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コロナを恐れるあまり官僚たちに強力な権限を与える恐怖〜金融庁や国税庁が「酒の提供停止」を迫る異常事態

政府が求めている「酒の提供停止」に応じない飲食店を従わせるため、金融庁が取引先の金融機関に対して圧力をかけるように迫り、国税庁は酒の販売業者に取引を停止するよう迫る。行政の一般的な管理監督権限を振りかざして民間業者をなるふり構わず脅す菅政権の「パワハラ体質」が浮き彫りになった。

この問題は、行政が法律の具体的な規定に基づかずに業者に行政文書などを通じて公然と圧力をかけるという意味で「違法」の疑いが強い。政府をあげてそのような行為を推し進めようとしていたことになる。西村康稔大臣個人の「単なる失言」というレベルの問題ではなくなってきた。

コロナ禍に際して「できることはなんでもやれ」と指示する大臣に対し、「これは違法行為になります」と制するのが本来の官僚の姿であろう。

しかし、首相をめぐる不正を覆い隠すため(それによって自らが出世するため)、組織的に公文書を改竄し、国会で虚偽答弁を重ねるのがこの国の官僚機構である。所管官庁が首相官邸の顔色をうかがいながら、民間業者に法律の権限を超えて圧力を加えることに、さほどの抵抗感はなかったのではないか。

内閣人事局によって官僚人事を完全掌握し、キャリア官僚たちを完全支配下に置いた安倍・菅政権下において、この国の行政機構は完全に壊れたことを、私たちは自覚しなければならない。

そうした官僚機構のもとで、緊急事態宣言が繰り返し発出され、それでも効果があがらないことを踏まえて緊急事態条項を盛り込む憲法改正論が出てきていることに対し、私たちは強い警戒感を抱くべきだろう。コロナを恐れるあまり、この国の官僚機構に法律上の強力な権限を付与し続けたら、いったい、どんな世の中になるのか。

私たちの国は、個人の自由や人権をなりふり構わず犠牲にする取り返しのつかない失敗を「戦争に勝つためならなんでもやれ」という形で過去に経験したことを忘れてはならない。

金融機関や酒類販売業者といった民間企業になるふり構わず圧力をかけて「酒の提供停止」を飲食店に従わせようとした今回の問題は、国家権力が持つ本質的な恐怖をむき出しにした。この国でいま進行していることは、コロナの感染拡大よりもはるかに恐ろしい「国家権力の暴走」である。

私は国家の利益よりも個人の自由や権利を重視する「リベラル」の立場から、緊急事態宣言の発出にはできる限り慎重であるべきだとの考えを示してきた。リベラルを掲げる野党やマスコミが緊急事態宣言を強く迫る風潮にも懸念を抱いてきた。

コロナ対策はたしかに重要だ。だが、国家権力の暴走から国民の自由と権利を守ることはそれ以上に重要である。国家権力はいつ暴走してもおかしくはないという「性悪説」に立って、権力の集中を防ぎ、権力の監視をつねに怠らないことが、人類が苦難の歴史から学んだ教訓であることを忘れてはならない。

社会危機はバランス感覚を失わせる。国家や官僚機構の役割に過剰な期待を抱くと、彼らはそれを口実に権力を増長していく。繰り返すが、国家権力というものは「性悪説」に立って制御することが重要だ。今回の問題を機に、コロナ対策のあり方をいまいちど冷静に問い直す時である。

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