小泉進次郎は誰と組むか。政局の関心は、自民党総裁選後の連立拡大へ移りつつある。
公明党との連立は前提として、次なる相手は維新か、立憲か、国民か。最有力とされるのが維新とのタッグである。
だが進次郎本人は「野党のみなさんと幅広く協議する」「期限は区切らない」と慎重姿勢を崩さない。その裏には、維新一本に絞れば条件を吊り上げられ、政権を振り回されかねないという警戒心が潜んでいる。
「維新が一番手っ取り早い」
現在の自公与党は衆参両院で過半数割れ。野党が一枚岩でないため政権は維持されているが、予算も法案も野党の協力なくしては成立しない。石破政権では森山幹事長の野党人脈で何とか切り抜けてきたが、妥協の連続で政策は中途半端にならざるを得なかった。
その反省から総裁選では「連立拡大」が争点となった。立憲との大連立は、参院選の「負け組同士」の連合となり、世論の支持は得られそうにない。与党の8割の議席を占める巨大与党が誕生することへの反発もあり、二の足を踏む。国民民主との連立は世論受けはいいが、減税要求に財務省が猛反発する。
結果、残る選択肢は維新。しかも安上がりで済むというのだ。
大阪副首都構想の裏側
維新が求めるのは「大阪副首都構想」。表向きは首都機能分散だが、実態は大阪経済のてこ入れである。大阪万博終了後の「次の一手」として巨額の公共事業を引き出す狙いだ。
それでも財務省にとっては減税よりはまし。税率を下げると恒久負担になるが、公共事業は一度きりで済む。維新の「身を切る改革」路線は財政規律派の財務省とも方向性は重なる。
加えて維新は大阪以外で勢いを失い、地域政党化が進む。自民党にとっても、大阪を譲れば全国区で競合する必要がなくなる。双方にとって合理的な取引が成立するのだ。
公明党との軋轢
ただし、ここに立ちはだかるのが公明党である。かつて大阪で維新と選挙協力をしていたが、バーターを解消して以来、関係は悪化。維新との連立を警戒し、国民民主党との連携を深めてきた。
しかし、創価学会の高齢化が進んで集票力は低下し、自民党内には「公明との選挙協力はもはや不要」との声すら出ている。自公連立内での公明の影響力は低下し、「公明が嫌がるから維新とは組めない」という力学は働きにくい。
むしろ問題は維新の「暴走リスク」である。副首都構想にとどまらず、次々に要求を突きつけ、「言うことを聞かなければ連立離脱するぞ」と迫られるのではないか。
かつての自由党・小沢一郎のように、政権を内部から揺さぶる存在になる恐れがある。自民党も財務省もその苦い記憶を忘れていない。
「維新以外もあるぞ」という牽制
このリスクに対し、森山幹事長はすでに布石を打っている。自公立3党で立憲が主張する「給付つき税額控除」を協議する枠組みを立ち上げたのだ。
維新に「無理難題を言えば立憲に差し替えるぞ」と示す狙いである。立憲の野田代表も、森山とのパイプを意識して安住幹事長を起用し、自民との連立予備軍として控える構えを見せている。
結果として、維新は「第一候補」ではあるが、常に「他党に差し替え可能」という緊張感を突き付けられる。これが「維新・飼い慣らし作戦」の核心だ。
連立はいつ決まるのか
進次郎は本音では維新との連立を決めているが、スケジュールは柔軟だ。最短なら総裁選直後の10月中下旬に合意し、臨時国会で首相指名を受けて発足。ただし維新が強硬姿勢を取れば、ひとまず自公でスタートし、補正予算をめぐる交渉を通じて年末年始に合意する「二段階シナリオ」も描いている。
こうした精緻な国会戦術は進次郎一人では無理だ。背後には森山幹事長と財務省の存在が透けて見える。石破政権に続き、進次郎政権でも「影の総理」は財務省である。
置いてけぼりの国民民主
一方、国民民主は苦しい。財務省主導の流れでは減税要求が通る余地は小さい。政権与党からも野党からも距離を置かれ、存在感を失えば、野党の主役の座を参政党に奪われかねない。
結び
進次郎政権は、自公維の新時代を現実のものにしつつある。ただし、それは「維新をどう飼い慣らすか」という微妙なバランスの上に成り立つ。副首都構想に象徴される巨大利権をめぐり、財務省、森山幹事長、維新、公明、立憲…さまざまな思惑が交錯する。
維新は“使える相手”か、それとも“暴走リスク”か。連立の行方は、日本政治の安定と停滞を大きく左右することになるだろう。