低迷が続く中道改革連合が、いよいよ「分裂ライン」を踏み越えるかもしれない。引き金は、まさかの皇室典範改正だ。
自民党は今国会で、女性皇族が結婚後も皇室に残れる制度に加え、「旧皇族の男系男子を養子として皇籍復帰させる案」の実現を目指している。与党内ではおおむね足並みが揃い、維新も前向きだ。
その中で最大の焦点として浮上してきたのが、中道改革連合の対応である。
小川淳也代表率いる執行部は「容認」に傾く一方、立憲民主党出身者を中心に強い反発が噴出。皇室問題が、中道内部にくすぶってきた「公明系vs立憲系」の対立を一気に表面化させ始めた。
皇室典範改正の議論は、大きく二つある。
ひとつは、女性皇族が結婚後も皇室に残る制度だ。
現在の皇族数は16人。男性5人、女性11人である。女性皇族は結婚すると皇籍を離脱するため、皇族数は減り続けている。
秋篠宮家の長女・真子さんが小室圭さんと結婚した際も、社会的議論が巻き起こった。今後、愛子さまや佳子さまが結婚すれば、さらに皇族数は減少する。公務の維持すら難しくなるとの危機感は、各党にほぼ共有されている。愛子さまや佳子さまが結婚をためらうことにもなりかねない。
このため、「女性皇族は結婚後も皇族として残る」という方向性には、与野党とも概ね賛成だ。
しかし、そこで次の問題が浮上する。
女性皇族の夫や子どもに皇族資格を認めるのか――。
ここになると、一気に意見が割れる。
その背景にあるのが、「男系男子による皇位継承」をどう維持するかという問題だ。
現在の皇位継承者は、秋篠宮さま、悠仁さま、常陸宮さま、の3人しかいない。しかも次世代を担う若い世代は悠仁さまのみである。
もし悠仁さまに男子が生まれなければ、現制度では皇位継承者はいずれ不在になる。
だが、自民党保守派には女性天皇・女系天皇への抵抗感が極めて強い。
そこで浮上しているのが、「旧皇族の男系男子を養子として皇室に復帰させる案」である。
戦後、新憲法と皇室典範施行に伴い、11宮家51人が皇籍離脱した。その子孫は民間人として生きてきた。そうした人々を皇族として復帰させ、将来的には皇位継承資格を持たせる可能性がある――それが今回の案だ。
自民党は、①女性皇族の婚姻後の皇族身分維持、②旧皇族男系男子の養子復帰の2点を柱とする改正案を、今国会で成立させたい考えだ。衆院では与党が4分の3近い議席を占め、参院でも事実上の過半数を確保している。数の上では成立可能である。
しかし、皇室制度は通常の法案とは違う。
憲法第1条は、天皇を「日本国民統合の象徴」「日本国民の総意に基づく」と定めている。野党の反対を押し切る強行採決は、できれば避けたい。できる限り超党派合意で成立させたい――それが政権側の本音だ。
そこで重要になったのが、中道改革連合だった。
国民民主、参政は比較的前向きである。最大の不確定要素が中道だった。
4月15日、皇族数確保をめぐる与野党協議が1年ぶりに再開されると、森英介衆院議長は「今国会中に皇室典範改正までこぎつけたい」と踏み込んだ。そして中道側に、「1カ月をめどに党の見解をまとめてほしい」と求めた。
これを受け、中道執行部は5月7日、旧皇族養子案を容認する方向の原案を党内会議に提示した。
背景には現実的な政治判断がある。
小川代表自身は、もともと女性天皇・女系天皇に比較的前向きな立場だ。心情的には旧皇族養子案に違和感を持っていても不思議ではない。
しかし、公明系は賛成に傾いている。ここで反対に回れば、「何でも反対」の野党という批判を浴びかねない。さらに将来の連立入りや政権交代構想にも悪影響が及ぶ。
結果として、小川執行部は「苦渋の容認」に向かったとみられる。
だが、それが党内に火をつけた。
立憲民主党創設者の枝野幸男氏は、「ウソですよね?間違いですよね?」とXに投稿。「万が一にも、天皇制を破壊しかねない旧皇族養子案を認めるなら、お付き合いはしきません」と強く反発した。
西村智奈美副代表も、「少なくとも私は『容認』とは異なる意見だ」と不満を表明。立憲の蓮舫参院議員も「私も戸惑っています」と投稿した。
立憲系議員にとっては、「男系男子維持」を優先する旧皇族養子案よりも、女性天皇・女系天皇を認める方が自然だという意識が強い。
旧皇族養子案は、むしろ将来の女性・女系天皇への道を閉ざす――そうした危機感が広がっているのである。
もともと中道改革連合は、立憲系と公明系の“同床異夢”を抱えていた。
総選挙で立憲系は大敗。一方、公明系は比例優遇で全員当選した。立憲側には「安保や原発で譲歩したうえ、選挙でも公明が優遇された」という不満が根強い。
そこへ皇室問題が重なった。
もし今国会で採決になれば、衆院の中道は賛成、参院立憲は反対――そんな事態すらあり得る。
さらに枝野氏ら落選組を中心に離党論が広がれば、中道は再び分裂局面に突入しかねない。
焦点は公明党だ。
公明はこれまで、「中道を失敗させない」ことを優先してきた。代表も幹事長も立憲系に譲り、融和を重視してきた。
しかし、公明の最終目標は政権復帰である。
国家体制の根幹である皇室制度改革で反対に回れば、将来の連立復帰に悪影響が出かねない。
中道の結束を守るのか。
将来の政権復帰を優先するのか。
皇室典範改正は、いまや単なる制度論ではない。
後半国会の最大の政局テーマとして、「中道分裂」の導火線になり始めている。