自民、公明、維新3党が抜け穴だらけの政治資金規正法改正案に賛成し、衆院を通過させた。岸田文雄首相は今国会での衆院解散を見送り、会期末の6月23日に国会を閉じる方針だ。自民党の裏金事件を受けて「政治とカネ」が最大の焦点となっていた今国会は、逆風の自公政権に落ち目の維新が歩み寄る新たな政局構造を作り出して閉幕する。
政治資金規正法の焦点は、立憲民主党が主張する三本柱①政策活動費の廃止②政治資金パーティーの廃止③企業団体献金の廃止ーーにどこまで近づくかだった。
自公維の賛成で可決された改正案は、政策活動費を存続させる一方、維新の主張を踏まえてを「10年後に公開する」とした。
しかし、政治資金規正法の時効は5年であり、10年後に公開されて不正が見つかっても刑事責任を問われることはない。しかも「公開ルール」は「法案成立後に検討」とされ、実際にどこまで公開されるかはあいまいとなった。10年後に公開されたら肝心の部分はすべて「黒塗り」という可能性もある。
政治資金パーティーも存続させる一方、公明案を受け入れ、20万円超の購入者を公開する基準を5万円超へ引き下げた。透明性は一定程度増す。
しかし、パーティー券購入についてはこれまでも企業が役員らに分散購入させ、ひとりあたりの購入額を20万円以下に抑えて公開を免れるという手法がとられてきた。5万円超になってもさらに購入者を分散させて公開を免れる手法が横行しそうだ。
さらに企業団体献金についてはまったく触れられていない。
世論の強烈な批判を浴びた裏金事件を受け、政治の信頼を回復させるための法改正にはほど遠い結果に終わったというほかない。
むしろ今回の法改正には、維新が自公与党に接近するという政局的色合いが強く出た。自民党からみれば、野党分断に成功したといっていい。
維新の藤田文武幹事長は「抜け穴はすべて防げた」という一方、立憲の安住淳国対委員長は「まったく納得できるものではない」「自民党に助け舟。維新らしい」と批判し、双方の亀裂は広がった。
維新は立憲から野党第一党を奪う目標を掲げてきたが、大阪万博の公金投入で失速し、次の総選挙で立憲を上回る可能性はほぼ消滅している。そこで自公与党に接近することで存在感を示す姿勢に転じたといってよい。
馬場伸幸代表は総選挙で自公与党が過半数割れした場合の対応について、①連立入り②閣外協力③是々非々の対応ーーのいずれの可能性も否定していない。維新は徐々に自公に接近し、今回の政治資金規正法改正にならって、今後の法案は自公維3党の協議で決定されていく場面が増えるだろう。どこまで連帯を強めるかは別として、自公維3党体制の色彩を強めていくことになる。
次の総選挙も「自公維vs立共国れ」の構図が強まってくる。維新は自民に遠慮して候補者擁立を見送る選挙区が増えてくるのではないか。
一方、野党陣営は「3つの爆弾」を抱えている。
立憲や国民に影響力を持つ連合は共産批判を強めており、共産との共闘が大きなポイントだ。
次にれいわ新選組は選挙区調整には応じているものの、消費税をはじめ経済政策をめぐって立憲との隔たりは大きく、共闘にはほど遠い。
そして立憲党内には泉健太代表の「党首力」への疑問もくすぶる。9月の代表選で野田佳彦元首相の再登板を期待する声も出ており、党内闘争に発展する可能性も否定できない。
与野党双方とも国会閉幕後、総選挙にむけた体制の見直しを迫られることになる。