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自民党が政治資金規正法の抜本改正(政策活動費、政治資金パーティー、企業献金の3つの廃止)を絶対に認められない本当のワケ〜岸田首相が国会で詭弁を繰り返す裏事情

自民党の政治資金規正法改正案に公明党は乗らず、維新も批判的で、自民党は孤立感を深めている。岸田文雄首相の国会答弁からも裏金事件への反省はみじんも感じられない。

改正案のポイントは3つ。詳しく見ていこう。

①政策活動費

政治資金規正法は政治家個人が献金を受け取ることを禁じている。唯一の例外として、政党から受け取ることは容認している。いわば政党を全面的に信用した制度設計になっているのだ。

政党が政党幹部に渡すお金が政策活動費である。自民党の場合、幹事長に年間10億円程度を渡している。このお金は領収書不要で使うことができる。使途はまったく公開されず、「合法的に認められた裏金」なのだ。

自民党改正案は、政党から50万円超の政策活動費を受け取った議員が「組織活動費」「選挙関係費」といった使途の項目を党に報告し、党の収支報告書に項目別の金額を記載するとしている。「項目だけ」の「限定公開」といえる。

これでは政策活動費が何に使われたのか、私的流用されていないのか、外部からは確かめようがない。「名ばかり公開」というほかない。

野党は「廃止」や「全面公開」を主張している。領収書添付を含めた全面公開が不可欠だ。

これに対し、岸田首相は「(領収書を公開すると)個人のプライバシーや営業の秘密、政党の活動が明らかになってしまう」と反対している。

これはおかしい。そもそも90年代の政治改革の基本的な考え方は①企業献金を大幅に制限する代わりに、税金を使った政党助成制度を創設する②税金を投入する以上は使途を透明化するーーことだった。プライバシーや営業の秘密を守る必要があるのなら、政治献金を渡したり受け取ったりしなければいいだけのことだ。

オープンにできない「うしろめたいお金」を政界から一掃することが政治腐敗撲滅の近道である。

②政治資金パーティー

政治資金パーティーも企業献金を大幅に制限するかわりに導入された制度だ。

政治資金パーティーを開催して参加者にパーティー券(大概は一枚2万円)を購入してもらい、パーティーの飲食や会場費などの経費(大概は一枚あたり数千円)を差し引いた利益(大概は一枚あたり1万数千円)が「事実上の献金」として政治家側の懐に入るという仕組みだ。

政治家個人は献金を受けることが禁じられているが、パーティー券は販売してもいい。さらに5万円超の献金は名前が公開されるが、パーティー券は20万円超でなければ公開されない。名前を出したくない人は献金ではなくパーティー券を購入するのが通例だ。

ひとことでいうと、献金規制の抜け道として用意されているのが政治資金パーティーなのである。

公明党は公開基準を一般の献金と同じ「5万円超」に引き下げるように主張したが、自民党は受け入れなかった。一般の献金と同じにしたらわざわざパーティー券を購入してくれる人がいなくなるからだ。

しかし問題の本質は公開基準ではなく、「献金の抜け道としての政治資金パーティー」というイカサマ制度そのものにある。このような制度は廃止し、個人献金一本に絞るのが筋であろう。

岸田首相は「対価があるパーティーと寄付は性格が違う」と答弁している。これは歪んだ現行制度を踏襲しただけの方便であり、裏金事件で膨らんだ政治不信を解消することにはならない。

③企業団体献金の廃止

政治とカネの問題の本丸はやはり「企業献金」だ。

そもそも自民党政治の本質は、企業に税金を使って補助金を配ったり公共事業を発注したりする見返りに、政治献金や天下りポストを得る「政官業の癒着」にある。ここに政府腐敗の温床がある。

企業団体献金を廃止し、個人献金に限定すれば、政治はかなり浄化されるだろう。

変革は政治モラルの問題だけにとどまらない。ゼネコンや農協をはじめ各省庁から各業界に巨額の補助金を流し込む経済財政政策から、国民ひとりひとりを直接補助する経済財政政策へ、大転換が進むに違いない。

岸田首相は「企業団体献金を全面的に禁止する理由はない」と答弁している。全面禁止すれば、自民党の権力基盤そのものが崩壊するだけに絶対に認められないのだ。

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