政治を斬る!

懇談会のマイク切りで水俣病患者たちを傷つけた環境大臣を更迭できない岸田首相の事情〜伊藤大臣は麻生派所属!6月解散困難でキングメーカーの麻生氏の意向に逆らえない

水俣病患者が伊藤信太郎環境大臣に意見を伝える懇談の場で、環境省の事務方が患者の話の途中でマイクの音を切り、質問を遮っていた。極悪非道な対応に批判が噴出。伊藤大臣が現地に戻って謝罪する展開となったが、それですむ話なのか。

岸田文雄首相は伊藤大臣を即刻更迭すべきである。

伊藤環境大臣と水俣病患者団体との懇談会は5月1日、水俣市で開かれた。環境省はあらかじめ各団体が話す時間を3分以内に設定。時間オーバーの場合はマイクの音を切る運用を決めていた。その動機が衝撃だ。伊藤大臣の帰路の新幹線の時間に間に合わせるためだったという。

そして環境省の事務方は懇談会の本番で、本当にマイクの音を切った。

いったい何のための懇談会なのか。環境大臣以下、環境省幹部たちが患者たちの生の声に耳を傾け、水俣病救済というとてつもなく重く困難な課題について、少しでも合意形成を進めていくためではないのか。

3分という時間で一律に線引きし、マイクの音を容赦なく切る姿勢には、双方が歩み寄って合意形成をはかるという政治・行政の基本がまったく感じられない。あまりに不誠実な姿勢に、怒りを通り越して呆れるしかない。

ここまで日本の官僚機構は腐り切ってしまったのか。

まさに自民党長期政権のもとで「過半数の支持を得て選挙にさえ勝てばいい」「少数意見は切り捨てていい」という歪んだ体質が官僚機構の隅々にまで浸透したのだろう。

さらに衝撃的だったのは、懇親会の場にいた伊藤大臣の対応だった。

誰が見ても環境省の事務方がマイクの音声を意図的に下げ、質問を遮ったことは明らかなのに、それを指摘した患者団体側の指摘に対し、「私はマイクを切ったことは認識していない」と責任逃れの答弁をし、抗議する患者団体側を無視してそのまま立ち去ったのだ。

自分の帰りの新幹線の時間に間に合わせるためだったことを患者団体側が知っていたら、さらの現場は紛糾したに違いない。

いったい何のための大臣なのか、政治家なのか。仮に不誠実な環境がマイクの音を切って質問を遮ったとしても、大臣がそれをたしなめ、「最後まで意見を聞こう」というのが、当たり前の態度である。

この伊藤大臣は、政治家としての資質がない。いますぐ辞任したほうがよい。

あまりに不誠実で無慈悲な環境大臣と環境省の対応に、大型連休中のSNSには批判が噴出した。

ところが環境省は大型連休中は動かず、連休明けの7日に伊藤大臣にマイクを意図的に切っていたことを報告。

伊藤大臣は当初、職員が現地に行って謝罪するよう指示したが、世論の批判が高まるばかりで、自ら現地に飛んで謝罪することになった。

伊藤大臣が涙を流して弁明する様子が報じられたが、わざとらしいとしかいいようがない。涙を流すくらいなら、なぜ最初の段階で患者たちの質問を継続させなかったのか。追い詰められた自らの身を憐れむ身勝手な涙としか私には思えなかった。

そもそも伊藤大臣は本当に「質問が3分を超えたらマイクの音を切る」計画を事前に知らなかったのか? それも怪しい。仮に知らなかったとしても、患者団体が抗議して会場が騒然となった時に、なぜ政治家として、大臣として、質問続行を指示しなかったのか。官僚の振り付け通りにしか動けない「ダメ大臣」の典型である。

水俣病は環境省設置の契機となった大公害事件である。環境省不信、政治不信を増幅させた今回のマイク切り事件は、環境大臣を即刻更迭するに値する重大事件だ。

ところが、岸田文雄首相は伊藤大臣を続投させる考えを示している。なぜか。

最大の理由は、伊藤大臣が麻生派に所属していることだ。岸田首相が打ち上げた「派閥解消」を無視して唯一存続を決めている麻生派の一員なのだ。

キングメーカーの麻生太郎副総裁と岸田首相は9月の総裁選に向けて微妙な関係にある。岸田首相は6月解散を断行して9月総裁再選への流れをつくりたいが、内閣支持率が低迷して困難な上、麻生氏も猛反対している。

岸田首相は麻生氏と関係を修復し、解散なしで総裁再選を目指す戦略に転じつつあり、今の時点で麻生氏の怒りを買う伊藤大臣更迭は避けたいのだ。

政権延命のための政局を優先して、水俣病患者たちを傷つけた環境大臣を守る。それが岸田首相の実像である。

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