政治を斬る!

自民党内で強まる「アンチ維新」の風〜孤立したトップ同士の危うい自維連立の行方

自民党内で高市政権への不満がくすぶる中、連立パートナーである日本維新の会への風当たりが急速に強まっている。後半国会の最大の焦点とされるのは、連立合意の柱である衆院定数削減だ。しかし、その実現に向けた自民党内の熱量は驚くほど低い。表向きは高市首相の高い支持率に支えられているものの、水面下では「維新を攻めることで包囲網を広げる」という力学が働き始めている。さらに、国民民主党を加えた連立拡大論まで再燃し、維新の立場を揺さぶっている。

高市首相と維新の吉村代表は党首会談で、①衆院定数1割削減、②副首都構想、③日本国旗損壊罪の3法案について今国会での成立を目指すことで一致した。いずれも維新にとっては譲れない看板政策だ。定数削減は「身を切る改革」の象徴であり、副首都構想は大阪への権限と財源集中を狙う悲願である。そして国旗損壊罪は、維新が保守層にアピールするためのカードでもある。

ところが、このうち国旗損壊罪に対し、自民党内から異論が噴出した。保守派の代表格である西田昌司参院議員が反対姿勢を示したのである。高市首相と思想的に近いはずの西田氏がなぜ反対するのか。その理由はイデオロギーではなく、極めて現実的だ。京都選挙区で維新候補と激しく争った経験から、「維新の政策には乗れない」という選挙上の論理が優先されているのである。関西では維新は自民の最大の競争相手であり、この対立構造がそのまま国政にも持ち込まれている。

実際、自民党内では「アンチ維新」の空気が広がりつつある。2月の衆院選で維新は全国87選挙区に候補を擁立し、自民と正面衝突したが、結果は20勝67敗と惨敗だった。勝利の大半は大阪に集中し、関西以外ではほぼ壊滅状態だった。この結果は、維新が全国政党としての拡張に失敗し、「大阪ローカル政党」へと回帰せざるを得ない現実を浮き彫りにした。

こうした状況を踏まえ、維新は戦略転換を模索している。自民党との選挙協力に踏み切り、関西以外では自民候補を支援することで連立関係を強化しようとしているのだ。有権者にとって分かりにくい「与党対決」を避ける狙いもあるが、本音は連立から排除されるリスクへの危機感だろう。支持率が伸び悩む中で、国政での影響力を維持するには自民との関係維持が不可欠になっている。

その背景には、もう一つの火種がある。国民民主党の連立入りをめぐる動きだ。かつて自民と維新をつないできたのは菅義偉元首相だったが、政界を引退してその影響力は低下した。一方、自民と国民民主を結ぶパイプは麻生太郎元首相であり、党内の主導権争いが「維新か国民民主か」という連立競争として表面化している。

高市首相は麻生氏の影響力を排除するため、維新との結束を強めてきた。しかし麻生氏側は国民民主の連立入りを模索し、巻き返しを図る。消費税減税をめぐる維新と国民民主の対立は、その代理戦争の側面を帯びている。維新がここにきて自民との選挙協力に傾くのは、この政局における生存戦略と見るべきだ。

さらに、維新内部にも不安定要因がある。吉村代表が大阪都構想をめぐって党内で孤立を深めている点だ。過去に住民投票で否決された構想を再び掲げたことや、知事辞任を伴う政治判断に対し、党内から強い反発が出ている。党内基盤が揺らぐ中で、吉村氏は国政復帰の道を模索し始めているとの見方もある。

一方、高市首相もまた自民党内で孤立を深めている。つまり現在の連立は、「党内で孤立するトップ同士」が支え合う構図になっている。衆院の圧倒的多数という安定した数字とは裏腹に、その内実は極めて脆弱だ。

今後の焦点は内閣改造だろう。高市首相は維新からの入閣を強く望んでおり、吉村氏本人の起用も取り沙汰されている。もし実現すれば、連立の結束は一気に強まる可能性がある一方、自民党内の反発はさらに激しくなるだろう。

維新を軸にするのか、それとも国民民主に軸足を移すのか。高市政権の進路は、単なる政策選択ではなく、自民党内の権力闘争と直結している。孤独なトップ同士が手を組むこの政権が、どこまで持続可能なのか。その行方は、次の政局の大きな分岐点となりそうだ。