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派閥は死なず、ただ姿を変える――高市政権下で始まった“第二次派閥戦争”の全内幕

自民党の派閥は終わった――。裏金事件を受けて各派閥が相次いで解散したとき、多くの国民はそう受け止めたはずだ。だが、それは表向きの話にすぎない。実際にはいま、水面下で「派閥再編」という新たな権力闘争が静かに、しかし確実に進行している。

自民党には2~3年前まで安倍派、麻生派、茂木派、岸田派、二階派という「5大派閥」が存在した。現在も形式的に存続しているのは麻生派のみだが、解散したはずの各派閥も人的ネットワークとしては生き続けており、高市政権のもとで再結集の動きが加速している。ただし、かつてのような一枚岩ではない。いずれのグループも分裂含みであり、むしろ内部抗争の様相を強めている。

そもそも自民党の歴史とは、派閥の興亡の歴史である。権力を握る親分が弱体化すれば、ナンバー2が牙をむき、主導権を奪い取る。田中角栄から竹下登へ、三塚博から森喜朗へ、そして加藤紘一から古賀誠へ――。繰り返されてきたのは、まさに下剋上の連鎖だった。

今回も例外ではない。焦点は今年秋の内閣改造と党役員人事だ。ここでポストを得た者は「高市主流派」として次の総裁候補に浮上し、敗れた者は「反主流派」として再来年の総裁選で巻き返しを狙う。すでに各陣営は、この“決戦の秋”に向けて布石を打ち始めている。

最大の焦点は幹事長ポストだ。現在の党執行部は麻生太郎副総裁を軸とした体制で、麻生氏の義弟である鈴木俊一幹事長(麻生派)が実務を担う。しかし、ここに萩生田光一幹事長代行(旧安倍派)や武田良太元総務相(旧二階派)といった新たな有力候補が食い込む構図が浮上している。幹事長は党運営と選挙を掌握する要のポストであり、ここを制した者が次の政権を握ると言っても過言ではない。

各派閥の内情を見ていくと、その混沌ぶりはさらに際立つ。

最大勢力だった安倍派は、安倍晋三元首相の死去と裏金事件で求心力を失い、完全に分裂状態にある。かつての「5人衆」は失脚し、現在は萩生田氏や西村康稔氏(選対委員長)らが高市支持に回り、復権を狙う。一方で稲田朋美元防衛相や福田達夫元幹事長代行(福田赳夫元首相の孫、福田康夫元首相の長男)といった次世代は距離を置き、独自路線を模索する。とりわけ福田氏は清和会(旧安倍派、福田赳夫が創始者)の“血統”を引く存在であり、新たな勢力軸となる可能性を秘めている。

一方、唯一生き残った麻生派は、依然として強固な結束を誇る。麻生氏は高市政権の誕生に大きく寄与したが、現在は一定の距離を保ち、状況を見極めている。茂木敏充外相との連携を深めつつ、小林鷹之政調会長を含めた“次”の布石を打っているとも見られる。秋の人事で副総裁や幹事長ポストを維持できるかどうかが、今後のスタンスを左右するだろう。

旧茂木派もまた不安定だ。茂木氏自身は総理への強い意欲を隠さないが、参院側は反発して離脱し、基盤は盤石とは言い難い。旧茂木派の参院議員たちは小渕優子元経産相に近く、権力構図は流動的だ。

旧岸田派はさらに深刻である。ナンバー1の岸田文雄元首相とナンバー2の林芳正元官房長官(現総務相)の対立は激化し、事実上の分裂状態にある。岸田氏は再登板への意欲をにじませる一方、林氏は宏池会の正統後継を自任する。ここに元派閥会長の古賀誠氏ら旧勢力の思惑も絡み、「骨肉の争い」とも言うべき状況が生まれている。

そして旧二階派は、二階俊博元幹事長の引退によって完全に新局面に入った。武田良太氏が継承を狙い、幹事長ポストに照準を合わせる一方、小林鷹之政調会長らが離反し、勢力は分散している。

こうした動きを総合すると、自民党内は大きく三つの陣営に分かれる。高市を支持する主流派、岸田氏や石破茂元首相らを含む反主流派、そして麻生・茂木・参院勢力といった様子見グループである。特に様子見組はキャスティングボートを握る存在であり、秋の人事を境に一気に情勢が動く可能性が高い。

注目すべきは、これらの派閥再編が単なる党内抗争にとどまらない点だ。最終的な目標はあくまで総理の座であり、その先には政権の方向性そのものがかかっている。高市政権が続くのか、それとも新たなリーダーが誕生するのか。その帰趨は、今秋の人事でほぼ決まると言っていい。

派閥は消えたのではない。名前を変え、形を変え、より見えにくい形で生き延びている。そしていま、自民党は再び「派閥の時代」へと回帰しつつある。ただしそれは、かつてよりもはるかに複雑で、流動的で、そして苛烈な権力闘争の時代である。

静かに始まったこの“第二次派閥戦争”。その勝者が、次の日本のリーダーになる。今秋の人事は、その序章にすぎない。