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軽量級外相・上川陽子氏が「女性初の首相」に急浮上の背景は?持ち上げているのは麻生太郎副総裁、その狙いは林芳正官房長官への牽制か

自民党岸田派(宏池会)に所属する上川陽子外相(70)が「女性初の首相」候補として急浮上しているとの報道が相次いでいる。自民党が派閥の裏金事件で大打撃を受けるなか、ポスト岸田に女性首相を掲げて世論の批判をかわす狙いがあると言われている。マスコミ各社が世論調査で「次の首相」を尋ねる際も候補者の一人として上川氏の名が挙げられるようになった。

ほとんど知名度のなかった上川氏が首相候補に急浮上するのは唐突感が否めない。にわかに浮上した「上川政権構想」の背景を読み解いてみよう。

私は2003年に朝日新聞の政治部記者としてはじめて宏池会を担当した時、上川氏は当選1回の新人議員だった。東大・ハーバード大の煌びやかな学歴を持ち、着実に仕事をこなす生真面目さが伝わってくる一方、政治家を束ねる指導力や機転の効く政治センスは感じられず、存在感は薄かった。それ以降の歩みをみても、時々の権力者(上司)の意向に忠実に従うタイプという印象で、総理候補と呼ばれる政治家になるとは思わなかった。

一時は菅義偉前首相に重用され、法務大臣を3度も歴任した。この時の「実績」として記憶に残るのは、オウム真理教の麻原彰晃死刑囚らの死刑を執行したくらいである。

その上川氏が突然脚光を浴びたのは、昨年9月の内閣改造で、いきなり外相に抜擢されたからだ。英語は堪能とはいえ、これまでの政治経歴で「外交」を売りにしている印象はなかったので、永田町でも意外感をもって受け止められた。

前任の外相は岸田派ナンバー2の林芳正氏だった。林氏は英語が堪能で、米中に幅広い人脈を持ち、ポスト岸田の候補としての足場を着実に固めていた。岸田首相は林氏を警戒して外相から外し、代わりに軽量級の上川氏を起用して自らが「外交を独占」しようとしたのである。

岸田首相にとっって上川氏は陰が薄く、政治力が乏しいからこそ、林氏の後継外相に起用する意味があったといっていい。

その上川氏を「ポスト岸田」として吹聴しているのは、岸田政権の後見人でキングメーカーとして君臨している麻生太郎副総裁である。麻生氏はなぜ、軽量級の上川氏の持ち上げるのか。そこには林氏への牽制の意味合いがある。

岸田内閣の支持率が続落し、麻生氏は3月の予算成立を花道に岸田首相を退陣させ、茂木敏充幹事長を後継首相に担ぐ腹づもりだ。そこで警戒しているのは、林氏である。

林氏は麻生氏の長年の政敵である古賀誠元幹事長(岸田首相の前の宏池会会長)に近く、宏池会では岸田首相以上に将来の首相候補と目されてきたポープだった。林氏がポスト岸田に浮上することを、麻生氏はいちばん警戒している。そこで、岸田派の上川氏をポスト岸田としてフォーカスすることで、岸田派内で岸田首相に代わって林氏の求心力が高まることを妨げ、林待望論が広がるのを防ぎたいというわけだ。

麻生氏の本命は茂木氏であり、上川氏は当て馬に過ぎない。麻生氏は最大派閥・安倍派や非主流派の二階派が裏金事件で壊滅的打撃を受けるなか、麻生・茂木・岸田の主流3派体制は維持しつつも、林氏が台頭することは避けたい。そこで代わりに上川氏を引き上げることに最大の主眼があるといえるだろう。

マスコミは麻生氏の吹聴に乗って上川氏にフォーカスする記事が増えているが、林氏と麻生氏の確執を知る岸田派内では麻生氏の手のひらで踊る上川氏に冷ややかな視線も注がれている。

それでも上川氏はにわかにスポットライトを浴びたことにまんざらでもなさそうだ。

1月5日には欧米8カ国(ポーランド、フィンランド、スウェーデン、オランダ、米国、カナダ、ドイツ、トルコ)訪問に出発。18日までの長期外遊である。

岸田首相が上川氏を外相に起用したのは、軽量級の外相とすることで自らの「首脳外交」に注目を集める狙いがあった。上川氏の存在感が増すことはうれしいことではない。上川氏への対処でも「麻生・茂木vs岸田・林」の主導権争いの構図が生まれてくるかもしれない。

 

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