今年夏の東京都知事選で大躍進した石丸伸二氏が来年夏の都議選に向けて地域政党を旗揚げする意向を表明した。2028年の都知事選再出馬への布石であると同時に、来年夏の参院選で他党と連携も視野に入れた発言とみられる。
石丸氏が組むのは、総選挙で躍進したものの玉木雄一郎代表の不倫問題で揺れる国民民主党か。それとも総選挙で惨敗したものの吉村洋文・大阪府知事が新代表に就任することが予想される日本維新の会か。自民党でも立憲民主党でもない第三極の連携の動きに注目だ。
石丸氏は自らのユーチューブ番組で今後の活動について「舞台は東京、時は来年7月」と切り出し、「東京都議会選挙に向けて、地域政党を作ろうと思います」と表明した。「都議になろうという方、興味関心のある方は準備を始めておいてください」とも呼びかけた。
地域政党を旗揚げして来年夏の都議選に候補者を擁立して一定の勢力を築き、次の都知事選へ弾みをつける狙いは明らかだ。都議選とほぼ同時期にある参院選で国民民主党や維新と連携し、影響力拡大を狙う思惑もあるだろう。
今年夏の都知事選で勝利した小池百合子知事は石丸新党の動きについて「詳細に存じておりません」と述べるにとどめ、不快感を示した。石丸新党の参戦でもっともダメージを受けるのは、小池知事が事実上率いる都民ファーストだろう。近年はただでさえ失速しており、都議選で大幅に議席を減らす可能性がある。
石丸新党が都議選で躍進し、都民ファーストが惨敗すれば、小池知事の次の都知事選勝利は黄信号だ。出馬断念に追い込まれる可能性もある。
総選挙で躍進した国民民主党の玉木代表は、石丸氏とユーチューブ番組で共演するなど、良好な関係を築いてきた。玉木代表が東京駅前で行なった総選挙の最終演説に石丸氏は飛び入り参加している。
玉木代表は石丸新党について「かなり旋風を巻き起こす可能性は十分ある」と言及した。
しかし、東京都政では小池知事と連携してきた。国民民主党を支持する連合は、とりわけ小池知事とは密接な関係だ。
玉木代表個人としては石丸氏との連携を視野に入れたいが、小池知事や連合の手前、石丸新党に乗るわけにはいかない。石丸氏を取るか、小池知事を取るか、悩ましい立場だ。
これに対し、石丸氏との連携に前のめりなのが、同じ地域政党である大阪維新の会である。
維新の横山大阪市長は石丸新党について「めちゃくちゃいい どんどん活動していただきたい」と歓迎した。さらに兵庫県知事選に勝利した斎藤元彦氏にも「新党をつくられたらいい」とエールを送り、地域政党連合の結成に意欲をにじませた。
日本維新の会は総選挙で惨敗し、馬場伸幸代表は退くことに。12月1日の代表選で吉村洋文・大阪府知事が新代表に就任するとみられている。
新体制発足を機に、来年夏の参院選での党再建へ向け、自公与党とも立憲民主党とも距離を置き、第三極として再スタートする可能性が高い。
同じ地域政党として「東京は石丸新党、大阪は維新」というかたちで連携すれば、世論の支持を取り戻せるのではないかという打算ものぞく。
維新創始者の橋下徹氏は馬場代表の自公接近路線を厳しく批判する一方、石丸氏にはエールを送ってきた。石丸新党について「吉村知事と新しい日本の政治に挑戦してほしい」とし、維新との連携に期待感を示している。
自公与党は総選挙で惨敗し、過半数を割った。立憲民主党は議席を増やしたものの、惨敗した前回総選挙から得票を増やしていない。二大政党はどちらも国民の信を得ていない。来夏の参院選へ向け、第三極への期待はますます高まるだろう。石丸新党が国民民主党や日本維新の会とどんな形で連携していくのか、要注目だ。