総選挙の序盤情勢が、政界に衝撃を与えている。立憲民主党と公明党が結成した新党「中道」が、厳しい戦いを強いられているからだ。
比例名簿では、公明党が上位を占め、候補者はほぼ全員が当選圏に入った。
その一方で、立憲の議席は大幅に減少する可能性が指摘されている。現職幹事長、元代表、さらには将来を担う若手まで、落選危機に直面している。
今回の総選挙が持つ歴史的意味は大きい。
長年、若者や現役世代から支持を広げられなかった立憲民主党が、政界の主役から退場する転換点となる可能性があるからだ。
党幹部に迫る危機
象徴的な存在が、安住淳幹事長である。
党内で強い影響力を持ち、公明党との新党構想を主導した中心人物だ。自民党のアンチ高市派の森山裕前幹事長の盟友で、将来的には、自民党内の反高市勢力と連携した大連立構想も視野に入れていたとされる。
しかし、その安住氏が地元・宮城4区で激しい接戦に追い込まれている。
対するのは自民現職、元タレントの森下千里氏。高市政権が安住氏を打ち落とす狙いで宮城4区に投入した。
もし安住氏が敗北すれば、中道は求心力を失い、大連立構想そのものが崩れる可能性がある。高市政権の狙いもそこにある。立憲にとって象徴的敗北となりかねない。
党の重鎮である岡田克也元外相も三重3区で厳しい戦いを強いられている。高市総理の「台湾有事発言」を引き出したことで、逆に「媚中派」との批判を浴びた。これまで圧倒的な強さを誇ってきた地盤で接戦に持ち込まれている背景には、高市政権への批判戦略が逆に反発を招いた側面も指摘されている。
元代表たちの崖っぷち
立憲の元代表クラスも安泰ではない。
枝野幸男元代表は埼玉5区で当選を重ねてきた。長年のライバルが今回は去り、盤石とみられていた。
ところが自民新人相手に接戦となり、支持基盤の揺らぎが表面化している。
その背景には、公明党との新党結成に伴う政策転換がある。
これまで反対してきた安全保障政策や原発問題での姿勢変更が、従来の支持層の離反を招いた可能性がある。
泉健太前代表も同様に京都3区で接戦になっている。京都2区で落選したことがある相手に、追い上げられているのだ。高市人気の高さと立憲のブランドの低下を象徴している。
さらに、政界屈指の選挙巧者として知られる小沢一郎氏も厳しい戦いに直面している。今回当選すれば、戦後最多タイの20回。その前に高市人気と新党不信が立ちはだかっている。
崩れ始めた「立憲王国」
地方組織の動揺も顕著だ。
かつて強固な支持基盤を誇った北海道では、優勢だった構図が大きく揺らいでいる。
立憲の有力議員が競り合いに持ち込まれ、自民党が議席を伸ばす勢いを見せている。
愛知でも同様の現象が起きている。
従来は半数近い選挙区で勝利してきたが、今回は優勢を保つ候補がごくわずかにとどまっている。
新潟でも状況は厳しい。
前回は全勝した選挙区で接戦が続き、党のリベラル派を象徴する論客の米山隆一氏も安定した戦いができていない。
これらは、地域組織の結束力低下と支持層の流動化を示している。
次世代にも広がる動揺
危機はベテランだけにとどまらない。
次世代リーダー候補にも及んでいる。
映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で有名になった小川淳也氏は、香川1区で当選できるようになり、政調会長、幹事長を歴任。次は代表への意欲を隠していない。
ところが、今回の選挙では接戦に持ち込まれている。政策転換への反発や野党間競争の激化が影響しているとみられる。
さらに、中道の政調会長に抜擢された若手ホープの本庄知史氏も千葉8区で苦戦している。
政策責任者として新党政策の調整を担ってきた人物が敗北すれば、党の世代交代戦略そのものが崩れる可能性がある。
比例復活枠も限られており、立憲内部では候補者同士の生存競争が激化している。
政界再編の入口
今回の総選挙は単なる議席争いではない。
立憲民主党という政治勢力の存続が問われている。
党幹部、元代表、次世代リーダーが相次いで敗北すれば、党の再建は極めて困難になる。
その結果、中道勢力の再編や自民党内勢力との新たな連携が現実味を帯びる。
選挙結果次第では、日本政治の勢力図そのものが塗り替わる可能性がある。
立憲民主党の命運を懸けた戦いは、まさに最終局面を迎えている。