済政策を修正し、分配よりも投資を重視し、NISAを拡充して一般大衆にも投資を奨励し、株価維持を最優先課題に切り替えたのだ。

これにより、大企業や投資家だけではなく、一般大衆も株式市場になだれ込んだ。それぞれの投資額は少額としても、一般大衆が株価に一喜一憂するようになり、株価の動向がこれまで以上に内閣支持率の上下に直結するようになったのである。岸田首相はますます株価を気にするようになり、投資重視の経済政策を進めた。

そもそも岸田首相は確固たる政治信条や政策理念を持ち合わせておらず、経済政策も場当たり的だった。防衛増税を表明したと思いきや、定額減税を打ち上げるというように、チグハグな経済政策が続いたのである。

これに比べ、石破氏は理念派で頑固とみられてきた。このため、経済政策も簡単には曲げず、「円高株安」路線を貫くと株式市場では警戒されていた。それが株価暴落を生んだのだろう。

ところが、石破氏が早期解散をめぐって早くも持論を撤回したことは、今後も「石破氏のブレ」が生じることをはやくも予感させた。経済政策も株価下落に屈して意外とはやく修正するのではないかという見方が出始めたのである。

実際、首相就任後は金融所得課税の強化は封印し、岸田政権の経済政策を継続すると強調している。やはり株価下落をうけて軌道修正したとみていい。そこへ金利の追加引き上げに慎重論へ転じたのだ。経済政策の基軸が大きく揺らいでいるのは間違いない。

今後、国会での党首討論や総選挙のテレビ討論で、野党からはこの「変節」を追及され、発言が二転三転するようなことがあれば、逆風が吹き付ける恐れがある。

かつて橋本龍太郎首相が1998年参院選最中に恒久減税をめぐって発言が揺れ動き、自民党が壊滅的敗北を喫して退陣に追い込まれたことがあった。今回の総裁選でも小泉進次郎氏が解雇規制の見直しを掲げながらも批判を浴びてトーンダウンし、早々に失速した。

経済政策をめぐる発言のブレは大打撃となる恐れがある。株式市場に先制パンチを食らった石破氏にとっても総選挙のアキレス腱となりそうだ。

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