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野田元首相、芳野連合会長、小池都知事、サルコジ元大統領…「不人気・安倍国葬」にあえて参列する人々

前川喜平・元文科事務次官が「国葬」について寄稿した東京新聞のコラム(9月18日)が面白かった。

それによると、戦前最も不人気だったのは山縣有朋の国葬で、1万人収容の会場に1千人ほどしか集まらなかったという。長州閥のトップに君臨し、陸軍や貴族院を通じて隠然たる影響力を保持した山縣の不人気ぶりがうかがえる。

山縣と同じ長州(山口県)を地盤とする安倍晋三元首相の国葬について、岸田内閣は6千人の参列者を想定して元国会議員をはじめ各方面に案内状を乱発しているようだが、前川氏はコラムの冒頭から「山縣の不人気記録を更新しないことが政府の最低目標だろう」と皮肉たっぷりだ。

コラムでは演出家の宮本亞門さんが案内状を受け取ったものの欠席の意向を表明したことを紹介したうえ、世論調査で国葬実施への反対が圧倒的に多いなかで「欠席」が相次ぐことを次のように予測している。

欠席のリスクより出席のリスクのほうが大きくなる。「なぜ欠席したか」ではなく「なぜ出席したか」が問われるからだ。明確な賛否の意見を持たない人は、リスクの低い欠席を選択するだろう。

明確な意見を持たない人は、リスクの低い欠席を選択するだろうーーこの部分には、自分の意思よりも多数に寄り添うことを優先する日本社会らしさが凝縮されており、まして国葬に招待されるリーダー的存在の人々でさえそのような同調圧力のなかで生きていることに暗澹たる気持ちになるのだが、現実的な分析としては的確というほかない。

コラムはこの後のパンチが効いている。連合の芳野友子会長が「労働者代表として出席せざるを得ない。苦渋の決断だ」などとして出席を表明したことについて「要は本人が出席したいのだろう」とこき下ろしている。

前川氏にも案内状は届いたが、何の苦渋も感じることなく欠席の返事を出したというオチもシャープなコラムだった。

立憲民主党が国葬に出席するか否かで迷走したが、前川氏のコラムを読んで、やはり今回のニュースは「誰が欠席するか」ではなく「これほど不人気な国葬にあえて参列するのはどういう人々なのか」であると確信した。

そこで参列を表明している人、あるいは、参列することが濃厚な「注目の人」を私が勝手に10人選んで、それぞれが参列する動機を分析する企画を思いついた。

前川氏がコラムで取り上げた連合の芳野会長もその一人だ。「元総理が元総理の葬式に出ないというのは、私の人生観から外れる」と出席を表明した野田佳彦元首相(立憲民主党の最高顧問)も欠かせない。

「日本人の一般的な死生観などに鑑み、粛々と出席して追悼する」として出席を表明した立憲民主党の玄葉光一郎元外相も加えたいところだが、野田氏と同じ松下政経塾出身でとても親密な関係にあるということで省略しよう。

それにしても政権与党が国家の儀式として法的根拠のないまま国葬を強行しようとしている時に、野党第一党の元首相や元外相が個人的な「人生観」や「死生観」を理由に出席を表明しているのだから、もはや二大政党政治の緊張感はないに等しい。しかも二人は「立憲主義」を重視して党名に掲げている政党の重鎮なのだから言葉を失うばかりだ。

友人代表として弔辞を述べる菅義偉前首相、すっかり影の薄くなった小池百合子・東京都知事、東京五輪汚職事件の渦中にいる森喜朗元首相…このあたりも必須だ。

そして海外組では汚職事件で実刑判決を受けたフランスのサルコジ元大統領も外せない一人だ。

う〜ん、なぜこのような面々ばかりが集まってくるのか。やはり、世論の猛反対のなかで、あえて参列する人々に注目したほうが「安倍国葬」の実態が浮かんでくるだろう。

かくして、ひとり2分ずつ、安倍国葬に参列する動機を私が次々に解説するYouTubeの動画を作成しました。是非ご覧あれ!

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