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石丸構文と進次郎構文の違いとは? 裏金事件を吹き飛ばす救世主として、小泉進次郎に総裁選出馬の期待がじわりと広がるワケ〜最大のネックは父・小泉純一郎の猛反対

自民党内では裏金事件の大逆風を吹き飛ばす救世主として、43歳の小泉進次郎元環境相の総裁選出馬を期待する声がじわりと広がっている。9月の総裁選で岸田文雄首相を交代させても、石破茂元幹事長や茂木敏充幹事長らが後継首相ならば「古くさい政治家」で代わり映えしない。それでは裏金事件で広がった自民党不信を払拭できないからだ。

最大のネックは、進次郎氏の父・小泉純一郎元首相が猛反対していること。

はたして父親を口説き落とせるのか、そこに自民党の命運がかかっているかもしれない。

東京都知事選で大躍進した石丸伸二氏の噛み合わない物言いはネット上で「石丸構文」と呼ばれている。これを踏まえ、進次郎氏の物言いを「進次郎構文」と名付け、両者を比較する発信をSNSで見つけた。

石丸構文は中身がなくて、つまらない。進次郎構文は中身はないが面白い。

言い得て妙だと思った。

石丸構文にはどこか冷笑的で突き放した感じがある。これに対し、進次郎構文は確かに中身はないが、どこか愛嬌がある。

この朗らかさこそ、進次郎氏の最大の強みで、裏金自民党のイメージを刷新するにはピッタリと期待が高まっているのだろう。

世論の大注目を集めた東京都知事選で自民党が裏支援した小池知事が勝利し、立憲民主党の勢いは止まった。政権交代の機運は一気に萎みそうな様相だ。

一方、同時に行われた東京都議補選で、自民党は2勝6敗で惨敗。裏金事件で批判を浴びた萩生田光一都連会長のお膝元である八王子でも敗北し、裏金事件の大逆風はやんでいないことを示した。

自民党内では、岸田首相を9月総裁選で交代させなければ、とても解散総選挙は戦えないとの認識がますます強まっている。

しかし、岸田首相を代えても支持率が回復するかどうかは見通せない。

石丸氏を大躍進させた無党派層には、既存政党への不信感が相当広がっており、このマグマが総選挙でどこへ向かうかは予断を許さない。立憲民主党が失速したとしても、自民党が下野した1993年総選挙のように新党ブームが再来し、無党派層がそこへなだれ込む可能性もある。

自民党が総裁選で「古くさい政治家」を選ぶと、ますます世論から見放される恐れもあるのだ。

総裁選は、麻生太郎vs菅義偉の元首相同士のキングメーカー争いとなるとみられている。それぞれが誰を担ぐのか。今のところ菅氏は石破茂元幹事長、麻生氏は岸田首相を見切って茂木敏充幹事長を担ぐ可能性が高い。

だが、どちらも幹事長経験者で古い顔。自民党が生まれ変わったという印象はない。

どちらが勝っても、背後にキングメーカーの麻生氏や菅氏の存在がちらつけば、支持率が回復するかどうかは疑わしい。

麻生氏と菅氏が土壇場で手を握って上川陽子外相や河野太郎デジタル担当相を担ぐ構想もささやかれているが、それでもキングメーカーが暗躍すれば古くさい政権として無党派層から敬遠されるだろう。

そのようなイメージを刷新する唯一の存在は、進次郎氏ではないかというのである。

菅氏も本心では進次郎氏を擁立したいと考えている。進次郎氏なら麻生氏が担ぐ候補に圧勝できる可能性も高い。

ところが、これに反対しているのが、父・純一郎元首相だ。「進次郎には50歳になるまでは首相を支えろ、今は動くな、何もするなと言いつけている」と周囲に明かしている。

純一郎氏は盟友の山﨑拓元幹事長らと定期的に開いている「小泉政権の同窓会」に石破氏を招き、総裁選出馬の背中を押した。山崎氏は石破支持を公言している。

自民党の逆境を救うために、いまの時点で、経験不足の進次郎氏を差し出すわけにはいかない。国民人気の高い石破氏が出馬して自民党不信を解決すべきだというわけだ。

小泉家の親子関係は絶対といわれている。俳優である長男孝太郎氏は。父親は厳しくて逆らえなかったと明かしている。次男進次郎氏も父親の意向に逆らって出馬するとは考えにくい。小泉家は自民党より小泉ファーストなのだ。

つまり進次郎擁立には父親の説得が不可欠となる。

純一郎氏の盟友は、清和会で苦楽をともにしてきた森喜朗元首相だ。しかし森氏は裏金事件で猛烈な批判を浴びて総裁選で暗躍するのは難しそうだ。純一郎氏は首相時代も森氏の主張を無視したことも多く、あてにならない。元首相の菅氏も格上の純一郎氏に強く要請できる立場ではない。

進次郎氏が出馬すれば当選の可能性が高い。石破氏や茂木氏らも進次郎氏の動向がはっきりしない段階で出馬表明をすることには慎重にならざるを得ないのではないか。

岸田首相が出馬するかどうか、そして進次郎氏はどうするか。この二人の動向がはっきりした後に出馬表明が相次ぎ、総裁選の構図が決まるという展開をたどることになりそうだ。

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