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小池百合子都知事に「学歴詐称疑惑の隠蔽疑惑」が浮上!文藝春秋が元側近の告発手記を報道、学歴疑惑の再燃が補選出馬見送りの決定打だったのか?7月の都知事選の行方も不透明に、岸田首相の解散戦略、総裁再選戦略にも影響

東京都の小池百合子知事の学歴詐称疑惑が再燃してきた。元側近が文藝春秋(4月10日発売号)で「学齢詐称疑惑の隠蔽工作」を暴露したのだ。

小池知事が4月28日投開票の衆院東京15区補選に出馬して国政復帰することを見送った一番の理由は、ここにあるのではないか。

小池氏が作家の乙武氏を擁立した東京15区補選の行方に限らず、小池知事3選が有力視されていた7月7日投開票の東京都知事選の行方も混沌としてきた。岸田文雄首相の解散戦略、総裁再選戦略にも大きな影響を与える可能性がある。

小池知事は2020年の前回知事選前、カイロ大学卒業の学歴を詐称した疑惑で追い詰められていた。その時、駐日エジプト大使館が小池知事の卒業を認めるカイロ大の声明を公表。これにより学歴詐称疑惑は沈静化し、小池知事は知事選に大勝した経緯がある。


文藝春秋が最新号で報じたのは、当時は小池氏が立ち上げた「都民ファーストの会」の事務総長を務めていた小島敏郎氏の告発手記『私は学歴詐称疑惑の“隠蔽工作”に手を貸してしまった』。小島氏は元環境省の官僚で、小池氏が環境大臣時代に「クールビズ」を共に推進した縁で小池氏が都知事に就任すると都の特別顧問となった。

当時は週刊誌やネットメディアを中心に小池知事の学歴詐称疑惑の追及が強まっていた。告発手記によると、小島氏は、小池知事が憔悴しきった様子に驚き、「カイロ大学に声明を出してもらう」という対応策を進言したという。小島氏は「声明文はカイロ大学が作成したものではなく、小池氏がA氏(元ジャーナリスト)に作成依頼したものだった」「エジプト大使館のサイトに掲載することを助言したのもA氏」と明かしている。

一方、小池氏に擁立されるかたちで東京15区補選への出馬を表明した作家の乙武洋匡氏は、3月に小池氏から出馬の打診を受けたと記者会見で説明している。当初は小池氏が自ら出馬するつもりでいたが、文藝春秋の報道を察知して取りやめ、代わりに乙武氏をあわてて擁立したという構図が浮かんでくる。

小池氏と親しい二階俊博元幹事長が裏金事件で次期衆院選不出馬を表明し、小池氏は国政復帰しても自民復党のメドが立たず、初の女性総理への道のりは簡単ではない状況になった。それに加え、学歴詐称疑惑の再燃が補選出馬を見送る決定打となったとみるのが自然だ。

学歴疑惑再燃により、乙武氏への逆風も強まる。過去の女性問題を口実に公明党や国民民主党は推薦に慎重な姿勢に転換。裏金事件で大逆風の自民党だけから推薦を受けるのは、乙武氏にとって最悪の構図ともいえる。

影響は補選にとどまらない。小池知事の3選確実とみられていた7月の都知事選の行方も混沌としてくる可能性がある。

小池知事の存在感を大きくしてきたのは、国政復帰して初の女性首相になるかもしれないという期待感からであった。補選出馬を見送ったことでその可能性はぐっと減り、ただでさえ影響力が陰る可能性があった。そこへ今回の学歴疑惑再燃である。都知事選への大きな逆風となるのは必至で、不出馬に追い込まれる可能性さえゼロではないだろう。

小池知事の失速は、岸田文雄首相の政権運営にも大きな影響を与えそうだ。

有力なポスト岸田が不在のなかで、岸田首相は小池知事の国政復帰や自民復党を警戒してきた。小池知事が補選出馬を見送ったことで9月の総裁選前に解散しない限り、小池氏が総裁選のライバルとなることはなくなった。内閣支持率の低迷で6月解散にも慎重な姿勢に転じていたが、さらに6月解散の動機が薄れることになる。

だが、小池知事が都知事選不出馬に追い込まれれば、今後は都知事選の対応が難しくなる。小池知事に相乗りしておけば「敗北」は免れたが、小池知事が不出馬となると、解散総選挙を迫る立憲民主党など野党と激突しなければならない。

4月28日投開票の衆院3補選は自民全敗の可能性が指摘されている。さらに7月の都知事選に敗れれば、9月総裁選を機に岸田退陣の流れが一気に強まるだろう。野党系の都知事が誕生すれば、都内の政治状況は激変して総選挙にも大きな影響を与えるのは必至だ。

立憲民主党は衆院3補選に全勝の可能性も出てきた。都知事選をめぐっても「知名度の高い男性から出馬の申し出があった」と公表し、小池知事や自民党との対決姿勢を強めている。東京15区補選では共産党が候補者を取り下げ、立憲新人が乙武氏を制する可能性も強まってきた。確執が深まっていたれいわ新選組とも東京14区と東京22区をわけあう候補者調整で合意。6月の国会会期末に向けて政治資金規正法の改正をめぐってさらに攻勢をかける展開が見込まれる。7月の都知事選に勝利すれば、さらに勢いづくだろう。

6月解散断念→7月知事選敗北→9月岸田首相の退陣表明という展開は十分にあり得る。

だが、立憲は浮かれるのははやい。9月の総裁選で首相の顔を差し替えて解散総選挙をただちに断行するのは自民党の常套手段だ。総選挙の相手は岸田首相ではないという想定で準備を進めることも必要だ。

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