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日銀利上げで株価暴落!NISA拡充で国民に投資を促してきた岸田首相は大打撃!自民党総裁選で有利になるのは誰だ?金融政策が新たな争点に浮上

日経平均株価の暴落に揺れた一週間だった。引き金をひいたのは、円安是正を狙った日銀の金利引き上げだ。NISAを拡充して投資を呼びかけてきた岸田政権には大打撃。一方、ポスト岸田候補の多くも金利引き上げには理解を示してきた。

株価暴落を招いた金融引き締めが9月の自民党総裁選の争点に浮上すれば、総裁レースの番狂せが起きる可能性もある。

安倍政権が推進したアベノミクスは、ゼロ金利と金融緩和によって円安株高へ誘導することが目的だった。円安で海外マネーを呼び込んで株価を引き上げ、投資家や大企業を儲けさせることを狙ったのだ。

一方、円安はエネルギーや食料の輸入コストを引き上げ、急激な物価高をもたらし、庶民の暮らしを圧迫した。物価高に賃上げが追いつかず、国民の生活水準は大きく下がったのである。

円安株高(物価高)を生んだアベノミクスは、貧富の格差を拡大させたといっていい。

岸田文雄首相は就任当初、アベノミクスの負の遺産である格差の是正を目指して富の再分配を重視する姿勢を示し、これを「新しい資本主義」と読んだ。ところが、次第に分配よりも投資による株価引き上げを重視するようになり、NISAを拡充して国民に広く投資を呼びかけた。

新たに投資を始める人が増えるほど、株価が落ちれば支持率が下がる。岸田首相は株価引き上げ政策に追われるようになり、投資推進の姿勢を強めていったのだ。

一方、日銀はアベノミクスを進めた黒田総裁の路線を軌道修正して金融政策を正常化させる(金利を引き上げる)タイミングを狙っていた。利上げは経済を冷やすため、政界には反対論が強い。とくに内閣支持率を気にする岸田官邸にとっては迷惑な話だった。

学者出身の植田総裁は、財務省や日銀にシンパは少なく、自らの起用した岸田首相が後ろ盾だ。政権に逆風になる利上げには慎重な姿勢をみせ、日銀プロパーとの温度差が出ていた。

岸田首相が6月解散に踏み切れず、内閣支持率も低迷し、首相退陣論が自民党内から公然と噴き出して9月の総裁再選に黄信号がともると、日銀内部で利上げを目指す動きが強まってきた。岸田首相と密接なバイデン大統領が米大統領選から撤退し、いよいよ再選困難との見方が強まった時点で、今回の利上げに踏み切った格好である。まさに総裁選前の政治空白の間隙を突いて利上げを断行したといっていい。

本来なら9月の総裁選で日銀の金融政策に否定的な有力候補がいれば、株価暴落を契機に、一気に支持を拡大させる可能性があった。

ところが、茂木敏充幹事長は「金融政策の正常化は望ましい方向だ」と日銀を評価し、石破茂元幹事長も「(ゼロ金利は)異常でやめたほうがいい」との考えを示してきた。

河野太郎デジタル担当相は海外メディアのインタビューで「日銀は政策金利を上げる必要がある」「円は安すぎた。価値を戻す必要がある」と強調。いずれも株価暴落を批判して総裁選の主導権をつかむことは難しそうだ。

アベノミクスを主導した安倍元首相に前回の総裁選で担がれ、安倍支持層に絶大な人気がある高市早苗経済安保担当相は、利上げが引き金となった株価暴落を批判しやすい立場にある。さらに大穴候補として存在感を増しつつある小泉進次郎元環境相も出馬するとなれば株価暴落を批判し、流れをつかむことも可能だろう。

今後の株価の動向は予断を許さながい、株価対策や金融対策が大きな争点になれば、総裁選は番狂せの様相も帯びてくる。

安倍政権から岸田政権にかけて国主導で「投資」が奨励され、多くの国民にとって株価が自分事となった今、株価の行方が総裁レースを大きく左右するという展開も十分にあり得る。

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