政治を斬る!

小沢一郎、83歳の「最後の政界再編」――参政党接近はフェイクか、現実か

オレンジ色のネクタイを締めた男の背後に、参政党のテーマソングが流れる――。

この映像を見た永田町関係者の多くが、一瞬目を疑ったはずだ。
主役は、かつて「壊し屋」の異名を取った政界最大のフィクサー、小沢一郎。そして流れていたのは、神谷宗幣率いる参政党の公式テーマソング『僕らは日本をあきらめない』だった。

単なるSNS担当者の偶然の選曲――。そう片付けるには、あまりにも出来すぎていた。

小沢氏は5月10日、地元・岩手で開かれた立憲民主党県連大会に出席した。
2月の総選挙で落選し、政界引退説まで流れていた小沢氏だが、この日は明らかに「政治家・小沢一郎」の復活を意識した演出だった。

まず目を引いたのが、参政党カラーを思わせるオレンジ系のネクタイ。さらに決定的だったのが、小沢事務所の公式SNS投稿である。会場写真のBGMに、参政党のテーマソング『僕らは日本をあきらめない』を使用したのだ。

この曲は神谷代表自身が歌詞原案を手がけた、参政党の象徴的な楽曲である。2024年総選挙のテーマソングとして使った。偶然とは考えにくい。

しかも神谷氏は、この投稿に素早く反応した。
関連ニュースと楽曲動画を自身のSNSで引用し、「良い曲ですから聞いてください」「歌詞は私が考えた」と投稿したのである。

小沢氏との連携に直接触れたわけではない。しかし、少なくとも“不快感”は示していない。むしろ歓迎ムードすら漂う。

ここにきて、永田町では「小沢、参政党入りか」という観測が急速に広がり始めた。

もちろん、にわかには信じがたい話だ。
だが、最近の小沢氏の言動を追えば、このシナリオは決して荒唐無稽ではない。

1993年、小沢氏は自民党を飛び出し、非自民8党派連立政権を成立させた。自民党一党支配を崩壊させた歴史的政界再編である。以後も新進党、自由党、民主党など、数々の再編劇を主導してきた。

しかし、時代は変わった。

今回の総選挙では、自身も落選。中道勢力と立憲の合流構想でも、小沢氏は完全に蚊帳の外だった。かつての「剛腕」は、組織運営の中心から外されていたのである。

だが、小沢氏は引退しなかった。

5月8日には、自ら率いる政治グループ「一清会」の事務所を新設し、記者団を集めて活動再開を宣言した。

所属議員はわずか7人。かつての巨大勢力から見れば、あまりにも小さい。
それでも小沢氏は、なお政局を動かそうとしている。

その際に飛び出した発言は、極めて刺激的だった。

「中道なんて次の選挙まであるのか」
「立憲だってどうなるのという話だ」
「政権交代の受け皿になり得ない」

中道もダメ。立憲もダメ。
では、新党を作るのかと思えば、そこには慎重姿勢を示した。

「新党ありきではない」
「みんなで団結して戦う方法を考える」

これは裏を返せば、「既存政党への合流」を視野に入れていることを意味する。

そこで浮上するのが、参政党なのである。

実際、参政党側にもメリットはある。

参政党は近年、草の根組織を急拡大させてきた。しかし、国政レベルの人材不足という課題を抱えている。そこで神谷氏は、既成政党からこぼれ落ちた人材を積極的に受け入れてきた。

元自民の安藤裕、元自民の豊田真由子、元維新の梅村みずほらがその象徴だ。

現在、参政党は衆参合わせて30人。
ここに小沢氏と一清会系議員が加われば、一気に勢力を拡大できる。

しかも、既存野党は軒並み低迷している。

中道は野党第一党から転落。
国民民主党も支持率が伸び悩み、れいわ新選組も混乱が続く。

野党全体が漂流する中で、参政党だけが独自色を保ちながら拡大を続けている。小沢氏がそこに活路を見いだしても、不思議ではない。

もっとも、この話には大きなリスクもある。

小沢氏は「壊し屋」である。
これまで数々の政党を作り、そして壊してきた。組織を掌握する能力は突出しているが、その過程で激しい内部対立を生み出してきたのも事実だ。

まだ若い政党である参政党が、小沢氏という巨大な政治エネルギーを受け止めきれるのか。逆に内部から揺さぶられ、分裂する危険性もある。

そしてもう一つ見逃せないのが、階猛との関係だ。

かつて師弟関係にあった二人は、いまや完全な対立関係にある。
今回の岩手県連大会でも、階氏は「新党結成を急いだことが敗北につながった」と発言し、小沢流政治を暗に批判した。

その階氏が中道幹事長となったことは、小沢氏にとって「中道に居場所はない」という現実を突きつけた意味合いが大きい。

中道にも戻れない。
立憲とも組めない。
新党を作る体力もない。

その先に残された選択肢が、参政党への接近だとすれば――。

83歳になった小沢一郎は、なお「自民党を倒す」という執念を捨てていないのかもしれない。

永田町では久々に、“政界再編”という言葉が飛び交いはじめた。