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岸田首相が自らの処分案を退け、安倍派幹部たちを自ら聴取へ!安倍派を悪役に仕立てた「裏金解散」断行への強い意思〜4月解散か6月解散か、それとも解散断念か〜緊迫する政局

自民党の安倍派と二階派の裏金議員らの処分が4月の第1週に決定する方向になった。岸田文雄首相が9月の自民党総裁選を勝ち抜くため、今国会会期末の6月までに安倍派幹部を悪役に仕立てて裏金事件へのけじめをつける「裏金解散」を断行することを念頭に置いた処分案といっていい。

4月の第1週目に処分が終われば、自民惨敗が予想される衆院3補選を吹き飛ばす4月解散の可能性も残る。衆院解散は4月か6月か、それとも最後は解散に踏み切れないのか。政局は緊迫してきた。

処分案のポイントは以下の5つだ。

①岸田首相の処分は見送り
麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長は当初、岸田派の元会計責任者も立件されたことも踏まえ、岸田首相自らも処分対象に加えることを検討していた。安倍派と二階派に処分を限定すれば不満が高まることに加え、岸田首相の解散権を縛る狙いもあったとみられる。この処分案を早々にマスコミにリークし、流れを作ろうと目論んだ。

しかし、首相処分案が報道されると、岸田首相は激しく反発。所属議員が裏金を受け取っていた安倍派や二階派と違って、岸田派は派閥事務局の事務的ミスだったとして自らは処分対象とはしない方針をトップダウンで決めた。首相自身を処分してしまうと、自らの手で今国会で裏金解散に踏み切ることが事実上不可能になるからだ。

岸田首相が麻生氏や茂木氏に相談することなく岸田派解散を表明した後、双方の関係は冷え切っている。今回の処分案をめぐって岸田首相が麻生・茂木両氏に対する不信感をさらに務めたのは間違いなかろう。

②岸田首相が自ら安倍派幹部らを聴取

安倍派裏金事件の大きな焦点は、安倍元首相が政治資金の還流廃止を提案し、一度は派閥幹部会議で決定したものの、安倍氏急逝後の2022年8月の派閥幹部会議で議論が蒸し返され、結局は還流が継続された経緯が不透明なことである。

この2022年8月の派閥幹部会議に出席していた塩谷立、下村博文、世耕弘成、西村康稔の4氏は政倫審に出席したが、その証言は食い違い、疑惑はいっそう深まった。

この事態を受けて、岸田首相は自ら4氏らを聴取し、経緯をといただしたうえで、最終的な処分を決定するというのだ。

岸田首相が「遠山の金さん」や「暴れん坊将軍」のように、自らの乗り出して悪を裁き、支持率回復につなげる思惑がくっきり浮かんでいる。

岸田首相が手本としているのは、小泉純一郎首相が2005年に断行した郵政選挙だ。郵政民営化法案に反対した自民党議員に除名・離党勧告を突きつけて衆院を解散し、彼らを公認しないばかりか対抗馬(刺客)を送りつけて世論の喝采を浴び、圧勝したのである。これにならって、安倍派裏金幹部たちを悪役に仕立て、自らは「正義の味方」として彼らを断罪するというイメージなのであろう。

③安倍派は塩谷・下村・世耕・西村4氏を非公認以上
安倍派幹部たちに除名・離党勧告を突きつければ郵政選挙の再現となりうるが、自民党内には慎重論が強く、岸田首相がそこまで踏み込める可能性は今のところ低い。選挙での非公認や党員資格停止にとどめる方向だ。

とはいえ、次の選挙で非公認となると、無所属で出馬するほかない。「無所属で当選してきたら、禊をすませたとして復党を認める」というメッセージを送り、自発的離党を促す狙いもあるのだろう。

無所属は政見放送に出られず、ビラの枚数など選挙活動も制約される。さらには比例区に重複立候補できず、比例復活はなくなるため、小選挙区で敗れれば落選確定だ。裏金批判にさらされるなかでの選挙ということもあり、当事者にとってはかなりのプレッシャーとなる。

④二階元幹事長の処分は別途協議
一方、二階俊博元幹事長については別枠で協議する方向で調整してきた。二階氏が先手を打って次期衆院選への不出馬を表明したことで、岸田首相としては安倍派と二階派のバランスを気にせずに安倍派処分に踏み切れる環境が整ったといえるだろう。

二階氏は派閥関連の裏金総額が党内トップだったことに加え、安倍政権と菅政権で幹事長を務め、自民党から使途を報告する必要のない政策活動費を5年で50億円も手にしたことが批判を浴びている。二階氏を厳しく処分すれば、この50億円の使途を暴露されるかもしれないことも警戒してきた。

二階氏は85歳。もともと次の衆院選で引退して地盤を息子に譲るとの見方はあった。だが、地元・和歌山の政敵である世耕氏が二階氏引退を機に衆院へ鞍替えすることを狙ってきたため、タイミングが難しかった。

だが、世耕氏も裏金事件で逆風を浴び、厳しい処分が下されることは確実だ。このタイミングで二階氏が引退しても、世耕氏が衆院に鞍替えすることは政治的に困難である。二階氏にとって代替わりの好機が訪れたといえなくもない。
二階氏は、世耕氏が厳しく処分され、衆院鞍替えできない状況に追い込まれる手応えを十分につかんだうえで、自らの不出馬を表明したとみて間違いない。
一方、二階氏は東京都の小池百合子知事とも気脈を通じており、4月28日の衆院東京15区補選に小池知事を担ぎ出して国政復帰させ、自民党に復党させて9月の総裁選に出馬させる構想も練っているといわれる。

衆院解散までは政界引退せず、職務をまっとうするという。解散政局や総裁選政局には最後まで絡むつもりだろう。百戦錬磨の老獪な政治家だけに、今度の出方は予断を許さない。

⑤処分決定は4月第一週

岸田首相は4月8日(月)〜4月12日(金)の週は国賓待遇でアメリカを訪問する予定だ。それに先立って裏金処分を4月第一週に決定する方向も固まった。

この結果、裏金処分を踏まえてただちに党役員人事を断行し、4月5日(金)に衆院を解散して米国に飛び立つという「電撃裏金解散」の可能性も残った。この場合は4月16日告示ー28日投開票の衆院3補選はなくなり、同じ日程で衆院選が行われることになる。短期決戦となるが、裏金批判をかわすには都合がいい。

ネックは、岸田首相が「今国会で政治資金規正法を改正する」と繰り返してきたこととの整合性だ。とりわけ公明党は今国会の法改正前の解散には反対の姿勢だ。

実際に解散に踏み切るには、公明党から入閣している斉藤国交相の署名が不可欠である。公明党への根回しに必要な時間や人脈があるのかどうか。4月解散へのハードルは低くはない。

岸田首相の当初の本命は6月解散だった。所得税減税が実施されるのは6月の予定だ。6月には政治資金規正法の改正も実現している可能性が高い。6月に解散の照準をあわせてきたのは間違いない。

しかし、6月解散風が強まれば、これを阻止して岸田首相を9月退陣に追い込もうとする動きも強まる。内閣支持率を落とすためにスキャンダルが次々にリークされる恐れもあるし、政治資金規正法の改正協議を邪魔して解散を封じる動きも強まるだろう。さらに4月28日の衆院3補選で3敗すれば、岸田おろしが勢いづく。

そうなると逆算してやはり4月解散がベストシナリオにみえてくる。岸田首相が安倍派処分を受けて一気に解散を断行する可能性は排除できない。

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