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立憲民主党の議員各位へ〜彼女の肉声を直接聞いてもなお懲罰に賛成するのですか?与党と本気で闘争しない野党に奮起を促すれいわ新選組の櫛渕万里演説の全文

れいわ新選組の櫛渕万里衆院議員に対する懲罰動議が5月25日の衆院本会議で可決される直前、彼女が登壇して「身上弁明」した内容を、国内マスコミはほとんど報道しなかった。

自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の与野党5党が櫛渕氏への懲罰動議を可決したこと自体に多くの国民は気づかず、仮に短いニュースでその事実を知ったとしても懲罰の理由にまで関心を示さず、ましてやわざわざネット検索して櫛渕氏の弁明を確かめようとする人はほんのわずかだったろう。

衆院議席(定数465)の95%を占める与野党5党が寄ってたかって、衆院議員3人の弱小政党所属の議員に懲罰を加えるのは、国会が与党一色に染まって少数意見を排除する「大政翼賛体制」が近づく危機感を抱かせる重大な政治事案である。懲罰を受ける当事者の声に耳を傾け、それを広く報道し、この懲罰の是非を社会全体で考える機会を提起しなかったのは、マスコミが権力監視の責務を放棄したといっていい。

この問題をめぐる私の見解はすでに『れいわ新選組・櫛渕万里議員の懲罰動議を野党第一党として主導した立憲民主党に、もはや「立憲」を名乗る資格はない』で示したが、櫛渕氏の訴えを丁寧に伝えなければならないと思っていた矢先、読者から櫛渕演説全文の文字起こしが届いた。

「メディアでほとんど報道されていないようなので、ユーチューブにアップされている動画から15分強の演説を文字に起こしました。題して『櫛渕万里の弁明』、国を憂える心情がほとばしる、すばらしい内容です。ぜひご一読ください」としたうえ、なるべく多くの人に拡散してほしいという趣旨が添えてある。(全文は→こちら

私なりに櫛渕演説の重要部分を引用して解説してみよう。

まず5月18日の壇上における行為について議場の皆様にお詫びをいたします。国権の最高機関である国会において言論の府として議会制民主主義の根幹を支える院の秩序とルール、これは本来尊重されるべきものであることに深く同意いたします。私としても考えに考え抜き、党の内部でも真摯な議論を重ねた結果、政治が暴走するその危機に対して、已むに已まれず今回の行動に至りました。

櫛渕氏は「与党も野党も茶番!」というプラカードを壇上で掲げた行為について、冒頭から「お詫び」した。軽い方から戒告・陳謝・登院停止・除名という4段階の処分が想定されるが、「陳謝」の姿勢をみせない限り、参院議員を除名されたガーシー氏のようになりかねない。そこで「お詫び」したうえで、この機会を利用して自らの主張を衆院本会議で開陳するという対抗手段に出たのである。

院の秩序とルールは尊重されるべきものです。しかし国会における秩序とルールを守ることと国民の代表として求められている行動との間に大きな齟齬が生じた場合にどうすべきか、今回の私の悩みはすべての国会議員に共通するものではないでしょうか。

続いて「国会の秩序とルールは尊重されるべき」という大前提を認めたうえで、「国会の多数の意見と国民の民意がかけ離れた場合に、ひとりの国会議員としてどう行動すべきか」と議場に向かって問いかけている。与党が委員会採決を強行する際に野党がプラカードを掲げて抗議した過去の事例を具体的に明示し、「ここで胸に手をあてて考えてみてほしいのです。あの時ほどの熱い思いで、いま国民のために戦っているのか」と、野党議員各位に訴えかけるのだ。

そのうえで、彼女が訴えた以下の部分は、櫛渕演説のなかで私がもっとも共感した部分である。

もちろん国会は言論の府です。しかし委員会や本会議で反対を討論する正攻法だけでは、どうやっても止めることができない。そうした時にどうすればいいんでしょうか。選挙で勝って議席を増やし、与野党の議席が拮抗して抗えるようになるまでは、どんなに国民にとってひどい法律が作られてもしかたがないと諦めるしかないのでしょうか。

私は『れいわ新選組・櫛渕万里議員の懲罰動議を野党第一党として主導した立憲民主党に、もはや「立憲」を名乗る資格はない』でも示したとおり、国会でプラカードを掲げるようなれいわの抗議活動を「国会戦術」として認める一方、これら抗議活動は「目的」ではなく、あくまでも「戦術」であり、党勢拡大につながらないのなら戦術を変更したほうがよいと考えている。

だがその前提として「正攻法だけではどうやっても止めることができない」国会の歪んだ実態を前に「選挙で勝って議席を増やし、与野党の議席が拮抗して抗えるようになるまで」諦めて傍観しているわけにはいかないという櫛渕氏の訴えに強く共感するし、これこそが野党議員が持つべき最も重要な覚悟だと確信している。立憲民主党はこの覚悟に欠けているからこそ低迷し、歪んだ自公与党の長期政権の継続を許し、挙げ句の果ては維新に野党第一党の座を奪われようとしているのだ。

立憲民主党が、その覚悟を壇上でプラカードを掲げて表現した櫛渕議員を「国会の秩序を乱しルールに反した」として懲罰することに加担したのは、自分たちにその覚悟が欠けていることを指摘され、あまりに図星だったため、拳を振り上げるしかなかったのだろう。実に醜悪な姿だ。恥ずかしくないのだろうか。

櫛渕氏の演説は続く。岸田政権下で進む安保政策の大転換や防衛費の大幅増、原発運転期間の延長、マイナンバーカード取得の事実上の強制、外国人の強制送還、医療保険料や雇用保険料の負担増などを具体的にあげ、少数政党として予算の組み換え動議提出や反対討論で徹底的に抗ってきたものの食い止めることができず、「たった1人の小さな力でも諦めずに国民の生活を、命を守るために出来ることは何かと考え抜いて、已むに已まれず行動に及んだ」と弁明した。そのうえで以下のように野党各位に訴えたのである。

私は改めて今一度、勇気を出して議員の皆さんに呼びかけます。闘う野党を復活させ、苦しんでいる国民の生活と命を救おうではありませんか。日本の民主主義を正常化させて政治の暴走を止めようではありませんか。闘う野党の復活、それ以外に政治の暴走、国家の衰退を止める手段はありません。

そして演説をこう締めくくるのだ。

最後にケネディ大統領の言葉を紹介します。「われわれは真に勇気のある人間であったか。敵に対抗する勇気の他に、必要な場合は、自己の仲間に対しても抵抗するだけの勇気を持っていたか」

私の壇上の行動になぜ連帯すべき野党まで批判したのか、と問われることがあります。(中略)野党が国民の信頼に十分応えていないと判断した時には、仲間に対して抵抗することこそ自己に与えられた役割ではないでしょうか。議会のルールや秩序も重要ですが、本当に応えるべき国民の信託であるとの意識を呼び覚まし、戦う野党の復活、そのことに少しでも繋がるものではないか、こうした考えに基づく行動でありました。

櫛渕演説の主題が「不甲斐ない立憲民主党に奮起を促す」ことにあるのは誰の目にも明らかだ。これを真摯に受け止めず、自公与党に同調して懲罰で切り返すとしたら、それは「立憲終焉」の時である。

泉健太代表ら執行部は一度決めた決定を覆せないだろう。衆院懲罰委員会で櫛渕議員の処分が決まった後、いまいちど衆院本会議で採決される。その時に造反して反対に転じる立憲議員が一人でも多く現れることを期待したい。それがゼロならば、この党は本当に終わりだ。


鮫島タイムスYouTube日曜恒例の『ダメダメTOP10』にも櫛渕議員への懲罰動議がランクイン!ぜひご覧ください。

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