政治を斬る!

維新に駆け込むか、自民と連携するかーー凋落する立憲民主党の議員たちに突きつけられた究極の二者拓一!泉おろしが実現した時、個々の議員は決断を迫られる

立憲民主党の小沢一郎氏や小川淳也氏ら衆院議員の過半数が次の衆院選で「野党一本化」を求める有志の会に参加し、日本維新の会や共産党などとの候補者調整を進めるように泉健太執行部に迫っている。このまま解散総選挙に突入すれば立憲惨敗(自らの落選)は避けられないという危機感が高まったためだ。

私は『小沢一郎や小川淳也が「立憲単独」に反旗を翻し「泉おろし」の狼煙!「野党一本化」を訴えるが…維新へ合流なら希望の党の二の舞に』で自らの見解を示した。

簡潔に整理すると、①野党第一党から転落することが有力視される落ち目の立憲が、野党第一党を奪うことを最優先目標に掲げて躍進している維新に一本化を求めても、実現する可能性は限りなくゼロに近く、どうしても一本化を目指すのなら、2017年の希望の党騒動のように、維新に合流するしかない、②「有志の会」に参加する立憲議員の多くは、政権交代を実現することよりも、自分の選挙区で維新や共産・わいわに候補擁立を避けてもらうという自己保身しか考えていない、③立憲のまま維新と候補者を一本化するのは非現実的であり、「有志の会」の動きに政治的意味があるとすれば、無理難題を泉健太代表に迫って衆院選前に「泉おろし」を実現し、党首の顔をすげ替えて立憲の支持率を回復させることであろうーーという内容だ。

きょうはこの分析をさらに深めていこう。

自民党が安定政権を維持しているのは、野党分断工作に成功しているからである。立憲と維新が野党第一党をめぐって張り合っている限り、自民党が総選挙に大敗して下野することはないだろう。与野党一騎打ちの小選挙区制はそういうものだ。

このため、自民党は立憲と維新が野党第一党争いにしのぎを削る現状が壊れることを望んでいない。いま解散総選挙を断行すれば、維新がさらに躍進し、立憲が惨敗して、下手をすれば解党に追い込まれ、立憲議員の多くが維新になだれこみ、今の立憲よりもはるかに強力な野党第一党(維新)が誕生してしまう。わざわざそれを後押しするために解散総選挙を行うのは、政権与党としては愚策中の愚策である。

だが、維新を仲間外れにして、自民が立憲と手を結ぶ状況が見えてこれば、話は別だ。私は、自民が連立を組むとすれば、維新よりも立憲のほうがはるかに可能性が高いとみている。

維新が自民と連立を組むという見方に対して、私が懐疑的な見方を述べよう。

維新はイデオロギーや政策よりも選挙で勝つことを重視する政党である。自民党に取り込まれるかたちで連立すれば、瞬く間に維新への期待感がしぼむことは百も承知だ。

維新が憲法改正や安全保障政策で自民よりも過激な提案をしているのは、政治的イデオロギーに基づくものというよりは、護憲派を抱える立憲との差異をアピールすることで、政権批判票を立憲から引き込むための選挙戦略である。自民党とは憲法改正や安全保障政策で対立軸をつくらない代わりに、身を切る改革(行政改革)や無駄遣い(歳出削減)では自公政権に徹底抗戦するのが、選挙戦略としてもっとも効果的と分析しているのである。維新という政党は、選挙で勝つことが何よりも優先する。ある意味で非常にわかりやすい政党なのだ。

一方、立憲は「与野党一騎打ち」の小選挙区・二大政党政治のなかで、反自民票の受け皿となって当選することだけを目的として集結した寄り合い所帯であり、野党第一党から転落すれば、立憲議員たちが同じ屋根の下にいる意味はただちに失われる。

ここで立憲議員たちが取るべき道は二つだ。

ひとつは、野党第一党へ勢いづく維新に駆け込んで、与野党一騎打ちの構図のなかで野党の立ち位置を維持し、これまでとおり「反自民票の受け皿」として自らの当選を目指すことである。

小沢氏や小川氏らが立ち上げた「有志の会」のメンバーの多くは、この立場であろう。つまり「野党一本化」で念頭に置いているのは、共産・れいわではなく維新なのだ。

いくら共産・れいわと一本化を実現したところで、維新が全選挙区に候補者を擁立すれば、野党一本化の効果は非常に薄れる。選挙地盤が弱いにもかかわらず、野党第一党というだけで反自民票を独り占めすることによって辛うじて当選してきた立憲議員たちは「自公与党vs維新vs立憲・共産・れいわ」の三つ巴の戦いにはとても勝ち残れない。

もうひとつは、維新と決別し、自民党との連携をめざす道である。

この道は平坦ではない。自民党と選挙協力して自分の選挙区で候補者を下ろしてもらうことはほぼ不可能だ。自民との連携を念頭に置く以上、共産・れいわと共闘するわけにはいかない。まずは「自公与党vs維新vs立憲(vs共産・れいわ)」の三つ巴(四つ巴)の選挙戦を、自力で勝ち抜く覚悟が必要だ。

このような選挙地盤を築いているのは、立憲では野田佳彦元首相や岡田克也幹事長、安住淳国対委員長らに限られてくる。枝野幸男前代表でさえ苦戦は免れない。

彼らが選挙地盤が弱くて維新との一本化を目指す多数の衆院議員を見限り、自民との連携を視野に自力で衆院選を勝ち抜く「コア立憲民主党」をつくる可能性は十分にある。そのリーダーは、野田佳彦元首相であろう。

野田元首相は民主党政権時代に野党自民党を率いた宏池会の谷垣禎一総裁と消費税増税で合意した筋金入りの財政再建・増税派だ。岸田首相が率いる宏池会とも財務省を介してパイプがある。岸田首相も「野田立憲」が相手なら防衛増税や少子化対策の財源確保、さらには消費税増税でさえも合意点を探る道がみえてくる。

泉代表は維新との候補者一本化を目指す小沢氏らからも、岸田首相との連携を視野に入れる野田氏らからも、すでに見放されているといっていい。つまり、「泉おろし」が実現した時、立憲の個々の議員はどちらを選択するかを迫られることになるだろう。どっちつかずに「コア立憲民主党」に残留しても、おそらく比例復活にもほどとおい惨めな落選が待っているだけだ。

泉代表は4月の衆参補選全敗を受けて、次の衆院選で150議席を下回れば辞任する意向を表明した。立憲の現有議席は96であり、このハードルは高い。衆院選後は泉体制が続く可能性はかなり低いと言える。

岸田首相が9月解散を決断し、立憲が泉代表のまま衆院選に突入すれば、維新との一本化をめざす多くの議員はあえなく落選するだろう。逆風の中で勝ち残った立憲議員の多くは「コア立憲民主党」として、後継代表に野田元首相を選出し、野党第一党にのしあがった維新とは明確に決別して、岸田政権との連携に動く可能性が高いだろう。

一方、衆院選前に「泉代表では戦えない」という声があがって泉代表が引きずろ下される可能性もある。この場合、立憲代表選は「維新への合流を視野に連携を進める」か、「衆院選後の岸田政権との連携を視野に入れながら、立憲単独で衆院選に臨むか」が対立軸となり、立憲は分裂含みとなるだろう。

いずれにせよ、このまま衆院選に突入すれば、立憲議員の多くはあっけなく落選する。彼らはこの先、自分自身の生き残りをかけて、なりふり構わず、もがき続け、何でもありの政局が展開されるだろう。

小沢氏や小川氏らが立ち上げた「有志の会」はその序章に過ぎない。だが、それはどう転んでもイバラの道だ。

維新の台頭で野党第一党からの転落が有力視される立憲。9月解散を視野に、いよいよ党内対立が激化してきました。ユーチューブ動画でも立憲のこれからを解説しました。ぜひご覧ください。

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