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自民に異変、なぜ勝てない?まさかの市長選4勝7敗

自民党に“見えにくい異変”が起きている。国政では依然として高い支持を維持しながら、地方選では勝てない――その矛盾が、4月19日に行われた各地の市長選で一気に露呈した。

全国で行われた18の市長選。このうち11選挙で自民党が推薦候補を擁立したが、結果はまさかの4勝7敗。しかも敗れた7人のうち6人が現職だった。地方選はしばしば政権崩壊の前兆となるが、今回の結果はその典型的な“地鳴り”といえる。

象徴的なのは、いずれも無所属新人に敗れた点だ。福岡県嘉麻市では4選を目指した現職が敗北したが、ここは麻生太郎副総裁の地元である。隣接する朝倉市でも現職が敗れ、千葉県東金市では森英介衆院議長(麻生派)の地盤で自民推薦候補が敗北した。いわば「麻生」「森」といった党内実力者の足元で、相次いで敗北が起きている。

この流れは4月だけではない。3月の石川県知事選では、再選を目指した現職の馳浩氏が敗れ、東京・清瀬市でも自民・公明推薦の現職が共産・社民系の無所属新人に敗れた。さらに練馬区長選でも、自民・維新・国民が支えた候補が無所属新人に敗北している。石川県は森喜朗元首相のお膝元、清瀬市は岸田文雄元首相の最側近である木原誠二・元選対委員長の地元だ。

では、なぜ自民党は勝てないのか。

まず確認すべきは、政権の人気そのものが崩れているわけではないという点だ。4月の世論調査では内閣支持率はおおむね6割前後を維持し、自民党の支持率も他党を大きく引き離している。野党が強いわけでもない。むしろ「自民一強・野党総崩れ」の構図は変わっていない。

それでも地方で敗れる。この理由は、従来の選挙の前提が崩れていることにある。

第一に、低投票率だ。かつて自民党は組織票を背景に、投票率が低いほど有利とされてきた。しかし現在は逆だ。組織の動員力が弱まり、支持層が投票に行かない一方、変化を求める無党派層は確実に投票する。その結果、低投票率でも自民が勝てないという逆転現象が起きている。

第二に、「政党への拒否感」である。今回の地方選で勝利した多くの候補は「完全無所属」を掲げている。自民党の看板はもはやプラスではなく、むしろマイナスに働くケースが増えているのだ。国政では消去法で自民が選ばれても、地方では「政党色を嫌う」空気が強まっている。

第三に、保守分裂だ。自民一強の状況が続く中で、党内の対立が表面化しやすくなっている。福岡では麻生系と武田系の対立が指摘されるなど、同じ保守票が分裂し、結果として無所属新人に漁夫の利を与える構図が生まれている。

そして第四に、「刷新」への渇望である。高市早苗首相の人気の源泉は、既存政治を壊す期待感にあった。長期にわたる安倍・菅・岸田政権の延長線上にある政治への倦怠感、財務省主導の政策への反発――そうしたマグマが「政界のガラガラポン」を求めている。

しかし現実の自民党はどうか。地方選では依然として多選の現職や高齢候補が前面に立ち、「古い政治」の象徴として見られてしまう。結果として、有権者は「自民党」ではなく「新しい個人」を選ぶ。組織より個人、政党より無所属という流れが、地方から加速しているのだ。

この現象は、単なる地方選の話では終わらない。

今後の国政日程を見れば、衆院選は遠く、参院選も2年先、自民党総裁選も来年秋だ。短期的に政局が大きく動く可能性は低い。しかし、その間に行われる地方選は違う。5月の新潟県知事選、9月の沖縄県知事選、そして来春の統一地方選――ここでの結果が、政権の空気を決定づける。

地方での連敗が続けば、「高市人気でも勝てない」という評価が定着する。そうなれば、党内での求心力にも影響が出るだろう。

逆に言えば、地方選は政権にとって最後の“警告装置”でもある。ここで変われるかどうか。候補者の若返り、党内対立の抑制、そして何より「政党色をどう乗り越えるか」。それが問われている。

自民党はまだ負けていない。だが、勝てなくなりつつある。この微妙な変化を見誤れば、本当の敗北は、ある日突然やってくる。地方から始まる政局のうねりが、いま静かに広がっている。