政治を斬る!

自民圧勝、立憲惨敗の衆院選は「二大政党政治の終わり」のはじまりだった〜11.28JCJオンライン講演会で今後の政治を読み解きます!

菅政権の退陣表明から自民党総裁選、岸田政権発足、そして衆院選での自民党圧勝と立憲民主党惨敗。9〜10月の政治の展開は速かった。SAMEJIMA TIMESはこの動きを逐次追い、先行きを展望してきたつもりである。

しかし、政治の流れがあまりに急速だったため、いったい何が起きて、今後どうなっていくのか、俯瞰的に総括するタイミングがなかった。来年夏の参院選に向けて政治の行方をじっくり展望する機会があればと思っていたところ、日本ジャーナリスト会議(JCJ)にオンライン講演会の機会をいただいた。

11月28日(日)14時から16時までのJCJ オンライン講演会「政治を読み解く〜与野党激突の総選挙後の行方」である。参加費500円。申し込みはネットで(こちらをクリック)

時間をかけてたっぷりお話ししたいと思っている。ご関心のある方はぜひ視聴してほしい。

今日はこの講演のレジュメのつもりで、簡潔に論点を書き記したい。

憲政史上最長の安倍政権とそれに続く菅政権を倒したのは、間違いなくコロナ危機だった。「モリカケサクラ」に象徴される権力私物化とそれら疑惑の隠蔽工作が次々に発覚しても倒れなかった政権は、すべての人々の命に直結するコロナ危機が襲来し、それにまったく対応できない行政崩壊の現実が露呈したことで、瞬く間に倒れたのである。

自分たちの暮らしに直接かかわらない疑惑の数々に鈍感な世論も、自分たちの命に直結する危機に直面した途端に一気に沸騰するーーそんな民主主義の現実を私たちは目の当たりにしたのだった。

これはこの国の民主主義の未成熟さを映し出すものかもしれないし、あるいは、民主主義とは本来そういうものかもしれない。ひとつ言えることは、このような脆弱な政治や行政が続けば、コロナ危機が去ったとしても、この国は来るべき人口減社会を乗り越えることはできないという現実である。コロナ危機が私たちにその現実を知らしめたことは間違いない。

ところが、自公政権はこのような深刻な「政治の危機」を、首相の首をすげかえるというその場しのぎの対策で切り抜けた。菅義偉首相にコロナ対策の失態をすべて負わせ、岸田文雄首相に差し替えることで、4年ぶりの政権選択の機会である衆院選をいとも簡単に切り抜けてしまったのである。

コロナ危機が一時的に収束したことで世論の怒りは鎮静化し、自民党の「小手先改革」を容認したといえるかもしれない。

見逃してはいけないのは、衆院選の投票率は戦後三番目に低い55.93%にとどまったことである。自民党は選挙には圧勝したが、世論に圧倒的に支持されたわけではない。低投票率のなかで組織票を固めて逃げ切ったのだ。政治を根本的に改める政権交代の機運はまったく高まらなかった。

自公政権の腐敗を許し、政治に閉塞感を漂わせている最大の原因は、「政権交代の受け皿」となって世論の期待を集めるべき野党にその力が欠如していることにある。

なぜ野党は「政権交代の受け皿」になれないのか。日本の政治が長いトンネルから抜け出すには、この命題を解決しなければならない。

戦後日本は万年与党の自民党と万年野党の社会党による自社体制のもとで政治は安定し、経済発展に傾注してきた。米ソ冷戦とバブル経済が崩壊した1990年代に入り、自社体制は崩壊。政権交代可能な二大政党政治をめざして小選挙区制度が導入された。紆余曲折を経て、自民党vs民主党の二大政党政治が定着し、2009年衆院選ではついに政権交代が実現して民主党政権が誕生したのである。

一連の改革は米国の共和党vs民主党、英国の保守党vs労働党の二大政党政治にならったものだった。その本質は、政権交代可能な二大政党が競いあうことで、政治の緊張感を維持して腐敗を防ぐことにある。政権与党が失敗したら、野党が世論の支持を集めて政権を奪い、政治を浄化する。ここにこそ、二大政党政治の意義がある。

日本でも2009年の政権交代が実現する前、自公政権は不祥事が相次ぎ、一年ごとに首相が目まぐるしく交代する事態に追い込まれていた。「自民党の失敗」が「民主党への期待」を生み、民主党政権を誕生させたのだ。その意味で二大政党政治は機能していたといえるだろう。

ところが、世論の圧倒的な期待を背負って誕生した民主党政権は大迷走した。マニフェストに掲げていなかった消費税増税を打ち上げて2010年参院選に惨敗したあげく、党内権力闘争が勃発し、自滅したのである。

2012年に政権復帰した安倍自民党は、数々の権力私物化疑惑を重ねながらも、「民主党政権の悪夢」を強調するだけで6回の衆参選挙に圧勝し、憲政史上最長の政権となった。

ここで注目すべきは、政権交代を実現させた2009年衆院選の投票率が69%だったのに対し、それ以降の衆参選挙いずれも50%台に低迷したことである。多くの有権者が「民主党政権の失敗」で政治をあきらめ、投票所から離れていったことが、自公政権を継続させる最大の要因となったのだ。

その構図は今回の衆院選でも繰り返された。政権与党が権力私物化の疑惑に加え、コロナ危機で政権担当能力に重大な疑念が生じたにもかかわらず、野党があまりに不甲斐ないゆえに、政権に居座り続けている。

この現実は、二大政党政治が機能不全に陥ったことを如実に映し出している。政権交代のリアリズムを欠いた「万年与党の自民と万年野党の立憲民主」という見せかけの二大政党政治は、自民党の派閥同士が牽制しあったかつての自社体制よりも「権力集中」が進んで「政治腐敗」を招くという意味で、より悪い政治状況を生んでいるといえるのではないか。

今回の衆院選で野党が採用した唯一の戦略は「小選挙区における野党候補の一本化」だった。「与党vs野党」の一騎打ちの構図を作り出し、「二者択一の消去法」の選択を有権者に迫り、「与党がダメなら野党へ」と呼びかけることで政権交代を実現させる「二大政党政治のオーソドックスな戦略」といっていい。

それはそれなりに機能し、接戦の選挙区をたくさんつくった。一方で、それだけでは政権交代の機運は高まらず、投票率は伸びなかった。「二者択一の消去法」を迫られた有権者の多くは「与党も野党もダメ」「投票先が見当たらない」とあきらめ、政治から目をそむけ、投票所へ足を運ばなかったのである。

野党第一党の立憲民主党が魅力的で政権交代の受け皿となっていれば、民主党政権の悪夢がなければ、結果は違っていたーーそういう指摘もあろう。たしかにそうかもしれない。

しかし、私は見解を異にしている。そもそも「二者択一の消去法」の選択を有権者に迫る二大政党政治のあり方が、デジタル化で価値観が多様化する現代社会の感覚にマッチしていないのではないか。

欧米でも二大政党政治は崩れ始めている。ドイツをはじめ欧州では緑の党などの第三極が台頭し、多党による連立政治が常態化している。英国でも地域政党を含め第三極の政党を無視できなくなってきた。米国は二大政党政治を維持しているものの、極右のトランプが共和党をのっとり、社会民主主義者を標榜するサンダースが民主党内で影響力を増すなど、中間層を奪い合う二大政党政治の姿は大きく変貌しつつある。いずれも、価値観の多様化が進むデジタル時代が有権者の政治意識を大きく変えつつある結果といえるのではないか。

二大政党政治はそもそも、過半数の支持を得るために双方が似通ってくるという宿命を持っている。英米では二大政党がともに経済界にすり寄り、労働者や弱者の声を代弁する政治勢力が消失した結果、二大政党離れが加速し、極右勢力を含む第三極の台頭を招いた。二大政党政治は多様な民意をすくい取れなくなっているのだ。

日本も同じ道をたどりつつある。今回の衆院選で第三極を掲げた日本維新の会が躍進し、国民民主党が健闘し、れいわ新選組が衆院進出に成功したのは、二大政党政治の行き詰まりを端的に示しているといえるだろう。

立憲民主党の惨敗を受けて枝野幸男代表は辞任を表明し、新しいリーダーを選ぶ代表選が行われている。しかし、いまのところ出馬した4氏は二大政党政治を信奉している様子であり、その限界を指摘する議論は提起されていない。これでは誰が勝っても立憲民主党の低迷ーーそれは二大政党政治の低迷でもあるーーの流れは変わらない。

来年夏の参院選でも第三極を掲げる維新や、第三極志向を強めるれいわの躍進は続くだろう。日本政界の二大政党政治の崩壊は加速し、多党による政党間協議や連立協議、選挙協力などを通じて政策が決定されていく本格的な「多党制時代」に突入すると私はみている。立憲民主党はそのような政治の流れを直視したうえで政権交代への戦略を練り直す必要があるだろう。

JCJ オンライン講演会「政治を読み解く〜与野党激突の総選挙後の行方」ではこのような問題意識に立って、今後の政治の行方をさらに深掘りしたい。

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