立憲民主党と国民民主党。ともに「民主党」の看板を背負い、結党から5年が経った。
だが両党の歩みは大きく分かれた。150人で船出した立憲は、支持率で国民や参政党に抜かれ、野党第一党の看板は色あせつつある。一方、わずか15人で旗揚げした国民は、衆参両院の選挙で躍進を重ね、存在感を増している。
ただし、二つの民主党の未来が明るいわけではない。
維新の連立入りが現実味を増し、参政党が第三極として台頭する中、立憲も国民も埋没しかねない。分岐点となるのは、自民党総裁選後に待ち受ける首班指名選挙だ。
立憲は「売り銘柄」、国民と参政は「買い銘柄」
議席数では立憲が依然として優位に立つ。衆院148議席、参院42議席と、国民(衆28・参25)を大きく上回っている。だが支持率を見ると構図は逆転する。NHKの9月調査では立憲5.0%、国民5.7%、参政6.3%。世論上の「野党第一党」は参政党となった。
さらに世代別支持率を分析すると、立憲の苦境は一層鮮明だ。60代以上では依然として立憲が強いが、40代・50代では国民と参政がトップを競い合い、立憲は後方に沈む。39歳以下では国民と参政が14.9%で並び、立憲はわずか3.0%に過ぎない。
背景には政策の違いがある。立憲は財政規律を重視し、高齢層の社会保障を守る姿勢を強調する。国民は現役世代の手取り増を掲げ、減税を前面に押し出す。この結果、支持層はきれいに分かれ、若年・現役世代にとって「野党」とは国民や参政党であり、立憲は高齢世代の政党に映る。
市場にたとえれば、立憲は「売り銘柄」、国民と参政は「買い銘柄」というわけだ。
参政党の台頭と「二大政党制」の終焉
昨年の衆院選では与党が過半数を割ったものの、野党が連立政権をつくる機運は生まれなかった。立憲は年金改革、国民は所得税減税を訴え、それぞれ政府に迫ったが、連携の兆しは見えなかった。
この夏の参院選でも、立憲と国民は一部の1人区で候補を一本化したものの、比例区や複数区では競合。結果として注目を集めたのは参政党だった。比例で立憲を追い抜き、茨城・福岡などの複数区でも議席を奪った。国民も大阪・福岡で参政に後れを取った。
参政党は全選挙区に候補を擁立し、自民とも立憲とも戦う姿勢を鮮明にした。対照的に国民は立憲との候補者調整に応じた。これが勢いの差につながったと総括されている。
立憲が二大政党制の時代を背景に議席を伸ばしてきたのに対し、国民・参政・維新・れいわ・日本保守党といった新興勢力が次々に台頭し、政治は完全に多党制時代に突入した。立憲が「野党の顔」であり続ける保証は、もはやどこにもない。
維新連立で埋没する二つの民主党
さらに深刻なのが維新の連立入りだ。自民党総裁選の勝者が誰であれ、維新との連立を軸に政局が動いている。進次郎政権が誕生すれば連立入りは既定路線とされ、麻生、茂木、林といった有力者も次々と維新との接近を演出している。
維新が連立に加われば、国会は再び与党多数に戻り、国民も立憲も発言力を失う。国民民主党は「対決より解決」を掲げ、これまで少数与党国会で政策協議を通じて存在感を発揮してきた。だが多数与党となれば、協議の席すら与えられない可能性が高い。立憲も同様だ。石破内閣との大連立構想は幻に終わり、与党との接点は維新に奪われる。
つまり両党とも、「維新連立で埋没する」という同じ危機に直面している。
首班指名が最大のチャンス
唯一の反転の可能性は、首班指名選挙にある。野党が一致結束して独自の首相候補を担げば、自民党新総裁は首相に就任できず、野党連立政権が誕生する。まさに政権交代のチャンスだ。
だが立憲の野田代表に他党が乗る可能性は低い。党内でも「野田以外」を模索する声が出始めたが、具体化には至っていない。安住幹事長は依然として「野田代表を軸に」と強調する。国民も参政も立憲中心の枠組みに乗る気配はなく、調整は進んでいない。
現実には、10月の首班指名に間に合う見通しは立っていない。維新が与党側に合流すれば、野党再編の選択肢はさらに狭まる。
「近づけない二党」の先にあるもの
二つの民主党は、近づくことも、離れることもできない。支持基盤も政策も正反対で、組めば組んだで支持者の離反を招く。唯一の共通点は、労組「連合」の支援を受けていることくらいだ。
維新は与党に合流し、背後からは参政党が迫る。立憲と国民がこのまま埋没を続ければ、やがて危機感は最高潮に達し、そこから政界再編が始まる可能性がある。
二つの民主党は生き残れるのか、それとも共倒れして新しい勢力に取って代わられるのか。答えは、次の首班指名選挙と、その後の再編のうねりの中で示されることになるだろう。