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自民党の「立憲民主党外し」強まる〜国民民主党の玉木代表の入閣案浮上、茂木幹事長は維新の馬場代表と会談

岸田文雄首相が旧統一教会の被害者救済法案を契機に立憲民主党に急接近したことに反発して、自民党内で「立憲外し」が加速している。

宏池会(岸田派)や財務省の一部で消費税増税を旗印に立憲最高顧問である野田佳彦元首相を首班に担ぐ大連立構想まで浮上したことで、最大派閥・清和会(安倍派)や非主流派の菅義偉前首相らにとどまらず、ポスト岸田を狙う茂木敏充幹事長ら党執行部に加えて連立相手の公明党にも警戒感が広がった。

岸田首相は自民党内に広がる反発を受け、11月28日には麻生太郎副総裁、茂木氏、菅氏と相次いで会談。立憲との協調路線を修正し、自民党内の融和を最優先することを確認した。

与野党双方から疑惑閣僚の責任を追及する声が噴出し、3閣僚の辞任ドミノに追い込まれた危機的状況から抜け出して政権を延命させるには、党内融和に転じることが欠かせないと判断したとみられる。

自民党による「立憲外し」は日本維新の会や国民民主党への接近というかたちでさっそく表面化している。

自民党の茂木幹事長らは12月2日夜、日本維新の会の馬場代表らと東京都内で会談し、被害者救済法案の早期成立への協力を求めた。

維新は今夏の参院選まで野党第一党の座を奪うことを目指して「打倒・立憲」を掲げてきた。安倍政権で官房長官を務めた菅氏と強力なパイプを持ち、「自公の補完勢力」として野党分断工作に使われてきたともいえる。

しかし岸田政権発足で菅氏が失脚したうえ、岸田首相や麻生氏が菅氏への警戒感から維新を遠ざけて代わりに連合や国民民主党に接近したことから、政権中枢へのコネクションが弱まった。今夏の参院選で躍進したものの全国政党への脱皮は進まず、松井一郎代表は政界引退を表明。後継の馬場伸幸代表は立憲と和解して国会での共闘に転じた。

今国会では立憲に歩調をあわせて被害者救済法案の自公立維4党協議に加わっていたものの、存在感は薄れ、一時の勢いを失っている。

岸田官邸と立憲が主導する自公立維4党協議に自公与党内で警戒感が強まると、茂木氏は立憲と袂を分かった国民民主党を引き込んで自公国3党協議を並行して立ち上げ、立憲を牽制。それにあわせて立憲と維新の分断工作にも乗り出したとみていい。

12日2日夜に行われた自民と維新の両執行部の会談は約3時間行われ、自民党からは茂木幹事長のほか梶山弘志幹事長代行と高木毅国対委員長、維新からは馬場代表のほか藤田文武幹事長、遠藤敬国対委員長が参加。茂木氏は会談後、記者団に「日本維新の会の意見も率直に聞きたいと思っていた。いい意見交換ができた」と語ったと報道されている。

茂木氏が国会終盤に立憲を外して維新と会談したのは「立憲外し宣言」と受け止めて良いだろう。

もうひとつ注目すべき報道があった。自民党が国民民主党の玉木雄一郎代表を入閣させ、国民民主党を連立政権に加えることを検討しているというものだ(時事通信参照)。

国民民主党の玉木氏は岸田首相や麻生氏と連絡をとりあい、新年度当初予算に賛成するなど「与党入り」をめざす姿勢を鮮明にしていた。今夏の参院選後は岸田首相と立憲が急接近して埋没気味だったが、自民党内で岸田官邸と立憲の急接近に危機感が高まったことで、立憲を牽制する存在として再び浮上してきたといっていい。今国会提出の大型補正予算にも賛成し、与党入りに向けて強くアピールしていた。

岸田首相や麻生氏にとって国民民主党の連立政権入りは、閣僚辞任ドミノを食い止めるために年末年始に内閣改造人事に踏み切る口実となる。立憲への接近によってぐらついた政権基盤を立て直す狙いもあろう。相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有や防衛費倍増に対して慎重意見がくすぶる公明党を牽制する思惑もあるに違いない。

もっとも連立政権での影響力低下を招く恐れのある公明党が反発するのは必至だ。本気で玉木氏入閣を断行するのか、立憲や公明を牽制するカードとしてちらつかせるだけにとどめるのか。岸田首相はこの報道に対して「全く知らないし、私自身考えてはいない」と記者団に語った。まだ様子見というところだろう。

とはいえ、岸田首相が立憲との協調路線から舵を切ったのは間違いない。12月10日に会期末を迎える臨時国会中に被害者救済法案の成立を目指して野党側との修正協議を行うものの、立憲の修正要求が大きく受け入れられる可能性は低く、創価学会への波及を恐れる公明党の意向を踏まえて「骨抜き」法案が成立することになるだろう。

次に問われるのは立憲だ。「骨抜き」を承知で被害者救済法案に賛成するのか、それとも岸田首相との連携を封印して反対に回るのか。共産党やれいわ新選組との信頼関係は大きく崩れており、野党共闘に戻るのは簡単ではない。表向きはいろんな注文をつけながら、じわりと自公与党へ歩み寄っていく可能性は十分にある。

立憲も国民民主党や維新の自民接近に引きずられる形で自公与党に同調すれば、与党一色の大政翼賛体制の足音が聞こえてくる。立憲が維新や国民民主党に続いて「反撃能力」容認を検討しているとも報道された(日経新聞参照)。国会いよいよ危うしである。


鮫島タイムスのYouTubeで「ポスト岸田 大胆予想 本命・対抗・大穴発表」を公開しました。ぜひご覧ください。

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