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小沢一郎や小川淳也が「立憲単独」に反旗を翻し「泉おろし」の狼煙!「野党一本化」を訴えるが…維新へ合流なら希望の党の二の舞に

立憲民主党の小沢一郎氏らが「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を設立した。「立憲単独で政権交代を果たすことは困難」として「自公連立政権では日本の存立が危ういと考えるすべての勢力が結集すべき」と主張。「過去のさまざまな行き掛かりや好き嫌いの感情などは、日本再興の大義の前に、一切捨て去ることを互いに呼びかけたい」と訴えている。

呼びかけ人は、小沢氏のほか、泉執行部を離れた小川淳也氏、野田佳彦元首相に近い手塚仁雄氏、かつて社民党に身を置いた阿部知子氏ら12人で、党内の各グループを横断する顔ぶれだ。立憲所属の衆院議員(96人)の過半数の53人が参加。野党共闘が崩壊するなかで6月解散風が吹き荒れ、「このまま総選挙に突入すれば落選してしまう」という危機感が党内で急速に高まったことを映し出している。

泉健太代表は昨年夏の参院選惨敗後、共産党やれいわ新選組との野党共闘を見限り、日本維新の会との共闘へ舵を切った。国会対応に加え、安全保障政策でも維新に歩み寄り、維新との関係強化を最優先する党運営を続けてきた。ところが維新は国会での共闘には応じたものの、選挙協力は断固拒否。立憲は維新に突き放される形で決別し、終盤国会では一転して批判合戦を繰り広げた。

泉代表は維新とも共産とも選挙協力はせず、立憲単独で解散総選挙に臨む考えを表明。岡田克也幹事長ら執行部に加え、枝野幸男前代表も「単独路線」を支持している。枝野氏にいたっては前回衆院選で野党の共通公約として「時限的な消費税減税」を掲げたことは間違いだったと公言している。

これに対し、小沢氏や小川氏らは「単独路線」を全面否定し、政権交代を実現するには「野党共闘による候補者一本化」が不可欠だと強く迫っている。しかし、参加した議員たちの本音は「与野党一騎打ちの小選挙区で、立憲、維新、国民、共産、れいわの候補が乱立すれば、自公候補には勝てない」ため、「せめて自分の選挙区だけは維新も共産もれいわも候補者を擁立しないで」ということだろう。政権交代どころか自己保身しか考えていないのだ。

立憲単独か、野党共闘か。これは野党第一党としての根幹的な路線対立である。衆院議員の過半数が泉執行部の単独路線に反旗を翻した格好で、「泉おろし」の狼煙とも受け止められる。

だが、いまさら野党一本化などできるのだろうか。これはいつか来た道ではないのか…。

野党第一党の立憲が圧倒的に強く、「政権交代」の旗を掲げ、他の少数野党を束ねるリーダーとして野党一本化を進めるのなら、十分に実現可能であろう。その場合、野党第一党が他の少数政党に政策面でも選挙区調整でも大幅な譲歩を重ねることが不可欠なのは言うまでもない(2021年衆院選の野党共闘は、立憲が共産やれいわに選挙区調整で一方的に譲歩を迫ったことでぎくしゃくした)。

しかし現状は、維新が政党支持率で立憲を上回り、4月の統一地方選や衆参補選でも躍進し、次の衆院選で野党第一党の座を奪うことが有力視されている。維新の馬場伸幸代表は「打倒自民」よりも「打倒立憲」を一貫として掲げ、まずは野党第一党を奪取する目標を鮮明にしている。その選挙戦略が功を奏して維新は躍進を続けているといってよい。

維新が野党一本化を要請するのならまだしも、落ち目の立憲が野党一本化を求めたところで、勢いづく維新が応じる可能性は限りなくゼロに近い。立憲がいまさら下手に出たところで、維新に応じるメリットはない。

維新との一本化が実現するとすれば、立憲が解党してそのまま維新に吸収されるケースだ。まさに2017年に野党第一党の民進党(前原誠司代表)が、小池百合子・東京都知事が旗揚げした希望の党に合流したパターンである。

当時は小池氏が枝野氏らリベラル色の強い民進議員を「排除」したため、追い込まれた枝野氏がひとりで旗揚げしたのが立憲民主党だった。総選挙では「第二自民党」と批判された希望の党よりも、リベラル色の強い立憲民主党が支持を集め、予想に反して野党第一党に躍進したのだった。

その後、希望の党は消滅し、多くの議員が立憲へ合流して、いまの立憲に至った。その立憲に挑んできたのが大阪発祥の維新である。

維新が立憲との選挙協力を断固拒否している以上、それでも候補者を一本化するには、立憲が維新へ合流するしかない。民進党議員たちが自分の議席死守のためになりふり構わず希望の党へ駆け込んだ2017年衆院選の再現しか道はないのだ。小沢氏や小川氏らは、「希望の党騒動」をどう総括しているのだろうか。

当時の前原代表が「このまま民進党で総選挙に突入しても勝てないから希望の党へ合流する」と決断したことと、いま「このまま立憲で総選挙に突入しても勝てないから維新へ合流する」というのは、同じことだ。小選挙区制である以上は仕方がないと考えるのなら、当時の前原代表の判断は正しかったと認めることになる。

維新への合流を否定しつつ、実現不可能な野党一本化を泉執行部に迫るとしたら、真の狙いは野党一本化ではなく「泉おろし」の政局を仕掛けることにあるとみたほうがよい。小沢氏の主眼はそちらにあるだろう。

やっかいなのは「このままでは小選挙区で勝てない」という自己保身から「有志の会」に駆け込んだ立憲の多くの衆院議員たちである。

前回衆院選で共産やれいわに選挙区を譲ってもらって何とか当選しながら、立憲がその後、共産やれいわに配慮を欠く態度を重ねてきたことをどう考えているのか。れいわの櫛渕万里衆院議員の懲罰に立憲も賛成したという事実は消えない。

いまさら一方的に「過去のさまざまな行き掛かりや好き嫌いの感情などは、日本再興の大義の前に、一切捨て去ることを互いに呼びかけたい」というのは、あまりに身勝手なご都合主義だ。立憲に足蹴にされた側はその痛みを忘れることはないだろう。彼らもそれは自覚しているはずだ。

つまり「有志の会」に参加した議員たちは、共産やれいわではなく、台頭する維新と一本化したいだけである。自らの議席を守るために、希望の党騒動を忘れ、今度は維新に接近する姿が有権者にどうみられているか。そこへの想像力を欠く姿は、厚顔無恥としかいいようがない。

私は「有志の会」の動きについて、参加者たちがこれまでの野党間の確執を軽く見て、野党一本化を実現できると本気で考えているとしたら、あまりに稚拙で唖然とするばかりだ。野党一本化はあくまでも旗印にすぎず、真の狙いが泉代表を引きずり降ろす党内政局の仕掛けにあるのなら、それなりに注目していきたいと思う。

さて、どちらか。



 

 

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