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麻生太郎は焼き魚定食を食べたのか?メシ会嫌いの総理との神経戦――高市官邸の内幕

麻生太郎は「焼き魚定食」を食べたのか? 

永田町はいま、この話題でもちきりだ。一見、ただの軽口に聞こえる。しかし、この一皿に、いまの政局の空気が凝縮されている。

舞台は4月10日、総理官邸。高市早苗首相が、麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長、萩生田光一幹事長代行を招いて昼食をともにした。高市首相は「メシ会嫌い」で知られる。党幹部との会食を避け続けてきた彼女が、あえて設けた場だった。

しかも麻生氏とは、昨年12月以来、4カ月ぶり。冷え込んだ関係の修復を狙った“重要会談”である。

そこで出てきたのが、官邸食堂の焼き魚定食だった。

この事実が、永田町をざわつかせた。

報道は割れた。「麻生は手をつけなかった」(毎日新聞)とするものもあれば「食べていた」(フジテレビ)とするものもある。完食したのか、一口だけなのか、それとも箸をつけなかったのか。真相は藪の中だ。だが重要なのはそこではない。なぜ、この場に焼き魚定食が出てきたのか――である。

官邸の食堂は、特別な場所ではない。官邸に出入りさえできれば、記者や職員も利用できる「普通の食堂」だ。値段も安く、味もそこそこ。総理番の記者が慌ただしくカレーをかき込むような場所である。重要会談に出されるメニューとしては、あまりに簡素だ。

それだけに、違和感が際立つ。

昨年12月、高市首相が麻生氏ら党幹部20人を招待したのは、ホテルニューオータニのメインダイニングだった。夜景を望む40階で、炭火と薪火を使った高級グリル料理。コースは数万円、ワインを含めれば総額は100万円規模に達する。いわば「永田町の正統派」だ。

それが、4カ月後には焼き魚定食。落差はあまりに大きい。

この変化の背後に何があるのか。

まず押さえておくべきは、麻生氏の政治スタイルだ。夜の会食を重ね、人脈を広げ、派閥を拡大してきた。食事は単なる栄養補給ではなく、権力闘争のツールである。実際、麻生派は飲み会を通じて結束を強め、党内での存在感を高めてきた。

一方の高市首相は、その文化と距離を置く。食事に関心が薄く、会食も好まない。就任後も党幹部との「メシ会」をほとんど開いてこなかった。このスタイル自体が、麻生氏にとっては理解しがたいものだろう。

両者のズレは、すでに政局にも表れている。高市首相は1月、麻生氏に十分な相談なく解散に踏み切った。消費税ゼロ公約でも対立し、さらに麻生氏の宿敵とされる政治家の選挙を応援するなど、摩擦は積み重なっている。総選挙で圧勝した後も、国民民主との連携をめぐり温度差がある。

こうした関係の中で開かれた4月の会食だった。

では、焼き魚定食は誰が決めたのか。

官邸の会食で、メニューが偶然決まることはない。必ず総理の意向が反映される。高市首相が指示した可能性は高い。庶民的な感覚で選んだのか、あるいは単に無関心だったのか。それとも、あえてのメッセージだったのか。

一方で、麻生氏側の思惑も無視できない。もし事前に内容を知っていたとすれば、あえて受け入れた可能性もある。昼食という形式そのものが、「本気の会食ではない」というサインだったのかもしれない。仮に箸をつけなかったとすれば、それ自体が政治的メッセージになる。

さらに注目すべきは、この情報が外に漏れたことだ。官邸内の動きは、本来、厳しく管理される。それが「焼き魚を食べたかどうか」という細部まで報じられるのは異例である。誰かが意図を持って流したと考えるのが自然だ。

ここに、高市官邸のもう一つの問題が浮かび上がる。内部統制の弱さだ。

現在の官邸は、ごく限られた側近グループによって運営されているとされる。一方で、それ以外のスタッフとの距離が広がり、意思疎通に齟齬が生じているとの指摘もある。歴代政権を支えてきた官邸スタッフは、必ずしも新しいトップと一枚岩ではない。

もし官邸が円滑に機能していれば、そもそも焼き魚定食が話題になることはない。仮に提供されたとしても、外部に漏れる前に“処理”されていたはずだ。それができていないということは、内部に小さな「ほころび」が生じている可能性を示唆する。

高市政権は、選挙に勝ち、支持率も高い。表面上は安定している。しかし、官邸の内部では、こうした小さな違和感が積み重なりつつある。

焼き魚定食は、その象徴だ。

食べたかどうかは、実はどうでもいい。重要なのは、その一皿が、権力者同士の距離、官邸の統治力、そして政権の微妙な揺らぎを映し出している点にある。

永田町では、こうした“些細な出来事”が、大きな政治変動の前触れとなることがある。焼き魚定食をめぐる騒動は、単なる笑い話では終わらないかもしれない。高市官邸の内部で何が起きているのか――その兆候を、私たちは見落としてはならない。