政治を斬る!

高市首相がいま投げ出したら…ポスト高市は誰に?

高市政権は長期化する――。永田町では、つい最近までそれが半ば既定路線のように語られていた。

衆院選では過去最多の316議席を確保し、参院でも過半数を回復。内閣支持率は発足半年としては異例の60〜70%台を維持している。次の衆院選は限りなく4年先、参院選も2年後。自民党総裁選までは1年半ある。数字だけを見れば、盤石そのものだ。

だが、その「安定」の裏側で、異様な空気が広がり始めている。ポスト高市レースが、すでに動き出しているのだ。

本来ならばありえない現象である。これだけの政治基盤と高支持率を誇る現職総理に対し、「次」を探る動きが表に出ること自体、政権の内実が不安定であることを物語っている。

理由は明確だ。高市首相には党内基盤がない。

小泉政権や安倍政権は、いずれも強固な派閥基盤に支えられていた。しかし高市氏は、特定派閥の絶対的な支援を持たないまま政権に就いた。とりわけ麻生太郎元首相との関係悪化は深刻だ。1月の解散判断、消費税減税、衆院議長への棚上げ人事の打診、さらには国民民主党との関係をめぐって対立が積み重なり、修復は容易ではないとみられている。

加えて、参院自民党の動きも不穏だ。実力者である石井準一参院幹事長が予算の年度内成立を阻んだ「参院の乱」は、高市政権にとって大きな火種となっている。衆院で圧勝しても、参院が不協和音を奏でれば政権運営は一気に難しくなる。

側近政治への不満も根強い。限られた側近に依存する体制は、党内の不信感を増幅させやすい。さらに財務省との対立、緊迫する国際情勢、そして本人が周囲に漏らしているとされる健康不安説。これらが重なり、「高市おろし」は難しくとも、「自ら投げ出すのではないか」という観測が現実味を帯びている。

この“もしも”に備え、各陣営はすでに動き始めている。

本来であれば最有力と目されるのが、前回総裁選2位の小泉進次郎防衛相だ。若さと知名度、そして将来性。しかしここにきて状況は一変した。自衛隊をめぐるトラブルが立て続けに発生し、対応の甘さが露呈。さらに三陸沖地震発生直後の高級焼肉会食が報じられ、世論の批判を浴びた。危機管理への疑問符は致命的であり、「三度目の敗北」を恐れる空気が広がる。出馬見送りすら現実味を帯びている。

対照的に評価を上げたのが林芳正総務相だ。同じ地震の局面で会食を即座に中止し、危機対応の差を印象づけた。ただし、林氏にも壁は厚い。旧安倍派や麻生派との距離、旧岸田派内の対立(岸田文雄前首相との微妙な関係)。出馬は可能でも、勝ち切る構図は見えにくい。

そこに割って入るのが小林鷹之政調会長、いわゆる“コバホーク”である。背後には参院のドン・石井準一、そして引退したとはいえ影響力を残す甘利明元幹事長の存在がある。甘利氏は麻生派重鎮だった。高市官邸と距離を置く麻生氏と小林氏をつなぐ役だ。

小林氏は財務省出身で減税に慎重な姿勢は、高市路線への対抗軸として明確だ。党内の「アンチ高市」の受け皿として急速に存在感を高めている。

さらに、忘れてはならないのが茂木敏充外相だ。過去2度の総裁選では振るわなかったが、総理への執念は衰えていない。トランプ政権との交渉経験を前面に打ち出し、「いま必要なのは外交力」と訴える構図は、国際情勢が不安定な局面では説得力を持つ。実際、最近の対米外交でも存在感を示しており、「緊急登板なら茂木」という見方は永田町で根強い。

こうして見ると、ポスト高市レースはすでに静かに始まっている。

小泉は失速、林は伸び悩み、小林は台頭、茂木は機をうかがう。そこに岸田再登板や木原稔官房長官や片山さつき財務相ら“ダークホース”も絡む可能性がある。

だが、そもそもの出発点を忘れてはならない。高市政権は、圧倒的な選挙勝利と高支持率を背景に誕生したはずだった。その政権が、わずか半年で「投げ出し」を前提に語られる。

この異常事態こそが、いまの日本政治の本質を映しているのではないか。