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れいわ新選組の登壇を拒否した「5・3憲法集会」って、何だ!?

憲法記念日の5月3日に何ともやりきれない出来事が起きた。

東京・有明で開催された憲法集会に、れいわ新選組の新宿区議であるよだかれん氏(今夏の参院選東京選挙区に出馬予定)が政党を代表して登壇するために参加したところ、主催者から「国会議員でなければ登壇できない」と拒否されたのだという。よだ氏が同日夜、ユーチューブで明らかにした。

この集会は「改憲発議許さない!守ろう平和といのちとくらし2022憲法大集会」(主催・平和といのちと人権を!5.3憲法集会実行委員会)。自民党が憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の創設など「改憲4項目」を参院選の争点に掲げるなかで、「改憲阻止」を訴えることを目的とした集会だった。

主催者発表で1万5000人が参加し、野党からは立憲民主党の奥野総一郎国対委員長代理、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首が登壇してスピーチした。昨年の衆院選で立憲民主、共産、社民、れいわの野党共闘を仲介した市民連合からも中野晃一・上智大教授が登壇してスピーチした。

よだ氏によると、れいわ新選組も登壇者として招待された。山本太郎代表らは、トランスジェンダーを公表しているよだ氏は憲法が保障する基本的人権への思いが非常に強く、党を代表して憲法集会でスピーチするのに適任であると判断したという。

マイノリティーの権利を人一倍重視し、さまざまな困難に直面する「無名の当事者」たちを選挙に擁立してきたれいわらしい判断といえるだろう。

れいわの事務局は主催者側と事前に調整し、よだ氏の派遣について了承を得ていたという。

よだ氏はスピーチの練習を重ね、当日は会場に到着してステージ脇のテントにある受付を訪ねた。ところが応対した女性から「うちはね、ずっと国会議員の方をお招きしているんです。あなた、国会議員じゃないですよね。当選したんですか?」と言われたという。

よだ氏は「党と実行委員会の皆さんで調整していただいて、登壇者としてまいりました」と伝えたが、「もうこれは決まっていることなので、あなたは登壇できません。本来私たちは国会議員を呼んでいます。今回、れいわ新選組からは櫛淵万里さん(衆院議員)をお呼びしています。櫛淵さんの秘書が来たということでアナウンスくらいはしてもいいですけどね」と告げられた。

よだ氏は納得できず、党のスタッフに連絡して実行委と調整を重ねたが、最後まで決定は覆らず、れいわの登壇はかなわなかった。会場には、れいわ新選組からは櫛淵衆院議員の秘書が参加しているとのアナウンスが流れたという。

よだ氏は「会場に来ている人は、れいわ新選組は秘書を寄越しただけなのかと悪い印象を持っただろう。予算委でれいわが質問時間を十分に与えられなかったことを思い出した。憲法を大切にしていこうと誓い合う集会で、表現の自由を保障する憲法の理念がねじ曲げられる出来事が起きてしまった。とてもショックだ」と話す。

れいわの櫛淵衆院議員は以下のようなツイートをした。

この出来事を知って、この憲法集会は何のために開催したのだろうと私は強く思った。

改憲を推し進める自公政権に日本維新の会や国民民主党はすり寄り、野党第一党の立憲民主党の支持率は低迷し、今夏の参院選で改憲勢力が発議に必要な3分の2を上回る可能性は極めて高くなっている。

今こそ改憲に反対する勢力が結束し、何としても改憲を阻止するために結束することを目指した憲法集会ではなかったのだろうか?

改憲に反対姿勢を示しているれいわ新選組が党を代表して派遣した人を「国会議員じゃないから」という理由で登壇させなかったのは、差別を禁じる憲法の理念に反するのではないのか?

この憲法集会の主催者は本気で改憲を阻止しようとしているのか?

単に自分たちが支持する政党の勢力拡大のために「改憲阻止」を利用しているだけではないのか?

登壇した立憲、共産、社民の党幹部たちは、れいわだけが登壇しないことについて疑問を感じなかったのだろうか? 何の行動もとらなかったのはなぜだろう?

そんな疑問が次々にわいてきたのだった。これでは野党共闘が崩壊するのも当たり前だろう。「改憲阻止」の一点でも連携できないのに、「政権交代」で共闘することなんて、できるのだろうか?

実行委員会とれいわ新選組のスタッフの間で事前のやりとりに行き違いがあったのかもしれない。そうだとしても、れいわ新選組のホームページで参院選に擁立することが紹介されているよだ氏が会場に姿を見せたのである。改憲阻止の仲間をひとりでも増やそうとしているのなら、大歓迎して当然だ。

「国会議員じゃないから」という理由で登壇を拒むのは、れいわ支持者とは改憲阻止のために手を取り合うつもりはないという宣告である。改憲反対勢力の結集を訴える人々が、改憲反対勢力の分断を煽って、どうするつもりだろう? 

要は、改憲阻止に本気ではないということだ。

いったい、この憲法集会を主催したのはどんな人々なのか?

ネットで「改憲発議許さない!守ろう平和といのちとくらし2022憲法大集会」を検索すると、開催案内のホームページが見つかった。主催者は「平和といのちと人権を!5.3憲法集会実行委員会」。住所や電話番号の記載は見当たらず、メールアドレスだけが記載されている。これだけではよくわからない。

次にこの憲法集会の開催を伝える記事を探した。詳しく報じていたのはしんぶん赤旗だ。この記事で、主催者を代表してあいさつしたのは「平和フォーラム共同代表」の藤本泰成氏であることがわかった。

この「平和フォーラム」を検索すると、出てきた。1999年に発足した団体で、設立趣意書には「広く市民にも開かれた運動の「公共財」として、全国ネットワーク組織「フォーラム平和・人権・環境」を設立します」と記されている。

そして「役員・構成団体」の欄に、憲法集会で主催者を代表してあいさつした藤本氏の名前があった。ここで藤本氏の所属が「日教組」であることがわかる。藤本氏とともに代表を務めるのは「自治労」の人だった。事務局長は「自治労」の人で、副事務局長は「日教組」の人である。

サイトの末尾に「所在地」が記されていた。東京・千代田区にある「連合会館」の一階である。電話番号も記載されていた。電話してみたが、誰も出なかった。

日教組も自治労も連合加盟の労組である。どちらも立憲民主党との結びつきが強い大きな労組だ。この「平和フォーラム」は連合や立憲民主党と密接な関係がある団体なのだろう。

ここにいたって、れいわ新選組のよだ氏の登壇が拒否された理由がみえてきた気がした。

連合会長は麻生太郎副総裁ら自民党幹部と会食を重ね、自民党本部に招かれて満面の笑みで講演をしている。一方で、連合加盟の有力労組の関係者が主導する憲法集会は、れいわ新選組の登壇を拒む。

いったい、どうなっているのか!

衆院3人、参院2人のれいわ新選組は国会で与野党から冷淡に扱われてきた。予算委員会で質問の機会を与えられず、ウクライナに侵攻したロシアを非難する国会決議の文案づくりにも加えてもらえなかった。

山本太郎代表は「国会で舐められている。一刻も早く中規模の政党になる必要がある」「(野党は)本気で権力奪取する気があるのか!」と怒って衆院議員を辞職し、自ら参院選に出馬して大幅議席増を目指すことを決めたのである。

れいわに対するNHK党や警察の嫌がらせについては記事にしたばかりだ。

NHK党に沖縄県警…れいわ新選組への嫌がらせ相次ぐ。それを静観するマスコミに「憲法記念日」を語る資格あるの?

与党だけでなく立憲民主党でもれいわを「仲間外れ」にする動きはこれまでも繰り返されてきた。支持率が低迷し、存在感がいっこうに高まらない立憲民主党には、カリスマ性のある山本代表が率いるれいわへの警戒感・拒否感が極めて強いのだ(私が野党関係者と話していてもこれは強く痛感する空気である)。

れいわを外す、れいわを苛めるーーそんな国会の空気は、立憲民主党を支持する労組にも広がっているのだろうか。今回の憲法集会での応対は、私もとてもショックだった。「あなた、国会議員じゃないですよね」と見下したように拒絶する発言が、憲法集会を主催する側から飛び出したことに衝撃を受けた。

基本的人権を何よりも重視する日本国憲法の理念がリベラル層でも軽んじられつつあるのだろう。改憲論が高まる社会的土壌はたしかにあるのだ。

日本国憲法が最重視するのは「平和主義」というイデオロギーではない。

国家権力が遂行する戦争に巻き込まれることで脅かされる人々の生命、国家権力の暴走で侵害される人々の自由、国家権力の失政によって困難に直面する人々の生活ーーそれら基本的人権〜とりわけ弱い立場にあるマイノリティーの人権〜を国家権力から守ることこそ、日本国憲法の最大の存在意義なのだ。憲法集会に参加した政治家や労組関係者はそのことを改めて自覚してほしい。

憲法集会の主催者、そして集会運営に関与したとみられる連合、日教組、自治労などの労組関係者、そして壇上で挨拶した立憲、共産、社民の各党幹部は、この「れいわ外し」は誰の責任で決定されたことなのか、詳しく経緯を検証し、それに対する見解を明確に表明する責任がある。それなしに「野党共闘」や「改憲阻止」をいくら叫んでも、とても説得力があるとは思えない。

本気で政権を奪取する気があるのか。本気で改憲を阻止する気があるのか。

疑念は深まるばかりだ。

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