自民、公明、国民民主の3党幹事長が減税政策をめぐって合意した。国民民主党が求める年収の壁の引き上げやガソリン税の暫定税率廃止を基本的に受け入れる一方、引き上げ幅や実施時期はあいまいとする玉虫色の合意である。この合意を受けて、国民民主党は政府提出の補正予算案に賛成した。
3党幹事長の合意は以下の内容である。
・所得税の非課税枠である年収「103万円」を来年から引き上げ「178万円」を目指す。
・ガソリン税の暫定税率は撤廃する。
年収の壁をめぐっては、自民党内で「再来年から」を目論む動きがあったが、最終的には国民民主党が「来年から」で押し切った。一方、引き上げ幅は明示されず、今後の協議に持ち越した。自民党は「123万円」を主張し、国民民主党は反発している。来年から「178万円」に引き上げるのは困難な情勢だ。
ガソリン税の暫定税率の撤廃は合意されたものの、時期は明示されなかった。自民党内では「再来年から」という見方が広がっており、今後の協議は難航しそうだ。
国民民主党の榛葉幹事長は3党合意後、「自公与党の幹事長に感謝申し上げたい」と述べる一方、自民党の森山幹事長は「来年から一発でというのは無理」と明言した。自民党が国民民主党を先に補正予算賛成に引き込み、減税の最終決定は先送りしたという意味で、自民党が一枚上だった。
自民党は水面下で立憲民主党や日本維新の会とも協議し、国民民主党の焦りを煽った。立憲が主張している能登半島の復興予算を盛り込む修正案を受け入れ、維新が主張している教育無償化の協議会も設置した。維新はこれを評価して補正予算案に賛成に転じた。
国民民主党が頑なな姿勢を貫けけば、交渉を決裂させ、維新を代わりに引き込んでもかまわないーーこのような野党分断工作が功を奏した格好だ。
3党幹事長が合意した減税政策は、年末に決定される来年度の予算編成・税制改正に盛り込まれ、年明けの通常国会で可決・成立する見通しだ。国民民主党は、かりに年収の壁の引き上げ幅が不十分でも、来年度予算編成に賛成するほかないだろう。
国民民主党は来春の予算成立後、自公与党との連携を維持するか、来夏の参院選にむけて反自公に転じて立憲との選挙協力を進めるかを判断する重大局面を迎えるが、反自公に転じれば今回の3党幹事長の合意を破棄される恐れがある。所得税減税やガソリン税減税の「完成形」を再来年以降に持ち越されて「人質」に取られたともいえ、来春の予算成立後に反自公に転じるのは難しくなったのではないか。
今回の3党幹事長の合意は「国民民主党を与党陣営に引き留めるための老獪な先送り策」といえる。最終的には国民民主党の自公連立へ引き込む布石ともいえるかもしれない。