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自民なぜ連敗?高市人気でも勝てない…練馬ショックで見えた崩壊のリアル

自民党が、また負けた。しかも今回は象徴的な敗北だった。東京・練馬区長選――与党系が総力戦で臨んだ選挙で、「完全無所属」を掲げた新人に大差で敗れたのである。

高市早苗政権は、衆院選で圧勝し、内閣支持率も高水準を維持している。表面上は盤石だ。だが地方に目を転じると、まったく異なる景色が広がる。自民党は連敗を重ね、かつての「選挙マシン」は明らかに機能不全に陥っている。

練馬区長選はその象徴だった。自民・維新・国民民主・都民ファーストが推薦した候補に対し、完全無所属を掲げた新人が3万票以上の差をつけて圧勝した。敗れたのは、小池百合子知事の元秘書であり、都政の中枢にいた人物だ。小池知事本人も繰り返し応援に入り、さらに自民党の片山さつき財務相や小泉進次郎防衛相、国民民主党の玉木雄一郎代表ら大物が続々と現地入りする“フル装備”の選挙戦だった。

それでも敗れた。理由は明白だ。「政党色」を前面に出したことが、むしろ逆効果になったのである。

勝利した側は、前回の区長選で立憲民主党と共産党の推薦を受けて現職に敗れた経験を踏まえ、今回はあえて政党色を消し、「完全無所属」を徹底した。この戦略転換が、無党派層の警戒感を和らげ、支持を広げた。

ここに、現在の選挙構造の大きな変化がある。

今年2月の総選挙で、自民党は歴史的勝利を収めた。だがその原動力は、従来の組織票ではない。高市人気に引き寄せられた無党派層の支持である。若年層や現役世代を中心に広がったこの支持が、投票率の上昇とともに一気に顕在化した。

しかし地方選挙は違う。投票率が低く、無党派層は動かない。その結果、これまで自民党が強みとしてきた「組織戦」が問われることになる。ところが、その組織が弱体化しているのだ。

実際、3月の石川県知事選、東京・清瀬市長選、そして今回の練馬区長選と、自民党は立て続けに敗北している。いずれも共通するのは、「無所属」を掲げた候補に敗れている点だ。

かつては「投票率が下がれば自民有利」と言われた。しかし今やその常識は崩れた。組織票を固める力が弱まり、低投票率でも勝てなくなっている。一方で、政治関心の高い層の中には、自民党に批判的な有権者が一定数存在する。この層が確実に投票することで、相対的に野党系候補が有利になる構図が生まれている。

つまり現在は、「投票率が低いほど野党有利」という逆転現象が起きているのだ。

もっとも、野党も手放しで喜べる状況ではない。今回勝利した候補は、いずれも政党色を消している。裏を返せば、立憲や共産といった既存のリベラル系野党ブランドそのものには、依然として強い拒否感があるということだ。

2月の総選挙で自民党が圧勝した背景にも、この構造がある。高市人気だけでなく、「他に選択肢がない」という消極的支持が大きかった。選挙は「好き」ではなく「嫌い」で決まる。その意味で、中道やリベラル勢力が無党派層から敬遠されている現実は重い。

だからこそ、地方選挙では「無所属」という仮面をかぶる必要がある。政党色を消し、個人として支持を広げる。この戦術が、いま野党系候補の勝利の方程式となりつつある。

一方で、今回の敗北が最も痛いのは小池知事だろう。自らの側近を全面支援しながら完敗したことで、東京都内における影響力の低下が露呈した。

小池氏はかねて国政復帰と総理の座を狙ってきた。だが、その道筋はここにきて一段と険しくなっている。高市首相の存在が大きい。同じ女性政治家として先を越された形となり、存在感を発揮する機会は限られている。

もちろん、小池氏がこのまま引き下がるとは考えにくい。政界でも屈指の戦略家であり、機を見て再び仕掛けてくる可能性は高い。ただし、その前提となる「選挙に強い」という神話は、今回大きく揺らいだ。

自民党にとっても、小池氏にとっても、今回の練馬区長選は単なる一地方選の敗北ではない。組織の弱体化、ブランドの劣化、そして無党派層との距離――それらが複合的に表面化した結果である。

高市人気は依然として高い。だが、それだけでは選挙に勝てない時代に入った。自民党は今、表の強さと裏の脆さという、ねじれた現実に直面している。これを立て直せるのか。それとも、地方から崩れていくのか。

次の選挙は、その分岐点になる。