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岸田首相が臨時国会への補正予算案提出を明言し、10月解散説を打ち消し〜解散権封印のまま来秋の総裁再選を狙う可能性が強まる

岸田文雄首相が10月20日召集の臨時国会に補正予算案を提出すると明言したことで、永田町にくすぶっていた10月解散説は鎮静化しそうだ。

これまで物価高を受けた経済対策を10月中にまとめると表明する一方、補正予算案の提出時期を明言してこなかったため、「経済対策を公約に掲げ、臨時国会の冒頭に衆院解散に踏み切るつもりではないか」との憶測をよんでいた。

岸田首相は9月29日、与党幹部に10月20日に臨時国会を召集する方針を伝達。それにあわせて「臨時国会に補正予算案を提出する」と表明し、自ら冒頭解散説を打ち消した。

補正予算の編成には通常3〜4週間程度かかるとされ、国会への提出時期は11月になるとみられる。提出した以上は成立させるのが鉄則だ。衆参両院での審議時間に1週間は要することから、成立は11月下旬から12月上旬になる見通しだ。

岸田首相は9月13日に内閣改造・党役員人事を断行したが、当初画策していた茂木敏充幹事長の交代を麻生太郎副総裁に反対されて断念した結果、刷新感のない人事に終わり、内閣支持率は回復せず、自民党内にも人事への不満が渦巻いた。

岸田首相が補正予算案の提出時期を明言せず、自ら解散風を煽ったのは、人事に対する自民党内の不満が広がることを防ぐ狙いがあったのだろう。

一方で、6月にも自ら解散風を煽りながら結局は解散を見送り、解散権を弄んだと批判された経緯がある。これ以上解散風が強まって、引くに引けなくなる展開は避ける必要があった。国会召集日を10月20日に決めた時点で、補正予算案の臨時国会提出を明言し、解散風を鎮静化させたということだ。

ひとたび臨時国会の審議を始めれば、新閣僚らが政治資金問題などで追及を浴びて内閣支持率が下落する恐れがあるため、国会冒頭よりも解散のタイミングを見つけるのは難しくなる。臨時国会が終われば、年末には新年度予算編成が待ち受けており、年内解散の可能性はかなり低くなったとみていい。

来秋の自民党総裁選前の解散・総選挙に打って出るには、①年明け召集の通常国会冒頭、②来春の当初予算案成立後、③来夏の通常国会会期末ーーの3つのタイミングに絞られてくるが、今秋の臨時国会冒頭解散より内閣支持率や経済動向などの状況が良くなる保証はない。

私はかねてから、岸田首相は来秋の総裁選前に解散・総選挙を断行するつもりはさらさらなく、内閣改造・党役員人事でライバルたちを蹴落とす(あるいは均衡を保つ)ことによって「ポスト岸田」不在の政治状況を作り出し、総裁再選を狙うと予測してきたが、今回の「10月解散見送り」でその可能性はさらに高まったのではないだろうか。

このあたりは、9月13日の内閣改造・党役員人事の直後にYouTubeでライブ配信した解説動画で詳しく解説しているので、ぜひご覧いただきたい。

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