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四面楚歌で9月総裁再選が険しくなった岸田首相に今夏の内閣改造・党役員人事を断行できるのか? 茂木幹事長を更迭してポスト岸田一番手の石破氏を幹事長に取り込み、「岸田vs茂木の究極の不人気対決」で再選を目指す構想の行方

岸田文雄首相が9月の自民党総裁選で再選を目指し、今夏の内閣改造・党役員人事を断行して政権基盤を固め直すことを狙っているとの報道が相次いでいる。

内閣支持率が低迷しているうえ、岸田首相のもとでの衆院解散に反対する公明党に政治資金規正法改正で協力を得るため、岸田首相は今国会での解散を断念した。このままでは9月の総裁選不出馬に追い込まれかねず、最後の巻き返しの一手として「人事」で勝負しようというわけだ。

最大の狙いは、世論調査の「次の首相」でトップを走りポスト岸田の一番手とされる石破茂元幹事長を「幹事長」として取り込み、総裁選出馬を阻むこととみられる。関係が冷え切っている茂木敏充幹事長を更迭しても、茂木氏は党内外で人気がなく、茂木氏相手なら総裁選に勝利できるという判断だろう。

高市早苗経済安保担当相や上川陽子外相、河野太郎デジタル担当相、小泉進次郎元環境相らポスト岸田候補を閣内や党執行部に取り込み、「岸田vs茂木の究極の不人気対決」に持ち込んで総裁選をしのぐ算段といってよい。

6月23日に国会が閉会した後、7月中にも人事を断行することを狙っているようだ。

しかし、この人事構想は相当に無理筋である。9月の総裁選を控え、内閣支持率が低迷する岸田首相は「選挙の顔」にならないと批判が強まる中、総裁再選を果たせない可能性がかなりある岸田首相が人事を断行したところで「泥船内閣」に加わろうとする実力者がどれほどいるだろうか。岸田首相とともに沈没したくはないと、普通は誰しも考えるものだ。

仮に人事に着手したとたん、次々に入閣や党執行部入りの打診を拒否されたら、その時点で岸田政権は立ち往生する。途中で人事を中断すれば、それこそ9月総裁選不出馬・退陣が決定的になる。

焦点の石破氏は周辺に「幹事長を打診されたら拒否しにくい」と漏らしているとの報道もあるが、ここで石破氏が幹事長就任を受け入れて不人気の岸田首相を支える姿勢を打ち出せば、石破待望論は瞬く間に消え失せ、石破政権の芽は摘まれる。はたして石破氏が幹事長就任を受け入れるのか、私は懐疑的だ。

かりに石破氏が受け入れたところで、他の有力者たちもそれに続くかどうかは見通せない。石破氏が幹事長に就任してポスト岸田レースから脱落したと判断すれば、他の有力候補たちは一斉に「岸田離れ」を進め、石破氏に代わってポスト岸田レースのトップに踊り出ることを狙うだろう。

永田町の常識では、落ち目の政権による人事断行は、政権を一気に終焉させることが多い。岸田首相の最後の一手も致命傷になる可能性がかなり高い。

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