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れいわ新選組の課題と希望〜山本太郎の戦いは続く 参院選総括

私は今回の参院選にあたり、れいわ新選組を応援する姿勢を鮮明にした。「ジャーナリストのくせに特定政党に肩入れするのか」というご批判もいただいたが、客観中立を装いながら選挙戦を主体的に解説することなく、ただ与野党の言い分を垂れ流すばかりのマスコミ選挙報道に対して一石を投じるため、れいわ新選組を支持することを宣言したうえ、なぜ支持するのかという理由をしっかり述べるという新しい選挙報道に挑戦したのである。

欧米ではメディアが選挙前に支持政党を鮮明にするのは一般的だ。しかし日本のマスコミは自らの立ち位置を鮮明にして批判を招くことを恐れ、客観中立の建前に逃げ込み、各党の言い分を議席数の割合に応じて垂れ流す報道姿勢に徹することで選挙が盛り上がらないようにし、政権与党に事実上加担してきたのである。

そのような傍観的で無責任な選挙報道と決別するために、私は今回の参院選で、あえて支持政党を鮮明にしてみたのである。従来の選挙報道に対する痛烈な批判を込めたつもりだ。

もちろん、れいわ新選組の政治理念や政策に共感しなければ、このような報道姿勢をとることはできなかった。自らが描く社会像や政治像と、山本太郎代表が旗揚げしたれいわ新選組のそれが非常にかさなる部分が大きかったのは事実である。

私は政治学者の中島岳志さんとの対談動画をユーチューブに公開して、れいわ新選組を支持する理由を明確に示したうえで、参院選公示日前にはれいわ新選組に応援動画を送った。それらは以下である。

参院選でれいわ新選組は3議席を獲得した。改選議席はゼロだったから、躍進したともいえる。大激戦の東京選挙区(改選数6)に山本太郎代表が自ら乗り込み、東京進出を目指す維新の新人候補を倒して最後の1議席をもぎ取ったのは、ハラハラドキドキさせられる展開だった。

一方で、山本太郎代表は自公与党に真っ向勝負を挑む覚悟のない野党に抗議して衆院議員を辞職し、参院選に出馬した。その際には「3議席くらいを目標にするのなら議員バッジを外さないでやる方法を考える」と啖呵を切っていた。そこからすると3議席獲得は伸び悩んだともいえる。

野党第一党の立憲民主党は昨年の衆院選に続いて今回の参院選でも惨敗し、もはや野党リーダーの風格はみじんもない。野党第一党の座を目指す維新は自民党にすり寄る「与党の補完勢力」の様相を強めているが、東京や愛知、京都などで競り負け、大阪中心の地域政党から全国政党への脱皮に成功したとは言い難い。

日本政界は与党一色に染まる大政翼賛化が進むのか、それとも野党再編が進んで自公与党に対抗する強い野党第一党が出現するのか。野党再建が日本政界の立て直しの大きなポイントとなるだろう。

野党再建を担うリーダーとして私はれいわ新選組と山本太郎代表に引き続き期待する。一方で、今回の参院選がれいわ新選組に突きつけた課題も多いだろう。

まずはれいわ新選組の参院選の戦いを数字で評価してみよう。

れいわが旗揚げしたのは2019年参院選だった。山本太郎代表がたったひとりで旗揚げした新党はマスコミに黙殺されながらも旋風を起こし、いきなり228万票を獲得して2議席をもぎ取った。鮮烈なデビューだったといえるだろう。

しかし、その後は自公与党だけではなく立憲民主党や共産党など野党からもれいわへの風当たりは強まる。各党は自らの支持基盤を崩される恐れを新興勢力に感じ、選挙や国会の現場でれいわを冷淡に扱ったのだった。

2021年衆院選でれいわの全国各ブロックの比例得票を合わせると221万票。そして今回の参院選は231万票。ほとんど横ばいなのだ。

れいわ支持層の熱量は極めて高い。しかし、支持層は横に広がっていない。その現実は直視するほかない。

山本太郎代表は「国会で与野党に舐められないように、れいわを一刻も早く中規模政党にしたい」と言い続けている。では、中規模政党とはどのようなイメージなのか。

以下は今回の参院選の各党の比例得票と比例議席の一覧である。自民党が一人勝ちだったことがよくわかるだろう。自民党と対抗すべき立憲民主党はもはや「野党第一党」と呼ぶに値する立場から転落し、維新と並ぶ中規模政党のひとつとしてしのぎを削っているという方が実情に即している。

維新と立憲と肩を並べる中規模政党の公明党は自民と連立を組む与党だ。

そこからすこし間を置いて、共産党と国民民主党。こちらは中規模政党のなかでも小さめの政党といえるだろう。共産党は立憲民主党との共闘を重視し、国民民主党は自民党へ急接近中だ。いずれも単独で戦うことへの限界を感じているからにほかならない。

その次のグループにつけるのがれいわ新選組だ。まだ中規模政党には遠い。共産党や国民民主党のようにどこにもすり寄らない独立した中規模政党として存在感を発揮するには、比例得票を2~3倍に増やし、公明党や維新、立憲に肩を並べる力を持つしかない。

今回の参院選で旗揚げした参政党が背後に迫っていることも見逃せない。れいわが上級国民に対する庶民の怒りをリベラルな立場から結集する「左派ポピュリズム」とすれば、参政党は庶民の不満を排外主義や歴史修正主義の立場から糾合することを目指す「右派ポピュリズム」といえるのではないか。

このような参院選を通じて、れいわ新選組の強みと弱みを分析したのが以下の表である。

強みは、山本代表のカリスマ性とサポーターと圧倒的な熱量だろう。そして大石あきこ衆院議員や積極財政の立案を担当した長谷川ういこ氏ら実力派女性陣の台頭である。さらにマスコミに取り上げてもらえない分、ネット戦略の巧みさは政界でも随一ではないか。

そしてもっとも重要なのは「誰一人見捨てない社会」を実現するための手段として「積極財政」を掲げていることである。立憲民主党や共産党は格差社会を批判しつつ、財務省と歩調をあわせて緊縮財政の立場をとっているため、つねに財源論の壁にぶちあたって大胆な財政出動を主張できてこなかった。一方、参政党など右派ポピュリズム政党は積極財政を唱えている。世界で主流となりつつある積極財政の旗を右派に奪われないためにも、れいわの台頭が不可欠だと私は思っている。

一方で、れいわの弱点は、組織力・資金力・議員数の圧倒的な不足であろう。その結果、熱烈なコア支持層を抱えながら横の広がりにかけているといえる。

この弱みを挽回する絶好のチャンスが来年春の統一地方選だ。この3年でれいわを強く支持した人々が各地で地方議員として政治参加すれば、れいわの足腰は一挙に強まるだろう。地方議員というプロの政治家が次々に誕生し、次のれいわの国政選挙を各地で全面的にサポートすれば、一気に横への広がりが進むのではないか。

来春の統一地方選で全国津々浦々にどのくらいの候補者を擁立できるか。何人くらいの熱烈なれいわ支持者たちが選挙へ立候補する決断をできるか。れいわ飛躍への鍵はこの点にかかっているのではないか。

そのうえで、野党共闘について最後に一言。

この先3年間は国政選挙が予定されていない。野党共闘を維持するのはとても難しく、維新や国民民主党ばかりか、立憲民主党のなかからも自公与党へすり寄る動きが出てくるだろう(現に連合は自民党に急接近している)。そのなかで野党共闘というものはもはや成立しないのではないか。

野党第一党の立憲民主党や、老舗政党で組織力のある共産党と違って、れいわのように鮮明な政治理念を掲げ熱烈な支持層を抱える新興勢力にとって、野党共闘の枠組みに押し止められるのは、党勢拡大の大きな障害となろう。野党共闘はほどほどにとどめ、立憲や共産に遠慮することなく、統一地方選に向けて党勢拡大を最優先に独自路線をさらに強めていくことが、れいわにとっては得策であるし、野党再建を促す効果も高いと私は思っている。

れいわ新選組の課題と希望についてはユーチューブで7月11日夜にライブ配信したので、そちらもご覧ください。

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