岸田文雄首相が年内の衆院解散を見送るとマスコミ各社が11月9日に一斉に報じた。
岸田首相に年内解散を断行するつもりはないと私は繰り返し指摘してきたので、マスコミ各社の報道には今更という印象しかないが、マスコミ各社は来年秋の自民党総裁選に向けて岸田政権がレームダック化すると騒ぎ立てている。
このように報道されると岸田政権の求心力は一気に失われるので、政権中枢は自民党内から舐められないように年内解散論を意図的に流布し、必死で求心力を維持してきた。
しかし、内閣支持率が政権発足以来最低に落ち込む中で、これ以上、年内解散論を引っ張り続けると、6月解散論を煽ったのに続いて「オオカミ少年」化して信用されなくなると観念したのだろう。ついには公式に(とはいってもマスコミ各社のオフレコ取材に対し)「年内解散見送り」をアナウンスしたということだ。
それにしても情けないのはマスコミ各社の政治部である。6月解散風が吹き荒れた時も、岸田首相の意向にまんまと踊らされて、解散風を煽る報道を続けた。今回の年内解散論も同様だ。政界全体の状況を自ら分析せず、政権中枢の言葉を鵜呑みにする取材ばかりしかしていないので、政権中枢の踊らされ、読者をミスリードする報道を重ねるのである。
政治報道の劣化が甚だしいというほかない。
年内解散見送りで岸田政権のレームダック化が加速するのは事実だ。内閣支持率が劇的に回復しない限り、年明けの通常国会冒頭解散も、予算成立後の春解散も、通常国会会期末の夏解散も難しいだろう。来年秋の自民党総裁選前の解散総選挙を断行することができなければ、岸田首相は総裁選不出馬に追い込まれて勇退という道筋が見えてくる。
だからこそ、年内解散論を流布して求心力の維持に躍起になっていたのだが、それも力尽きた今、自民党内では岸田勇退を見越してポスト岸田レースが事実上始まったといっていい。
そこで急浮上するのが、来年秋の自民党総裁選を待たずに岸田首相が電撃辞任するシナリオだ。
来年秋の自民党総裁選は任期満了に伴うもので、国会議員票と党員票が半々の重みを持つ。これだど世論調査で人気の石破茂元幹事長や河野太郎デジタル担当相、小泉進次郎元環境相のいわゆる「小石河連合」や彼らを担ぐ菅義偉前首相が優勢となる可能性が高い。一方、現主流派の茂木敏充幹事長(茂木派)や林芳正前外相(岸田派ナンバー2)は国民人気がなく不利だ。
そこで岸田首相ら来年秋の総裁選を待たずして、先手を打って電撃辞任するというシナリオが浮かぶ。そうなると党員が投票する正規の総裁選は行われず、国会議員票と都道府県連票だけで争われる臨時の総裁選となる。そのほうが茂木氏や林氏ら主流派の勝算が高まる。
もちろん岸田首相には抵抗感がある選択肢だが、来年秋まで居座った結果、政敵の菅氏が後押しする「小石河」政権が誕生し、岸田政権の「功績」を否定されるよりはマシだろう。
年内解散論の次に焦点になるのは、岸田首相の電撃辞任である。最も有力な時期は、新年度予算が成立する来年春だ。臨時の総裁選を経て新内閣が誕生すれば、「ご祝儀相場」に乗ってただちに解散総選挙だろう。
『岸田総理が来春の予算成立後に電撃辞任→新内閣でただちに解散総選挙の極秘シナリオ!』については、11月14日発売のサンデー毎日にも詳しく寄稿しました。YouTubeでも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。